言いがかりに近いなにか。
定型句ではありますが
「勉強不足で恐縮ですがご教示願います」
「不勉強で申し訳ありませんが教えていただけないでしょうか」
これらはビジネス定型句の一種で、何かしらの教えを乞う際に自らの無知を恥じる気持ちを提示してへりくだる、かしこまった表現です。
あるいは、別の用例もあります。
「勉強不足で恐縮ですが、これはこのような意味で宜しいでしょうか?」
「不勉強で申し訳ありませんが、このような考え方もあるのではないでしょうか?」
このように、自らが誤っている可能性を示唆する前置き、謙遜として用いることもあります。
これらは定型句であり、目くじらを立てるようなものではありません。
ただ、個人的にはあまり好みではなかったりします。
まず、この定型句はビジネス以外にもアカデミックな環境でも用いられます。ネットミームとして有名な表現で言えば学会発表などで用いられる「素人質問で恐縮ですが・・・」です。
字面通りに質問者が素人の場合もありますが、学会などで素人が紛れ込んでいることは稀であり、大抵の場合で質問者はその道や隣接分野の専門家です。
よって質問の前置きとして用いられる「素人質問で恐縮ですが・・・」の意味するところは、「素人でも分かるような説明不足やミスがあるぞ」です。今から発表の弱点を攻撃する宣言であり、発表者にとってはなんとも恐ろしい枕詞だと言えます。
そんなアカデミック的な皮肉を知っている人間からすると、「勉強不足で恐縮ですが・・・」とする前置きには裏の意味があるように感じてしまいます。まさか本当に勉強不足で聞いてくる奴なんていないだろうと。
つまり、「勉強不足で恐縮ですが、ご教示願います」なんて言われると、私のようなひねくれものは「謙遜の枕詞じゃなくて、本当に勉強不足なのかよ!」と思ってしまうこともしばしばです。
いえ、分かってはいるのです。ただのビジネス定型句だということは。
でも、勉強不足だと分かっているなら勉強してからくればいいだろうにと、つい思ってしまいます。なんとも大人げない話です。
違う表現のほうが誤解を生まないと思う
ただの定型句ではありますが、「勉強不足」や「不勉強」がいまいちカッチリ嵌りません。穿った取り方をすればそれは努力不足に聞こえかねない言葉だと思っています。もっと率直に「勉強したいので教えてください」とか「間違えていたら申し訳ないのですがこうでしょうか?」と言ったほうが正しくニュアンスが通じるような気がします。
ビジネス定型句は確かに無難ですし、マナーと同じで覚えておいて損はありません。ありませんが、とはいえそれを使わなければいけないなんてルールも無いわけで、誤解を招きかねない表現は使わないほうが安牌だと思っています。
まあ、こちらが勝手に誤解しているだけなので、人様には求めませんが。私が勝手に使わないだけです。
厳しい話
「分かりません」が許されない仕事、例えば技術屋や医者、研究者や弁護士などの専門職は勉強することが業務の一環です。知識が飯の種であり、分かっていない人や勉強しない人に与えられる椅子はありません。
そんな環境で働いていると、「勉強不足で恐縮ですが・・・」の意味が理解できない時もあります。恐縮してる暇があれば勉強しろよと。
まあ、それはとても辛辣なので、少なくとも専門職以外の人には求めませんけど。
ただ、専門職には求めます。厳しい話ですが、専門職とはその職務を遂行するにあたって必要となる専門的な知識を体系的に学んでいなければ務まらない仕事であり、知識が無い専門職は許されませんので。
結言
つまるところ、「勉強不足で恐縮ですが」は使われる環境や集団によって意味合いが変わる、取り扱いの難しい言葉だと思っています。極めて個人的な感覚ではありますが。