要約的ですが、以下のような言説、もしくはそれに類する言説を時々見かけます。
「他人にアドバイスをする人間はマウントを取りたいだけ。こちらのことを分かってもいないのにアドバイスをされたって、そんな上から目線は気に入らない」
アドバイスが常に「上から目線」かと言えばそれはちょっと違うのではないかと思うので、考えるところを述べていきます。
誠実さを表すやり方には違いがある
相手にマウントを取り自分が良い気持ちになることを目的として、上から目線でアドバイスをする人は間違いなく実在します。それは否定しないどころか首肯するばかりです。
そうやってマウントを取りたがる人とは距離を置いた方がいいと思います。
ただ、アドバイスをする人の全員が全員そうではないとも思うわけです。
確かに他人のことを全て正確に把握することはできません。だからこそ適切なアドバイスが必ずしも行われるとは限りませんし、時にそれは余計なおせっかいや上から目線のようになってしまうこともあります。
しかしそれはマウントではなく、誠実さの一つの形の場合もあるのではないでしょうか。
有名な文化の違いとして、「日本人はインド人を嘘つきだと思う」といった寓話があります。
日本人が道に迷い、目的地に向かう道をインド人に聞いて言われた方向に行ったらまったく違う道だった、インド人は平気で嘘をつくのだ、といったような物語構造です。
これはそれぞれの文化圏で”誠実さ"の基準が異なるために生じるすれ違いです。
この話の日本人は困っている相手の立場に立って「相手が満足する」行為を与えることを親切と考え、それが満たされないような不正確な助言をしたインド人を"不誠実"な嘘つきだと感じています。
それに対してこのインド人は困っている相手に対して「自身が出来る限りのことをする」行為を親切と考えるため、たとえ不正確であっても知っている限りの助言をしないほうが"不誠実"だと考えています。
このような基準の違いがあるため、正しい道を知らないならば「分からない」と答えるほうが"誠実"だと考える日本人からすればインド人が不誠実な嘘つきに見えてしまいます。
もちろん現実にはこれが全ての日本人とインド人に必ずしも当てはまるわけではなく、これは寓話に過ぎません。
ただ、このたとえ話に出てくる「道を教えてくれるインド人」は「上から目線」で「不誠実」でしょうか?
私は、困っている人のためにアドバイスや助言を与えようと自身が出来る限り頑張る人を「上から目線」の「不誠実」な人とは思えないです。
もう少し厳しい表現を用いれば、「こちらにアドバイスをするならば、それはこちらが満足するレベルで行わなければならない」と考えるのは、ある意味でアドバイスをする側以上に「上から目線」となってしまいかねない考え方に陥らないだろうかと思う次第です。
相手が上に居るとは限らない
もう一点、他者のアドバイスがなんでもかんでも「上から目線」に思えるのは別の要因があると考えます。
それは他者が上にいるのではなく、自身を下に置いている場合です。相対的に自己の位置が低ければ、他者の言葉はどれも上からに聞こえてしまうでしょう。
もし他者のアドバイスが「上から目線で気に入らない」と思ったときは、急いで耳を塞ぐのではなく、一度自身の立ち位置を確認して自己肯定感の低下や劣等感による卑下が生じていないかを見直すほうが良いかもしれません。
自身を見直した結果、明らかに「上から目線」のアドバイスであれば、それを確認してから耳を塞ぐのでも遅くはないかと思います。
余談:アドバイスを素直に受け取る方法
「上から目線の気に入らないアドバイス」にも、もしかしたら役立つアドバイスが含まれている可能性があります。それに全て耳を塞いでしまっては勿体ないかもしれません。他者のアドバイスを取捨選択して採用するかは自分次第なのですから、「役立つかどうか」と「言い方が好ましいかどうか」は分けて考えるのもアリです。
一種のライフハックとして「アドバイスを上から目線で受け取る」方法があります。
誰だって「上から目線のアドバイス」は心理的に受け取りにくいものです。そこで、あえて高慢ちきなキャラクターを適当に演じて自らを高い位置に置くことで他者からのアドバイスを「下から目線のアドバイス」にすり替えてしまえば、素直に受け取れるようになる、かもしれません。
令嬢(あら、進言を持ってきたのね。そこに置いておきなさい、後で読んであげるから)
王様(ほう、ワシに直言するとは肝の据わった奴じゃ。宜しい、述べてみたまえ)
殿様(ふむ、よくぞ提言してくれた、あっぱれじゃ、苦しゅうないぞ)
兄貴(へえ、なかなか良い提案をしてくれるじゃねえか、よっしゃ採用してやるか)
何様だよという話ではありますし、これを素直と言っていいのかはノーコメントですが。
もちろん表には出さないで、心の中でだけです。
態度が顔に出ちゃうとバトルモードに突入しかねません。
※個人差がありますので、用法・用量を守ってご利用ください。