忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

ハンマーの振いどころを見極めることと、ハンマーを持つこと

 英語のことわざ

「If all you have is a hammer, Everything looks like a nail」

(ハンマーしか持っていなければ、全てが釘に見える)

は様々なニュアンスを含意している至言だと思っています。

 

 このことわざからはいくつもの教訓を導くことが可能です。

◆特定の手段・方法・思考・知識しか持っていなければ、それに固執して問題の本質を見失うことがある。

◆持っている手段に合わせて問題を解決しようとするのではなく、問題に合わせて手段を変えなければいけない。

◆問題解決を図る際には、今から取ろうとしている手段が適切かどうかを精査する必要がある。

◆各種の問題に対応するため、様々な手段を用意しておく必要がある。

 

 大枠としては問題の本質を見極めて適切な対策を講じることが主題ですが、そもそもハンマーしか持っていない状況を戒めるニュアンスを汲み取ることも可能でしょう。

 

業務改善に関する会議の一幕

同僚「VBAやマクロをもっと駆使して業務効率を改善しましょう」

私「具体的にExcelでどのような作業をしていますか?」

同僚「・・・」

私「え、あまり使ってないなら、VBAで何を作るんですか?」

同僚「・・・」

 

 相手からすれば予想外の質問だったのかもしれませんが、こちらも予想外の無言回答だったので驚きました。私もVBAくらいなら少しは扱えるので自動化の手伝いをしようと思って発言したのに、まさかの責めているような雰囲気に。なんとも悲しい、そしてしょうもない話です。

 

 これはハンマーを用いることを目的化してはいけない典型例です。

 あまり典型ではないような気もしますが、それはさておき、まず問題を定義し、それを分析して、その後に適切な解決方法を準備する。問題解決手法のテンプレとも言えるこの手順はとても重要です。

 問題解決に関するコンサルや教材が執拗なまでに問題解決手法のプロセス/プロシージャを語っているのは、この手順を外れるとまさに「ハンマーでは解決しない問題にハンマーを振るう」ような事態になりかねないためです。

 まずはそれが釘であることを正しく見極めてからハンマーを持ってくる必要があります

 

工具を揃えることも必要

 とはいえハンマーを持つこと自体を一概に否定することもできません。

 冒頭のことわざは問題に合わせて適切な対策を取ることを主題としていますが、取れる対策の種類を事前にたくさん揃えておくべきだ、としたニュアンスを汲み取っても良いと考えています。

 全てが釘に見えるのはハンマーだけしか持っていないことが原因です。ハンマー以外もたくさん持っていればそのような錯誤を避けることができますし、何はともあれハンマー自体は持っている必要があります。「おっと、これにはノコギリが必要だな、ノコギリは持ってないから買ってくるか」と作業中に買い出しへ行く大工さんはまず居ないように、プロは事前に必要な工具を揃えているものです。

 同様に、問題解決に活用できる様々な手法やフレームワークを事前に学んで身に付けておくことは有益です。必要に応じて様々な手段を引き出せるような充実した工具箱を用意しておく必要があります。

 

結言

 上述の会議での事例で言えば、VBAやマクロを使えるようになること自体はいずれ何かしらの役に立つ可能性があるので無駄ではありません。全ての問題が釘ではないにせよ、釘であることだってありますのでハンマーは持っている必要があります。