どうにも、恐らく世代によって認識が異なる話。
国際移住や海外での労働に対する価値観
ここ1年ほど海外へ働きに出掛ける若者が利用する制度であるワーキングホリデーのニュースが多くなったように感じます。
まあコロナ禍による渡航制限が緩和されたこともあり伸び率としては高くなっていて話題性はあるのでしょう。
ただ、それを「出稼ぎ労働」「日本は途上国になった」といったような、どうにも海外に出ていったり海外で働くことに対するネガティブなイメージを持って評する論調が一部で見受けられるような気がします。
これは世代的な認識の違いが大きく影響していそうです。
今どきの若者は一所懸命に一つ所で頑張り続けることを美徳とする比率は下がっています。
「つらくても転職せず、一生一つの職場で働き続けるべきである」と回答した比率は日本と韓国のアジア組が低く、逆に欧米は高い結果です。欧米のほうが転職に積極的だという言説は、少なくとも現在の若者に対してはステレオタイプによる誤解だと言えます。
そのような価値観を持つ若者からすれば、より稼げるところへ移動することは自然な行動です。そして幼少期からグローバルな視点を教わってきた若者からすれば日本国内に限定して選択する意味もありません。
率直に言って、右派的な「日本は凄い」とか左派的な「日本は衰退している」といった政治論争に若者が深入りしないのは政治的無関心だけとは限らず、世界を基準とする若者にとっては「今どき日本と海外で峻別するほうが視野が狭い」とすら考えているでしょう。
よって海外で働く若者は「出稼ぎ労働」とか「日本は途上国になった」とかそういった考えで出て行く人は恐らく少数派で、ただ「より稼げるかどうか」を判断基準にしていると考えます。
もちろんこのようなグローバルな若者の価値観が絶対的に正しいというわけではなく、戦後の発展期に海外へ出稼ぎ労働へ行って外貨を稼いでいた人を知っている世代の価値観や、高度成長期に道楽として海外で働いている人を見てきた世代の価値観が間違っているわけではありません。
ただ、見方が違うというだけの話です。
単純に今どきの若者には「出稼ぎ労働」や「海外労働」へのネガティブなイメージはそこまでない、それだけです。
日本人はもっと国際的になってもいいと思う
次に、実際のワーキングホリデーはどのような状況なのか数値を見てみましょう。
代表例として、オーストラリア当局の統計から国籍別のワーキングホリデー申請数を10年分ほど引用してみます。
元データ:Working Holiday Maker visa program report(2013-2023)
この数値からは、次のようなことが読み取れるかと思います。
■他所の先進国でもオーストラリアのワーキングホリデー制度を利用して働きに出て行く若者は多い。人口比で考えればむしろ日本は少ない。若者が海外へ働きに出て行くことを安易に非難すると他の先進国にも飛び火しかねない。
■2023年の日本国籍の申請者数はコロナ禍前と比較すれば微増程度。それほど人数が増えているわけではない。
つまり「出稼ぎ労働」「日本は途上国になった」と言った論調で批判するのは少しズレていて、他国と比べて人数が特別多いわけでも著しく増加しているわけでもありません。
若者の海外労働と国家の景気はある程度の相関関係があるかもしれませんが、少なくとも単純な因果関係はないと考えます。
結言
そもそも日本人は他国と比べると国内に引き籠り過ぎているとすら言えるわけで、別に裕福な先進国の若者だって海外に出ていきますし、むしろ統計上は裕福な国のほうが活発に海外へ出ていきます。
また、過去にも記事にしたように日本人はもっと海外に出て行くべきだと私は考えます。
(私は日本食が好きなので日本に居住したいくせに我儘な言説)
それこそバブル崩壊後は日本人が海外へ出て行かなくなったことを懸念する言説も多かったのですから、それがまた出て行くようになったのはむしろ良いことのように思うのですが、どうにも海外で働くことへの価値観の違いは人それぞれなので難しいところです。
もっと率直な感想として、海外に行けば「出稼ぎ労働」と言われ、国内に居れば「グローバルに乗り遅れている」と言われる、そんな両極端な批判に晒されては若者が可哀そうです。
余談
今どきのワーホリはそこまで安く行けるわけでもないので、むしろたくさんの若者がワーホリで出て行ける国の方が裕福なんじゃなかろうかと思っています。