忘れん坊の外部記憶域

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日本の野党がアメリカ大統領選挙から学ぶこと

 政治の話題は党派性や事情の複雑さから重くなりがちですので普段はなるべく軽めのトピックを重くならないような語り口で語るよう心掛けているのですが、今回は少し重めのテーマをいつも以上に軽く話していきましょう。

 

理解と共感は別物

 常日頃より各所からボコボコに批判を受けているアメリカのトランプですが、大方の世間の予想通り米共和党候補選で勝ち上がりそうな気配を濃厚に醸し出しています。競合が小粒とはいえ現時点での支持率は圧倒的です。

 もちろん人によっては「なんであんな奴を支持するんだ、支持者は愚かだ!」と言いたい気持ちを持っていることは分かります。

 ただ、少なくとも現状の立候補者の中で現大統領への対抗馬としては最たるものだと世間が認識していることは数値的な事実です。”そういった層に共感できないこと”と”そういった層が存在する事実を理解すること”、すなわち感情と理解は切り分けて考える必要があります。

 

黒人支持率の変化

 なぜトランプがアメリカの世論を二分する程度に支持を得られているのか。

 それは多くの識者が分析しているように明白で、米民主党がリーチし切れていない層に働きかけているからです。つまりは白人エスタブリッシュメント層以外の人々が彼の主要な支持層となっています。

 

 まず前提として、人種問題を抱えているアメリカでは必然的に人種が選挙ファクターの一つとなります。

 米民主党は左派系の政党であり、それゆえに白人以外の支持を強く集めています。特に有色人種の中でも黒人からの支持は圧倒的で、ほとんどの黒人票が米民主党に流れます。その反対に右派系の米共和党支持者の多くは白人です。

 しかし過去二度の大統領選挙では、従来までの米共和党が獲得できていなかった非白人からの投票を多く獲得しています。

 特に顕著なのが黒人票の変化で、2008年(オバマVSマケイン)では4%、2012年(オバマVSロムニー)では6%だった黒人の米共和党投票率は、2016年(クリントンVSトランプ)では8%、2020年(バイデンVSトランプ)では12%まで上がっています。この10年で「黒人は米民主党に投票するのが常識」であった価値観が少し変化していることが分かるでしょう。

 もちろんこの投票率の変化は単純に米共和党の成果とも言えず、米民主党への不信も一因ではあります。しかしたとえ不信があろうとも棄権ではなく米共和党へ投票した以上、米共和党に黒人を引き付ける何かがあったことも事実です。

 レイシストとも評されるトランプがなぜ黒人の支持を伸ばせたかと言えば、それはHBCU(伝統的黒人大学)への援助予算を組むなど黒人コミュニティの利得となる具体的な政策を実行したためでしょう。たとえ言動がどうであろうとも、「オバマですらやらなかった黒人の教育格差問題に手を差し伸べた」と黒人コミュニティが評して、実際に手を差し伸べてくれた側に投票するのは自然な帰結です。

 

どうしたいかを明言すること

 軽挙妄動とすら言える悪い側面が目立つトランプですが、政治戦略的に見ればとても合理的な行動を取っています。票を伸ばすためには自らを今現在支持していない層に働きかける必要があり、相手を攻撃するだけではなく、相手の支持者にも役立つどんなことがしたいかを主張することが必要です。トランプはその点が顕著であり、米民主党を攻撃する過激な表現が目立つものの、同時に「オレならばこうするああする」を必ずと言っていいほど付け加えています。その内容の是非はさておき。

 

 逆に言えば、米民主党がトランプを次の選挙でも負かしたいのであれば、彼を支持する層を攻撃するだけではなく彼の支持者に手を差し伸べることが必要です。「トランプを支持する奴は愚かだ」と否定するのではなく、「私たちは君たちにこういうことやああいうことがしたい」と表明しなければなりません。

 

日本の野党が学ぶべき点

 これは日本の野党および野党支持者が学ぶべき点でもあると考えます。

 つまりは「与党はこんなに駄目だ」「与党支持者はおかしい」と批判するだけではなく、現与党に不信を持っている消極的与党支持者に手を差し伸べること、その層を敵の一員と見なすのではなく「私たちは君たちにこういうことがしたい、私たちにはそれができる」と伝えることが必要です。

 

結言

あいつらでは駄目だ私たちはこういうことがしたい

 前段に終始した場合はたとえ与党の支持率が下がったとしても棄権の数が増えて投票率が下がる一方であり、野党が支持を得たいのであれば後段を強く打ち出す必要があります。それができなければ与党の地位に立つことが叶わないのは必然です。

 実際にできるできないはあるにせよ、そもそも「やりたい」と言わない人には任せられません。

 2009年に民主党が政権交代を果たすことができたのは、これができていたからだと私は考えています。