忘れん坊の外部記憶域

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『首相 アフリカへ5億ドル支援表明』に関する雑感:アフリカへのODAは、まあ、ばらまきです

 日本政府が海外へ支援を行うことを宣言するたび、以下の記事のアクセス数が微妙に伸びます。

 アクセス数云々はどうでもいいのですが、この記事のアクセス数が少し伸びた時は「あ、またどこかに海外支援をすることを政府が表明したのかな?」とアンテナ的な役割を果たしているため、なんとなくの面白みを感じています。

 先日もアフリカへ5億ドルの支援表明がされた際にネットの一部で騒がれていたため、少しだけアクセスされたようです。

 

 今回はそのアフリカへのODAに関して、ネット上で見かけたいくつかのコメントに対しての雑感を記録していきます。

 

5億ドルは多い?

 最初に取り上げるコメントは「5億ドルは多い!」です。

 5億ドルが多いのか少ないのか、考えていきましょう。

 

 まず、5億ドルがいつどこに拠出されるのかを見るため外務省のwebサイトを見てみます。

(2)岸田総理から、サヘル地域を始めとする地域の情勢に対処するガーナの取組を高く評価するとともに、サヘル地域とギニア湾沿岸諸国の平和と安定に寄与し、持続可能な成長を促進することを目的として、今後3年間で、約5億ドルの支援を行っていくことを表明し、アクフォ=アド大統領から日本の取組に対し謝意が表明されました。

日・ガーナ首脳会談|外務省

 サヘル地域とギニア湾沿岸諸国に対して3年間で5億ドルの支援が表明されています。

 サヘル地域はサハラ砂漠の南縁部であり、ギニア湾沿岸諸国はアフリカ西海岸沿いの国を指します。日本のODA区分で言えば『サブサハラ・アフリカ地域』の一部です。

 2022年のODA実績を見ると、サブサハラ・アフリカ地域には1年間で17億ドルのODAを拠出しています。

(ODA) 2022年版開発協力白書 日本の国際協力 | 外務省

 サブサハラ・アフリカ地域は広く、また今回支援を表明した地域で実際にどの国へ支援をするのかは明確ではないため比較は難しいこと、さらには今回の支援が従来ODAへの積み増しでの純増なのか、従来ODAに含まれる範囲なのかはまだ明確に発表されていないため分かりませんが、少なくとも『今までにない莫大な金額』ではないことには留意する必要があります。

 もっと言えば、政府単独でなく単純な支援でもないとはいえ、昨年に日本はアフリカへ官民合わせて3年間で300億ドルの資金を投入すると表明しています。規模で言えばこちらのほうがよほど大きいです。

第8回アフリカ開発会議(TICAD8)|外務省

 

アフリカは欧米がなんとかすべき?

 他に見かけたコメントは「アフリカの貧困は奴隷貿易などが一因であり、日本ではなく欧米が援助すべき」です。

 これは何も言うまでもなく実施されています。

 2022年の実績を見ても、サブサハラ・アフリカ地域へ支援をしている上位は欧米の国々であり、日本の比率は5%未満です。

(ODA) 2022年版開発協力白書 日本の国際協力 | 外務省

 日本はそもそもアフリカへの支援が世界的には少ない国であることを認識しておく必要がありそうです。

 

金額よりも使途?

 他にも「金額よりもどういった使途で使うかのほうが重要だ」といったコメントを見かけました。

 これに関してもすでに世界は重々承知しており、日本のアフリカに対するODAも技術協力の割合が相当高まっています。

 技術協力は贈与の一形態であり、ただお金を渡すのではなく、その国の実情にあった適切な技術などの開発や改良を支援するために人材の育成を行う協力です。

 他にも現地の事情に詳しい国際機関経由での贈与なども行われており、昔のようにただお金を渡すだけのやり方では無くなってきています。

 

血税を海外に使うな?

 最も多く見かけたコメントは「血税を海外に使うな」といったものと、それに対する反論である「融資や投資であり血税を垂れ流しているわけではない」です。

 これに関しては、前者の意見のほうが現実に近いです。

 

 ODAには大きく分けて贈与と貸付があります。贈与は無償資金協力や技術協力で、貸付は金利を設定した有償資金協力です。

 冒頭で提示した記事では、日本のODAや海外投資の多くが有償であり、ただのばらまきではないことを説明しています。

 

 しかしサヘル地域とギニア湾沿岸諸国は例外的であり、これらの地域に拠出されているODAのほとんどが贈与です

 そして無償資金協力や技術協力の財源は日本国民の税金から出ています。

 つまり、この地域への資金提供は俗に言う「ばらまき」に該当します

 

 考えてみれば当たり前の話で、融資や投資はこれから成長することが見込まれている新興成長市場、エマージング・マーケットに行われるものです。アフリカの大部分はまだその段階には辿り着いていないため、援助をするのであれば”ばらまき然”とした形になるのはやむを得ないことです。

 

結言

 時々中国の一帯一路やアフリカ投資を「汚い戦略」だと評する意見を見かけることがあります。

 しかし国際関係は利害によって動くものであり、他国に利を与えなければ自国の利を追求する際に賛同国として投票してくれるはずもありません。

 他国へお金を出すことは当然のことであり、やらないほうが馬鹿となります。中国が特別汚いわけでもなく、どの国もやっていますし、日本だって当然やっています。

 

 よって私個人の見解としては国際関係の醸成には役立つものであることからアフリカへの投資も賛同側ではあります。

 ただ、アフリカへの投資の多くは貸付ではなく贈与、すなわち日本国民の血税によって供されていることから、「アフリカにばらまかず国内投資に回せ」とする意見にも明確に理があるものと考えます