私たちの日常では仕事や世の中などで何らかの問題が日々生じます。
そのような時には問題解決のフレームワークとして「問題を明確化」し「原因を追究」して「解決策を立案」することが教科書的なやり方です。
ただ、世の中教科書通りに物事を進められるのであれば誰も苦労はしないものです。問題解決のフレームワークも現実にそのまま適用できるかと言えば実際にはそうではない場合が多々あります。
今回はそんな現実の問題解決手順について述べていきます。
問題にはフェーズがある
教科書的な問題解決フレームワークには致命的に抜けている視点があります。
それは時間です。
問題の根っこである真因を追求してそれに対策を打つことはたしかに必要です。それだけが問題を根治して再発を防ぐことができるのですから、フレームワークに沿ったやり方を行うこと自体は理にかなっています。
しかし問題の種類によっては時間の猶予が存在せず悠長なやり方を許されない場合が多々あります。問題によって生じ続けている損害を抑えるためには、たとえ対処療法的な弥縫策だとしても真っ先に何かしらの対策へ手を付けなければなりません。
例えば事故が起きた時に、何故その事故が起きてどうすればこのような事故を無くすことができるかを問題解決のフレームワークに沿って考えることは必要です。必要ですが、それは事故が起きている時にリソースを割くことではありません。まずは事故の被災者を救助することこそが優先される事項です。
根本的な解決にならない弥縫策は問題解決の全体からすれば愚策ですが、緊急度の高い初期フェーズでは不可欠な良策です。問題には時系列に沿ったフェーズがあり、その時々で優先されるべき行動は異なります。
この点を理解していないと問題による損害を抑えるための余計なリソースを浪費することになります。
厳しい言い方をしますが、何かしらの緊急性が高い問題が起きた時に犯人捜しを始めるような人は邪魔ですらあります。
誰がやった、何故やった、どうやった、そんなことは後でじっくりと検証すればいいことであり、初期フェーズにはどうでもいいことです。まず何よりも重要なのは問題によって生じている被害を抑えるために今どうすればいいかを考えて実行することであり、そこに全リソースを注がなければなりません。
ABCDEアプローチ
このような現実的な問題解決の順序に関してはABCDEアプローチの考え方が理解を増進するかと思います。
ABCDEアプローチとは救急医療の評価で行われる観察技法で、以下の順番で患者を評価することを分かりやすくまとめた言葉です。
Airway(気道)
Breathing(呼吸)
Circulation(循環)
Disability(意識レベル)
Exposure(外傷や体温調節など)
これは問題への対処には優先順位があることを明確に表している良い事例です。
大きな外傷を負った患者がいたとしても、気道を確保できていて酸素が取り込まれて循環されているかを確認するほうが優先されます。たとえその外傷によって数時間後に患者が死にかねないとしても、酸素が無ければ患者はもっと短時間で危機的な状況になるためです。人の脳は代謝がいいため酸素が無ければ数分で致命的な影響を受けます。だからこそ外傷よりもまずは生命を維持することが優先です。
問題解決も同様に、まずは酸素を巡らせて失血を止めてから根本的な原因へ対処することが必要です。怪我によって呼吸ができなくなっている人には時間を掛けてその怪我を治療することよりもまず先に気管挿管をして酸素を供給することが必要です。
結言
つまり「今何をすればいいか」が問題の初期フェーズには重要であり、「なんでこんなことが起きた」「誰がやった」「どうすれば問題を根本的に解消できるか」なんてことを考えるのは後です。
『原因の治療には成功したが患者は亡くなった』
そんな事態に陥らないためにも、問題が生じた際には教科書的なフレームワークに囚われるのではなくその時々での優先順位をつけて適切な対策を取る必要があります。