ステレオタイプとは、多くの人に浸透している固定観念や思い込みのことを指す言葉です。
人は様々な物事をステレオタイプ的認知によって処理しています。それは思考の効率化・省力化であり、日々様々な情報を処理しなければならない現代社会において必要な行為ではありますが、時には誤認や誤解の元ともなります。
今回はそんなステレオタイプの打破、認識のアップデートの一環として、若者の意識調査結果を見てみましょう。
ただその前に、この手の海外を含めた意識調査・アンケートを見る際の前提として、多くの統計で存在する事実に「日本人は控えめな回答をする」傾向があります。定性的な国際統計を見る際はこの点を念頭に置いてください。
よって調査結果が他国と差異があることと、実際に差異があるかどうかはイコールにはなりません。日本人の謙虚さは美徳ではありますが、国際的な統計ではノイズです。
日本と諸外国の若者の意識調査
最新版とはいえ数年前のデータではありますが、今回は内閣府が定期的に行っている日本と諸外国の若者(13歳~29歳)の意識調査結果を見ていきましょう。
引用元:我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度) - 内閣府
ステレオタイプによる誤解があると思われるところを調査結果からピックアップしていきます。
まず初めに、自分自身への満足、自己肯定感に関する項目です。
現代の若者はグローバル化とインターネットの普及によって自己肯定感を育むことが難しくなっているといった言説を時々見かけますし、私自身もそうなのだろうと思っていましたが、諸外国との比較を見る限りそうではない可能性があります。
どうやら日本の若者にだけ自己肯定感が低い傾向があるようです。
もちろん自己肯定感の大小には様々な要因があることから、この結果のみを見て何かを評することはできません。
ただ、まじめさや賢さ、やさしさや正義感、容姿や運動能力など、自身のどの部分に誇りを持っているかといった質問でも全ての項目でまったく同じ傾向を持っています。面白いことに自信のある回答は、日本人は多くても半数程度であり、アメリカ人は常に半分以上です。どこかしらの何かしらの要因というよりは、文化的に根本的な部分での肯定感が異なるのでしょう。
次に宗教観、『あなたにとって宗教は、日々の暮らしのなかで、心の支えや態度・行動のよりどころになると思いますか。』への各国の若者の回答を見てみましょう。
世界を語る際は欧州と米州を欧米と括ることが多いですが、少なくとも宗教観に関しては欧州と米州で違いがあることが分かります。欧州とは違いアメリカは世界的に見ても信心深く宗教が根付いた国家です。それはこの調査結果からも見て取れます。
次に政治観、『あなたは、今の自国の政治にどのくらい関心がありますか。』への回答です。
日本の若者は政治に興味が無いと言われがちですが、意外なことにそこまで諸外国と比べて大きな無関心があるわけではないようです。比率自体は確かに少し低いですが、興味を持っている若者もいます。
次は転職に関しての調査結果です。
個人的に、この項目は最もステレオタイプによる誤解があると思われます。
「つらくても転職せず、一生一つの職場で働き続けるべきである」と回答した比率は日本と韓国のアジア組が低く、逆に欧米は高い結果です。欧米のほうが転職に積極的だという言説は、少なくとも現在の若者に対してはステレオタイプによる誤解だと言えます。
参考として、10年以上前であれば日本が高く、欧米は低い比率でしたが、それがここ10年くらいで逆転しました。
結言
若者の意識と一口に言っても、10年もすれば世代が変わり意識も変わります。
よって若者に対する認識は都度都度アップデートしなければならないことが、このような調査結果から読み解くことができます。