忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

高速道路のカーブは三角関数が使われてるんだぞ、と言っていた父の思い出

 私は変な人間であることを自覚しているのですが、その原因は概ね8割、いや9割くらいは父親のせいだと思っています。

 愛情深い博愛主義者の母と合理的で現実主義者の父の思想が綺麗に半々くらいで混ざって捏ね上げられたのが私の思考・思想のベースです。しかし性格はほぼ父譲りです、困ったことにそっくりです。よって私が変な人間なのは父のせいだということにします。なんとも実にロジカルな結論です。

 そんな父との子供の頃の会話を思い出しつつ書いてみましょう、変な大人とはこういうものかということが分かるかと思います。

 

フィボナッチ数列

 小学生の頃、父に連れられて図書館に行くのが楽しみでした。そもそも本を読むのが好きでしたし、帰り道に母に内緒で時々アイスやお菓子を買ってくれる父の不器用さも好きでした。

 ある日、数学の書棚で不思議の国のアリスをモチーフにした無限に関する本を読んでいた時です。そういえば余談ですが、多くの数学入門書では不思議の国のアリスがモチーフに用いられていますが、作者のルイス・キャロルが数学者だからですかね?

 それはさておき、突然後ろにやってきた父が本を開いて出してきたのが以下の問題です。

「この□に入る数字、分かるか?」

0, 1, 1, 2, 3, 5, □, 13, □, 34, 55, 89, ・・・

 そう、フィボナッチ数列です。数式で表すと少し難しくなりますが理屈は簡単で、ある数字と前の数字を足したものが次の数字になります。答えは8と21です。最初の□は5+□=13なので、□=13-5=8ですね。

 この時は正解を答えられましたが、漸化式どころかまだ方程式すら学んでいない小学生に出す問題ではないでしょう。しかしこういう風にクイズや問題を出してきて唐突に抜き打ちテストをする悪い癖が父にはありました。

 そして答えられなかったり間違えたりするとめちゃくちゃ憎たらしい顔をして笑うのです。「はぁ、こんな程度のことも分からないのか」と言わんばかりに。その顔が憎たらしく拝みたくないがため必死に答えを考えるのですが、それも所詮は父の掌の上だったのでしょう。ああ、今思い出しても嫌味な性格をした父だこと。私とそっくりなんですけども。

 ちなみにフィボナッチ数は増殖する系で頻繁に現れる数字で、特に自然界でよく見つけることができます。例えば木の枝の本数や花びらの枚数などはフィボナッチ数に沿っています。またフィボナッチ数は黄金比とも関わりの深い数列です。というような話を小学生にする変な父の思い出。この思い出は良いものなのか悪いものなのか。

 

三角形の面積

 中学生の頃、図形の宿題を家でやっていた時、酒に酔って調子に乗った父がノートの隅に適当な三角形を書いて言いました。

「この三角形、三辺の長さが分かってるとして、面積を出せるか?三角関数を使わなくても解けるぞ」

「いやそもそも三角関数ってなにさ」

「因数分解や三平方の定理を理解するのにちょうどいいからやってみるといい」

 当時はパソコンを持っていなかったため検索して調べることもできず、ああでもないこうでもないと式を弄って導出したのが次の式です。

 そう、ヘロンの公式です。教育指導要領外なので物好きな先生が授業の途中に話すこともあるかもしれませんが、少なくとも義務教育の範囲外です。確かに知っていれば便利な公式ですし、三角関数を使わない導出過程は中学数学の代数分野の総集編と言えそうな感じですのでちょうどいいのですが・・・宿題の邪魔をしてまで教えることか?いや、まあ、私の父は小学生に連立方程式を教えようとする人なので、文句を言っても仕方がないのですが。

 そして実際、中学数学の復習にはちょうどいいので、未だに気分転換したいときには公式を自力導出していたりします。悔しいことに良い計算問題なんですよね・・・

 

高速のカーブ

 高校生の頃、高速道路を父の運転する車に乗って走っている時です。父と私、男二人で居る時はあまりしゃべることも無いのですが、無言でも退屈するのでちょっとした雑談をポツポツとしていました。

「最近学校で三角関数を勉強してるんだけど、あれって何に使えるのさ?いまいちよく分からないんだけど」

「三角関数はなんでもかんでも使うぞ、幾何や波を扱う時が多いが・・・そうだな、例えば今走ってるこの高速道路、このカーブも三角関数が使われてるぞ」

「高速道路のカーブってわざわざ計算してるの?」

「ああ、ただのサインカーブで作ったらハンドル操作が大変だろ?ハンドルを一定速度で回せば曲がれるようにちゃんと三角関数を使って計算されてるんだ」

「へえ、賢い人もいるもんだね」

 これは自分で免許を取って運転するまでは実感的に分からなかったのですが、確かにいきなりカーブが円弧で始まってはハンドル操作が大変です。ハンドルを回す間の猶予区間が無ければ曲率に合わせて急ハンドルが必要になってしまいます。

 このカーブに入るまでの猶予区間はクロソイド区間といい、クロソイド曲線によって算出されています。数式や図は別にどうでもいいのですが一応乗せておきましょう。三角関数が使われていることが分かります。

 円弧と直線を緩やかにつなぐこのカーブは高速道路の他にもジェットコースターや一部の鉄道線路でも用いられています。確かに三角関数は使っているけども、まあ正直トリビアというか小話のような話です。高校生に雑談で話す内容ではないかと思います。

 

まとめ

 私とそっくりでしょう?(自虐)

 まあ、あれです。私が普段書いているような記事がなんであんな感じなのかと言うと、この父あってこの息子ありということなわけです。似ていて嬉しいとか嫌だとかではなく、気持ちとしては達観に近いですよね。そういうものなんだという。もはや遺伝というか環境というか、なんともはや。

 

 

余談

 相当昔の話ですが、家族で熱海へ旅行に行った際、起雲閣にも行きました。そこにあった谷崎潤一郎の「細雪」の紹介文の前での話です。

妹「お兄ちゃん、これなんて読むの?」

私「ああ、これか。(くふふ、嘘教えたろ) レミオロメンで物凄く売れた曲があるだろ?そう、こなゆきだよ」

と、しょうもない嘘を教えたところ、すっ飛んできた父に「馬鹿なことを教えるな!お前は谷崎潤一郎も読んでないのか!」とめちゃくちゃ怒られました。怒られたのは自業自得とはいえ、古典の名作は一通り読んでおけと言ったのは父じゃないか、細雪(ささめゆき)くらいちゃんと読んでるってば・・・