忘れん坊の外部記憶域

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政治の話が忌避されず、もっと活発になるための検討

 政治を話題にすることは多くの場合で忌避されがちなものです。家族や友人など身近な人に限らず、親しくない人と話をする際やSNS上で話題とすることも忌避される場合があります。

 政治の話題はある種のタブーだからこそ、その忌避感自体がそもそも表沙汰に出るものではあまりありませんが、インターネット上ではある程度可視化されており、政治カテゴリや政治系アカウントなどを拒絶する人をある程度の比率で見かけることができるでしょう。

 

 今回はそんな『政治を話題とすること』について、考えを述べていきます。

 

日本の民主主義の弱点

 「民主主義国家は国民に主権がある以上、皆がもっと政治の話題を活発にして、積極的に政治へ携わらなければならないんだ!」と説教くさいことをストレートに述べたいわけではありません。

 もちろん日本が民主主義国家である以上、政治の話がもっと活発に行われることを望んではいます。ただ、日本は自由主義の国でもある以上、個々人が政治への関与を拒否することも自由です。投票の義務化など国によっては強制参加を求めている場合もありますが、少なくとも現在の日本ではそういった制約を強いてはいません。

 とはいえ、自由であること自体はさておき、日本の民主主義には一つ明確な弱点があることは留意しておく必要もあるかと思います。

 

 イギリスの週刊誌エコノミストは各国の民主主義の度合いを5つの項目で数値化した民主主義指数(Democracy Index)を毎年発表しています。

Democracy Index 2022 | Economist Intelligence Unit

 2022年の統計では日本の順位は16/167位で、評価としては完全な民主主義(Full Democracy)と判定されています。完全な民主主義と評価されている国は24国しかないことから、世界的に見て日本の民主主義は決して低評価ではありません。

 ただ、評価項目5つの内訳を見ると日本の民主主義における課題が明確に表れています。

  • 選挙の過程と多様性(Electoral process and pluralism):9.17
  • 政府の機能(Functioning of government):8.57
  • 政治への参加(Political participation):6.67
  • 政治文化(Political culture):8.13
  • 市民の自由(Civil liberties):9.12

 各項目は10点満点で採点されており、日本は明確に政治への参加(Political participation)が低いことが分かります。参考として上位10国の平均スコアは8.67、うち2国は10点満点です。別の切り口で言えば、政治への参加の項目が日本よりも高い国は約40国です。

 つまるところ、日本の民主主義は世界的に見れば決して悪いものではないにせよ、政治への参加意識の薄さが課題となっていることがエコノミストの評価から分かります。

 

なぜ政治の話をしないのか

 政治の話が忌避されていれば政治への参加意識が芽生えるはずもありません。

 では、なぜ政治の話がタブー扱いされているのか。

 10年以上前の古いデータですが、一般社団法人中央調査社が2006年に行った意識調査結果から理由を探ってみましょう。

政治の話はタブーなのか―インターネットユーザーに対する実証分析から―| 中央調査報 | 中央調査社

 本調査結果では、政治の話題を忌避する理由として以下のようなものが上位に挙げられています。

 

  • 話す必要がないから
  • 縁遠い話だから
  • 楽しくないから
  • 人を傷つけそうだから

 

 「話す必要がない」と「縁遠い」は社会科教育の敗北を感じるので、教育の改善が必要でしょう。

 民主主義政治の根幹は話し合いによる利害調整です。話す必要がないどころか話すこと自体が重要で必要なことであり、政治は国政だけでなく日常的にも行われている、縁遠いどころか極めて身近で縁近い行為です。

 

 「楽しくない」と「人を傷つけそう」には少し納得感があります。

 確かにテレビやネットで政治を語っているクラスタは、政治的対立者を罵ったり強い言葉で誹謗中傷したりと大変に荒れた環境です。罵詈雑言飛び交う言論空間を楽しいと思う人は少ないでしょうし、人を傷つけたくない温厚な人はそのような場に足を踏み入れないでしょう。

 

 この意識調査結果から分かることとして、政治の話が「楽しく」「人を傷つけない」話題となればもっと政治の話が活発になり政治への参加意識が芽生えるのではないかと考えられます。

 

結言

 政治の話を「楽しく」するのは少し難しいかもしれませんが、「人を傷つけない」は可能なことだと思います。批難や誹謗中傷といった望ましくない言論を避け、政治的言論空間において温厚なやり取りができる領域を地道に広げていくことでそれは実現できるでしょう。この言論空間において必要なのは適切な批判のみです。

 

 そもそも、政治の話だからといって強い言葉を用いたり、人を非難する必要はありません

 それは他の人を政治から遠ざけてしまう効果を持っており、熱心に政治へ関わろうとする人を減らしてしまう民主主義にとっての悪手です。政治への参画意識を改善したいと考えている真剣な人こそ、対立的姿勢を避けて温厚な話し合いを心がけなければなりません

 

 このブログでも何度か述べてきていることですが、政治の話こそむしろ穏便で冷静に、悪い言葉や強い言葉を使わないよう、アサーティブなコミュニケーションが必要だと考えます。