当ブログでは国際統計に関するデータを時々取り上げて話題としていますが、今回もその一環としてGlobal Wealth Report2024を見てみましょう。
Global Wealth Reportの概要
Global Wealth Reportは資産調査において恐らく最も著名で権威ある調査だと言えます。元々は著名な投資銀行であるクレディ・スイスが発行していましたが、クレディ・スイスはUBSに買収されたため現在はUBSが発行主体です。
Global Wealth Reportは世界全体での富の増減、富の分布、富の見通しなどがまとめられたレポートです。基本的には投資銀行がお金持ちの投資家に向けて世界の状況を報告するために作られている資料ですが、私のような趣味人が読んでも意外と楽しめます。
興味深いところをピックアップ
さて、今回はレポートの概要ではなく私が興味深いと思った部分をピックアップして抄訳します。
10,000米ドル以下の最も低い資産層の割合は、2000年から2023年の間にほぼ半減した。これらの人々のほとんどは10,000~100,000米ドルの間に位置する、幅の広い第二の資産層へと移動し、その割合は2倍以上に増加した。また、1,000,000米ドルを超える富を持つ可能性は3倍になった。
世界の貧困率は年々改善されつつありますが、それが富の観点からも計測されています。
ハンス・ロスリングが『ファクトフルネス』で述べたように、世界が悪くなっていると考えることは思い込みであり、なんとなくそう感じているだけです。定量的な計測に基づけばそこまで世界は捨てたものではなく、ポジティブに見てよいでしょう。
もちろん未だ貧困に喘ぐ人々が居ることを無視する必要はありません。たとえ「世界は悪くなっている」ことが誤解であっても、「世界は問題ない」と考えることもやはり誤解だからです。
とはいえポジティブに「世界はより良くできる」と考えるためには、事実に基づきネガティブな誤解による思考の枷を解呪しておく必要があるでしょう。
成人一人当たりの平均資産の推移(2008~2023年、現地通貨ベース)
率直に、日本は相当下のほうです。
インフレの度合いや労働環境の変化なども一要因としては間違いなくありますが、現地通貨ベースですので根本的に資産額の成長率がまったくもって低いことが分かります。
富の不平等(ジニ係数)
ジニ係数の比較でみると、世界的な傾向として不平等な格差は拡大しつつあり、その中で日本は意外と平等なほうであると言えます。
と、この数字だけで見ればそう言えますが、値を見る限り当初所得ジニ係数の比較であり所得再分配ジニ係数ではありませんので、実感的な平等の比較にはなっていません。
このジニ係数から分かるのは、日本は諸外国と比べて仕事による所得差が少ないことであり、所得再分配後の金銭的平等ではないので注意が必要です。
世界の富のピラミッド2023
これは過去にも記事にしたように、実に切り取り甲斐のあるグラフです。
「世界の富の半分近くを1.5%の人々が握っている」
とも言えますし、
「59%の中間層の資産を足し合わせると世界の富の62%になる」
と毒にも薬にもならないことだって言えます。
正しくグラフを見るには数値の一部を切り取るのではなく全体で評価しなければなりません。
なお、世間で言われがちな格差社会とは裏腹に10,000米ドル以下の人数は年々減少しつつあり、それは少なくとも良いことだろうと私は思っています。
億万長者の数
最後に、億万長者の数と予測される変化を示したグラフです。
日本は人口比で考えるとそこまで億万長者が多くはありませんが、意外と億万長者になったり億万長者が移住してくる可能性がある国だと言えます。
とりあえず億万長者が多いほうが税収に有利ですので、私のような庶民としてはイギリスのように億万長者が減るようなことが無ければよいと思います。
結言
駆け足気味でしたが、Global Wealth Report2024の興味深かったところをつまみ食いしてみました。
他にも色々と面白い調査結果が乗っていますので、この手の調査結果を読書代わりに読むのもまた一興です。