今年も最高の国ランキングが更新されましたので、順位とスコアを見ていきます。
(参考:2021年度版の記事)
最高の国ランキングとは
最高の国ランキング(Best Countries in the World)はアメリカのUSニューズ&ワールド・レポートが毎年公表しているランキングです。
各国の有識者にアンケート調査を行い、政治や経済、軍事や国家の影響力、文化や生活といった10項目からスコア付けしています。
最高の国ランキングはそこまで権威ある調査というわけではありませんが、世に様々ある国際ランキングの中でもカテゴリの網羅性が高く、採点も明確に差異を付ける方法を取っているため、国家の得手不得手を明確にすることに優れている調査だと考えます。
今年の日本は85か国中6位でした。去年は78か国中2位だったため、少し順位を落としています。
具体的にスコアの内訳を見ていきましょう。スコアはそれぞれ100点満点で採点されています。変化の比較として、昨年のスコアや順位をカッコで併記します。
冒険的要素(Adventure) スコア:45.1(41.6) 順位:28位(28位)
- 友好的か:55.9(56.0)
- 面白さ:49.0(29.2)
- 観光に適しているか:84.4(78.0)
- 快適な気候:15.5(13.7)
- 風景:59.7(66.9)
- セクシー:3.3(1.2)
全体的に大きなスコア変動はありませんが上昇方向です。面白さはその中でも大きく上昇しています。
セクシーが日本のスコアの足を引っ張っていることが分かります。僅かばかり上昇していますが、それでもこの調査の全項目において最低スコアです。参考として、冒険的要素で1位を取っているブラジルのセクシーは100です。まあ、妥当な評価だと思います。
機敏性(Agility) スコア:83.7(88.4) 順位:4位(7位)
- 順応性:38.4(43.3)
- 活力:81.5(76.8)
- 現代的:100.0(99.6)
- 進歩的:100.0(92.2)
- 反応性:66.0(86.4)
スコアに大きな変化はありませんが、他国がスコアを落としたのか順位は上昇しています。但し反応性が低下していることは留意が必要です。
日本人からすると少し疑問を感じる方もいらっしゃるとは思いますが、日本はモダンで先進的だという評価です。
文化的影響(Cultural Influence) スコア:81.2(77.7) 順位:4位(5位)
- 文化的意義:77.2(67.0)
- おしゃれ:54.3(38.8)
- 幸福:30.4(31.2)
- 文化の影響力:88.7(90.6)
- 強力な消費者ブランド:89.7(92.7)
- 現代的:100.0(99.6)
- 名声:71.9(82.5)
- 最新の流行:73.4(63.8)
極端な変動はありませんが、スコアは上昇傾向です。
起業家精神(Entrepreneurship) スコア:96.9(100.0) 順位:3位(1位)
- 世界との繋がり:96.6(91.7)
- 教育を受けた人口:99.9(98.8)
- 起業家精神:85.9(85.0)
- 革新的:100.0(100.0)
- 資金調達のしやすさ:44.1(57.2)
- 熟練労働者:100.0(100.0)
- 技術的専門性:100.0(100.0)
- ビジネスの透明性:64.2(74.7)
- 整備されたデジタルインフラ:100.0(100.0)
- 整備されたインフラ:99.8(100.0)
- 整備された法的枠組み:64.6(73.0)
高いスコアを維持しつつも、少しスコアと順位を落としています。
昨年からの変化としては資金調達のしやすさとビジネスの透明性、整備された法的枠組みがスコアを落としています。元々低かった部分がさらに下がった形です。
地位、遺産、伝統(Heritage) スコア:76.6(72.2) 順位:9位(10位)
- 文化的なアクセス性:71.2(55.4)
- 豊かな歴史:84.9(82.6)
- 美味しい食べ物:65.5(60.0)
- 多くの文化的魅力:88.0(86.3)
- 多くの地理的魅力:67.7(73.5)
全体として大きな変動はありませんが、文化的なアクセス性が高まっており、地理的な魅力が少し落ちています。これはロシアによる戦争の影響があるかもしれません。
国家の原動力(Movers) スコア:63.1(74.8) 順位:9位(6位)
- 区別:32.8(48.2)
- 独自性:67.5(91.6)
- 活力:81.5(76.8)
- 固有:63.1(63.3)
