ふと思い立ったので世界保健機構(WHO)のデータセットである世界保健統計(World Health Statistics)を見ていたのですが、いくつか気になる統計値があったのでそれをピックアップしていきます。
参考として、1位を良い方として日本の順位も記述していきます。
また平均値、中央値、標準偏差も計算結果を記述します。単純なガウス分布ではなくもっと別の統計量やグラフがあったほうが分析としては良いのですが、面倒・・・いえ、データ数が多くて見づらくなるので止めておきます。
自殺率(人口10万人あたり)
- データ数:183
- 日本の順位:159位
- 平均値:9.45
- 中央値:7.5
- 標準偏差:7.99
- 日本の値:15.3
他国と比べて日本の自殺率は高いとされていますが、その数値が具体的に示されています。順位としては下から数えたほうが早く、値は中央値の倍以上です。
同時に、日本よりも自殺率の高い国が20国以上あることにも驚きです。
アルコール総消費量(一人あたり、純アルコールでのリットル)
- データ数:188
- 日本の順位:152位
- 平均値:5.83
- 中央値:5.5
- 標準偏差:4.05
- 日本の値:10.1
飲酒を禁じる文化圏が平均を下げているかと思いきや、中央値や偏差を見る限りはそうでもなく、そもそもアルコールを多量に摂取する習慣のない国が多いようです。
日本は中央値の倍近くであり、世界的に見てもアルコールを多量に摂取している国だと言えます。
麻薬の統計もあれば比較として興味深かったのですが、それは世界保健統計には無かったです。
交通事故死亡率(人口10万人あたり)
- データ数:183
- 日本の順位:12位
- 平均値:17.1
- 中央値:15.3
- 標準偏差:10.8
- 日本の値:3.6
少し意外でしたが、世界的に見て日本は交通事故で亡くなる確率が相当低い国のようです。
上位の国には自動車の普及率がそもそも低い途上国もありますが、他にもアイスランド、ノルウェー、シンガポール、スイス、アイルランド、スウェーデン、イギリスがあるため、これらの国の対策を見習うことでさらなる改善の余地がありそうです。
HPV予防接種率推定値(15歳以上の女子)
- データ数:82
- 日本の順位:82位
- 平均値:47.2
- 中央値:48.0
- 標準偏差:28.8
- 日本の値:1
接種率のバラつきは大きいですが、これはそもそもワクチン接種を国家規模で行えていない途上国が多数あるためです。日本はそういった途上国よりもHPVワクチン接種率が低く、ワースト1位です。日本の接種率が低いことは知っていましたが、ワースト1位とは知りませんでした。
HPVワクチンの件に関してはメディア報道にも政府の対応にも問題があったとは思いますが、いずれにしても早急な改善が必要だと考えます。
一般政府支出に占める医療費の割合(%)
- データ数:188
- 日本の順位:1位
- 平均値:10.5
- 中央値:10.1
- 標準偏差:4.99
- 日本の値:24.2
この割合は一概に高ければよい数字というわけでもありませんが、何はともあれ日本の一般政府支出に対する医療費の割合は世界で一番高くなっており、中央値の倍以上です。
もちろん単純な比較にはあまり意味がなく、また先進国であれば割合が高くなるのはやむを得ないものですが、国が医療費の膨張を抑えようと様々な施策を検討していることの裏にはこのような背景があることは留意される必要があるかと考えます。
殺人による死亡率(人口10万人あたり)
- データ数:183
- 日本の順位:1位
- 平均値:8.4
- 中央値:4.6
- 標準偏差:12.2
- 日本の値:0.2
この数値は日本の治安の良さを示す指標の1つとなっています。平均値と中央値の差や標準偏差の大きさから治安の悪い一部の国・地域が平均値を上げていることが見て取れますが、それでも日本が最も低いことには変わりなく、良い点かと思います。
結言
他国と比べて差があるところをいくつかピックアップしてみました。
科学的思考の基本は観察・測定・実験であり、つまりは比較です。過去にも述べたことがありますが、「日本スゴイ」も「日本駄目だ」も「日本」を主語にするのであれば科学的思考に基づいた他国との比較が必要不可欠だと考えているため、この手の統計による定量的な比較は重要だと思います。