忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

失敗国家/脆弱国家ランキング(2023年版)と日本のスコア:Fragile States Index 2023

 今年も脆弱国家ランキング(Fragile States Index)が発表されましたので、その内訳を見ていきましょう。

 

(2021年の紹介記事はこちら)

 

(2022年の紹介記事はこちら)

 

(失敗国家/脆弱国家ランキングの詳細はこちら)

 

脆弱国家ランキングとは

脆弱国家ランキング(Fragile States Index:FSI)とは、アメリカのシンクタンクである平和基金会(FFP)が各国の安定性を数値化して毎年公表している指標及びランキングです。

 この指標は過去には失敗国家(Failed States)という直球なネーミングでしたが、2014年からは脆弱国家(Fragile States)という表現に変わっています。

fragilestatesindex.org

 

 ランキングは12項目の指標によって採点されています。

 それぞれの項目のスコアは10点満点で、最高点数は120点です。120点に近いほど不安定で危険な状態、0点に近いほど安定的で持続的な状態と判定されます

 FSIでは総合スコアによって安定性の区分がされており、目安としては以下のような印象です。

~30点:持続的(どこにも大きな問題を抱えていない国)

31~60点:安定(一つ二つ大きな問題を抱えている国)

61~90点:要注意(複数の項目で大きな問題を抱えている国)

91~120点:警戒態勢(全ての項目が致命的に悪い国)

 

2023年の評価に関して

 2023年の1位、最も不安定な国家はソマリア(111.9点)です。2016年に1位となって以来2位でしたが、6年ぶりの1位となりました。スコアは昨年から+1.4と若干の悪化が見られますが、それよりもここ数年1位であったイエメン(108.9点)が-2.8と大きくスコアを改善したことが順位逆転の原因でしょう。

 2023年の179位、最も安定した国はノルウェー(14.5点)です。長年最も安定した国として評価されていたフィンランド(16.0点)の牙城を崩し、2010年以来の快挙となります。今年のフィンランドは177位で、178位はアイスランド(15.7点)です。

 2023年の日本は161位スコアは30.5点です。残念ながら今年も30点を上回っているため持続的との評価は得られませんでしたが、それでも安定的と評価されています。順位の変動は無く去年と同様161位のままですが、しかしスコアは6年連続で改善されています。日本の1つ上に位置する国はフランス(28.8点)で、日本とフランスの間がちょうど持続的か安定的かの境目です。

 

日本のスコアの変化

 具体的に日本のスコアを見ていきましょう。

 日本はスコアに大きな変動が無く順位も無難な位置にいることから、残念ながら例年の分析レポートでは日本のスコアに対する詳細情報が公開されていません。よって去年のスコアと比較する形で変化を見ていきます。

 安全機構・治安のスコアは変動していません。この一年間でも様々な事件が起きましたが、全体としては大きな変動は無いとの評価です。同様にエリートの派閥もスコアの変動はありません。

 集団の不平不満は-0.3と改善されています。この項目は2015年に4.2を記録して以降は毎年改善されており、今年は1.9と過去にない好スコアを記録しました。

 経済の衰退は+0.1と少し悪化しています。ただし過去を遡ると例年通りの変動幅に収まる範囲ではあります。

 経済発展の不均衡は+0.5と大きく悪化しています。この項目は経済的な平等性や経済的機会によって評価される項目であり、この項目の悪化は経済格差の進展を意味します。さらにこの項目は2020年では1.4と好スコアだったところから3年連続で悪化しているため、日本が目下対策を講じるべき課題であると言えるでしょう。

 海外への人材流出は-0.2と改善されています。報道では海外への人材流出が懸念されている中、少し意外なことに改善傾向です。この項目は2013年から2018年にかけて悪化し、2019年から2023年にかけて改善されています。

 国家の正当性は+0.1とわずかに悪化しています。とはいえスコア0.3は諸外国と比較しても最も高く、極めて高い評価をされています。

 公共サービスは+0.3と悪化しています。ただし1.8は充分に高い値ではあります。参考として、2012年の評価では東日本大震災の影響により5.0を記録しています。

 人権と法の支配は-0.1とわずかに改善しています。ただし2.8はまだまだ改善の余地があるスコアです。

 人口動態圧力は-0.3と改善されています。この項目は日本の総合スコアの足を大きく引っ張っている項目であり、さらなる改善が必要です。人口動態圧力は人口構成だけでなく自然災害や資源の存在も評価されるため、日本が他国よりも好スコアを目指すことは難しくあるものの、人口分布や人口増加率などは改善が必要でしょう。

 難民と国内避難民は-0.3と改善されています。日本は自然災害の影響で国内避難民の数が多く、特に東日本大震災以降は改善が必要な評価項目となっていましたが、2017年以降は毎年改善傾向を示しています。

 海外からの干渉は-0.3と改善されています。詳細な採点結果が公表されていないため何を持って改善されたかは不明ですが、スコア2.0は他国と比較しても意外なほどに好スコアだと言えます。

 

結言

 2023年の日本のスコアは経済発展の不均衡公共サービスが悪化し、集団の不平不満人口動態圧力難民と国内避難民海外からの干渉が改善されています。

 総合スコアは-0.5と改善されましたが、順位の変動はなく161位のままです。

 経済発展の不均衡は3年連続で悪化しており、日本が対策を講じるべき当面の課題と言えそうです。