忘れん坊の外部記憶域

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軍事情報のデマを避けるためには地理と距離の視点が役立つと思う

 本邦では軍事の話をすると白い目で見られる傾向があります。

 医者が病気に詳しいように平和主義者も軍事に詳しい必要があるとは個人的に思っていますが、まあ詳しくない人が多いのはそれはそれで仕方がないことでしょう。軍事は野蛮の極致ですので、それを忌避する人がいるのは自然なことです。

 そもそもなにも軍事オタクになる必要はありません。兵器やら戦術やらに詳しくなくてもなんら問題はないです。なんなら私だって政治や歴史の観点から見た軍事しか分からず、兵器の細かいカタログスペックなんてほとんど知りません。

 

 ただ、あまりにも軍事を知らなさすぎると軍事関連情報のデマに引っ掛かるような気がするので、個人的に軍事関連の情報で注意しているポイントを述べてみます。

 それは地理距離です。

 話が重くならないよう、それらについて軽めの口調で語ってみましょう。

 

いくつかの事例

 例として、「歩兵携行式多目的ミサイルのジャベリンがあれば戦車を倒せるのだから戦車は不要だ」と一時期ネットの一部で話題になっていましたが、なにも軍事オタクでなくとも距離を考えれば無理なことは簡単に分かります。

 だって歩兵の持てるミサイルなんて最大でも数km程度しか飛びません。ジャベリンなら最大でも2km強です。それに対して戦車の主砲はもっと遠くまで届きますし、自走砲であればさらに遠くから撃ってきます。そして戦車や自走砲の周囲には随伴歩兵が居ますので、重たいミサイルを担いでえっちらおっちら戦車に近づこうとしてもすぐに発見されてしまいます。

 ですので、平原で撃ち合えば結果は明白です。歩兵がミサイルを戦車に打てるほど肉薄することはできませんので、そもそも撃ち合いですらないワンサイドゲームになります。

 ロシアとウクライナの戦争初期で歩兵携行式多目的ミサイルが活躍できたのは「兵隊がある程度隠れられるような都市部での防御戦」において「たとえ数多の味方が砲弾で吹き飛ばされてもそこに留まって戦車が近接するまで耐えた兵隊の犠牲と勇敢さ」があった上、「ろくに随伴歩兵すら連れていないロシア戦車部隊の間抜け」があったためです。

 あれを真似るためには「遮蔽となる自国の都市部が戦場になること」「自国の兵隊がたくさん犠牲になること」を前提とする必要があります。それはなんというか、個人的には好みではないです。そんな前提が不要になる方向で努力したほうが良いのではないかと。

 

 他にもドローンは曖昧な印象による誤情報が多い事例ですね。

 私たちがパッとイメージするドローンはラジコンで操作するような小さくて丸いアレだと思いますが、あれが遥か遠くから海を越えて飛んでくる、なんてことはありません。

 だって通信距離や航続距離の制約がありますので、小さいドローンではそんな何百キロも飛べません。重たい兵器を積んだらなおさら地理的に無理です。もちろん小さいドローンも使われてはいますが、それは前線の短い距離での話です。

 より軍事的な脅威として話題となるドローンはそういった小さいドローンよりも無人航空機UACVです。UACVはたくさんの兵器を積んで長距離を飛ぶことから普通の有人航空機よりも一回り二回り小さい程度です。写真で見ると小さく見えますが、有名なアメリカのリーパーや中国の翼竜だって全長は10mくらいあります。人に関わる部分をオミットして無人用の機械を積んでいるだけで、そのくらい大きくないと地理と距離の壁は超えられません。

 そしてそんなサイズの無人航空機への対処は有人航空機と同じです。ドローンであろうとなかろうと変わりません。

 つまり、ゲームチェンジャーとしてドローンが盛んに喧伝されてはいますが、いずれは無人の強みを生かした何かしらができるとしても今のところは何か物凄いスペシャルなものではなく既存技術の延長線にあります。

 

結言

 そんな感じで、地理と距離を考えれば軍事関連情報のデマに騙されにくくなるかと思います。基地や部隊配置や装備は地理的要因が大きいものです。

 後は、化学の知識があればより騙されにくくなるとは思います。軍事におけるデマの相当数は化学的な間違いが含まれています。

 

 ただ、とかく軍事は詳しくない人が多いせいかジャーナリストの情報ですら誤っている場合が多々あり、他の分野と比較してもデマが非常に多いです。個人的には医学と同じくらいデマが蔓延りやすいと思っています。

 よってどんな情報でもそれに飛びつくのではなく専門家の見解や識者の知見を待ったほうがいいと思います。

 その専門家や識者が少ないことが最大の問題ではありますが。