この項目は明確にスコアを落としています。特に区別と独自性が顕著に下がっています。これは他国の独自色が強まったのか日本の独自色が弱まったのか判定が難しいところですが、別項の文化的なアクセス性が高まっていることから、日本というブランドがコモディティ化しつつあるのかもしれません。
ビジネスの開放度(Open for Business) スコア:55.3(57.1) 順位:39位(26位)
- 製造コストの安さ:10.3(3.6)
- 良好な税務環境:5.8(4.8)
- 官僚的でない:80.5(87.5)
- 腐敗していない:99.9(99.9)
- 透明性の高い政府活動:26.2(27.0)
スコアに大きな変動はありませんが、為替の影響か製造コストの安さが改善方向になっています。
国家のパワー(Power) スコア:63.2(68.8) 順位:8位(6位)
- リーダー:44.3(69.3)
- 経済的な影響力:95.4(92.5)
- 好調な輸出:82.8(88.3)
- 政治的な影響力:47.3(47.3)
- 強固な国際提携:75.6(76.2)
- 強力な軍隊:25.3(27.7)
全体的に低下傾向で、特にリーダーが明確にスコアを落としています。
人生の質(Quality of Life) スコア:71.7(69.2) 順位:14位(13位)
- 良い労働市場:95.0(74.1)
- 手頃な値段:15.4(1.4)
- 経済的な安定性:93.0(96.2)
- ファミリー向け:38.9(38.0)
- 所得の平等:28.1(15.1)
- 政治的な安定性:78.6(71.4)
- 安全:71.9(72.2)
- 整備された公教育システム:80.1(92.9)
- 整備された公衆衛生システム:63.3(87.4)
全体のスコアは上昇しましたが、順位は一つ落ちています。手頃な値段や所得の平等などお金に関する指標は改善方向ですが、整備された公教育システムと整備された公衆衛生システムが低評価となりました。
社会的目的(Social Purpose) スコア:25.0(29.7) 順位:23位(20位)
- 動物の権利への関心:9.7(6.3)
- 人権への関心:34.0(33.6)
- 環境への関心:43.3(36.7)
- 温暖化対策への取り組み:26.2(34.7)
- 社会的正義への貢献:12.3(20.5)
- ジェンダー平等:8.5(8.4)
- 人種の公平:12.0(12.8)
- 信仰の自由:18.9(20.1)
- 財産権の尊重:47.5(54.9)
- 社会への信頼:52.3(76.6)
- 分散された政治力:29.7(33.9)
全体的に低スコア傾向です。顕著にスコアを落としたのは温暖化対策への取り組みと社会的正義への貢献、社会への信頼です。
ランキングへの所感
いくつかの項目でスコアの上下はありますが、全体としてはそこまで大きな変動はなく、日本の順位低下はアメリカ、スウェーデン、スイスといった国々のスコアが上昇したことが理由と考えられます。昨年1位のカナダも今年は3位に順位を落としています。その中でドイツは昨年3位から今年は2位と順位を上げる大健闘です。
日本は全体的なスコアが高く、良い項目は100点に近いスコアを獲得していることから、不得手な項目の改善と低下したスコアの再浮上を考えるのが良いと考えます。
まず独自性(67.5)のスコアが下がっていることは憂慮すべき点です。類似項目として区別(32.8)や名声(71.9)も下がり、文化的なアクセス性(71.2)は上昇しています。これはグローバルな基準に近づいているとも言えますが、オリジナリティが低下してコモディティ化しつつあるとも言えます。欧米のデファクトスタンダードから離れた独自性は日本の強みであることから、如何にして文化的なアクセス性を高めつつ独自性を出せるかが今後問われていくことでしょう。
リーダー(44.3)の低下は、今後も混沌とし続ける国際情勢の中で適切な舵取りを担える人材をリーダーに据えるよう民主主義的な努力が必要になることを示唆していると考えます。
社会への信頼(52.3)や公教育システム(80.1)、公衆衛生システム(63.3)が低下していることはここ数年の感染症問題や政治環境の変化が影響していることが理由でしょう。これら福祉環境の劣化とそれに伴う信頼の低下は社会の安定性を損失するものであり、改善の必要があります。
反面、革新性や先進性、人材やブランド力といった項目では高い評価を受けているため、これらは今後も伸ばし活かしていきたいものです。
余談
下から数えて二番目のスコアである税務環境(5.8)はとにかくなんとかしなければなりません。最低点のセクシー(3.3)は、まあ、なんというか、文化風習的にどう改善したものか思い付きませんが、税制は改善余地が充分にあるはずです。