忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

マスメディアには情報の転売屋であって欲しくない

 本日は情報について私見を述べます。

内容ではなく「如何にセンセーショナルか」が競われる

 国家・機関・団体が測定しているデータ・統計・ランキング、そういった種々様々な情報群は、実際に世界中で活用されているものの一般的にはあまり流通する情報とはなりません。それぞれの団体が発表してはいますがその発信力が強いものではないからです。情報が秘匿されているわけではなく足を運んだり少し費用を掛ければ誰でも入手できるものばかりであり、ただ単純に発信力の問題で無数の情報の陰に埋もれてしまっています。

 時にこれらの情報群の中からセンセーショナルな測定結果が出てきます。それは意外なランキングであったり、驚愕の統計であったり、驚くべき未来予測であったり、様々です。そういった情報は耳目を集めることができるため、情報が埋没される前にマスメディアが取り上げて拡散します。

 ビジネス的には何も間違いはありません。マスメディアのビジネスモデルは情報の販売や広告収入であることから、発信した情報に飛びついてもらう必要があります。そのためには目立つ情報を他社に先駆けていち早く顧客へ届けることが重要であり、意外性の無い情報や人々の関心を引けない情報を発信する理由は彼らにありません。

 これはジャーナリズムだけでなくアカデミズムでも同様の宿痾があります。研究を行うためにはお金が必要であり、当然そのお金は無から湧いてくるわけではないことから、税金なりパトロンなりから研究費用を獲得するためには衆目を集め興味関心を惹く必要があるわけです。

 センセーショナルな情報ばかり取り扱うことに対して個別のジャーナリストや研究者を批判したいわけではなく、これは業界全体の構造的な問題です。むしろそこで活動している個々人は組織や業界のルールを誠実に順守して活動している真面目な人々であり、非難を受ける謂れは無いでしょう。

 

マスメディアには発表報道のみに堕しないで欲しい

 各所から発表された情報やプレスリリースの内容をそのまま報じることを発表報道と言います。対して入念な調査・取材によって情報を集め、それらを積み上げて新たな付加価値を付け加えた報道を調査報道と言います。この違いは良し悪しではなく、どちらも必要です。

 ただ、報道の分量が発表報道に傾倒していることは懸念事項です。ジャーナリズムとは情報を公表することだけでなく、その情報の解説や批評を含む行為だからです。発表報道とは容赦のない表現をすれば「情報の転売屋」に過ぎず、ジャーナリストが主として行うこととしては片手落ちです。

 もちろん発表報道に傾倒しているのは昨今に限った話ではありませんが、従来はマスメディアが独占的に行っていた報道機能がインターネットによって誰でもできるよう広く開放されたことによって、webライターや副業ライターによる発表報道の分量は加速度的に多くなっています。

 マスメディアで発表報道が多くなる理由もあります。他所のプレスリリースをそのまま流すのであればデスクや上層部からの抵抗を受けにくいため容易ですし、取材の時間と費用を掛けずに済むため経済的でもあります。センセーショナルな情報であればそれこそ見出しだけで多数のページビューや読者を稼ぐことができるでしょう。昨今のメディアの不景気を考えればやむを得ない選択ではあります。

 

 ただ本職のジャーナリストやマスメディアには情報の転売屋に成り下がって欲しくないという気持ちがあります。ジャーナリズムとは誰かが報じられたくないものを報じることであって、そのためには情報を探し出し、取材し、分析する知性と見識が必要だからです。

 情報の転売なんてことは悪い言い方をすれば誰にでもできます。本業の情報屋であるマスメディアにはもっと調査報道に注力してもらいたいと個人的には思っている次第です。

 

本業ジャーナリストへの期待

 エコノミスト誌が国際女性デー(毎年3月8日)に公表する「女性の働きやすさランキング」において日本は例年ワースト2位、韓国は例年ワースト1位を取っているのですが、今週の発表ではどこを探しても日本がワースト2位のことばかりしか報道されていませんでした。どんな採点項目でどの項目に問題があるから順位が低くて日本としては今後どうするべきかという情報がさっぱり無いのが不満です。結構探し回ったのに採点の基準すら見つけられなかったのが特に不満。

 情報の解説と批評をしてこそのジャーナリズムですので、ぜひともそういうところをしっかりと調査して日本の問題点を批判することをマスメディアには期待しています。

 

 

余談

 ちなみにエコノミスト誌のランキングでは項目に「ビジネススクール」があるようなのですが、これは日本や韓国みたいな商習慣の地域には不利な採点方法だと思うのです、ビジネススクールの立ち位置が欧米とは異なるので。ですが計算方法が分からないとなんとも。

 データの調査が趣味なので、調べきれなかった八つ当たりをマスメディアにしたいという気持ちが今回の記事にわずかばかりあることは否定できないです。