何か雑談的な記事を書きたい気分になったので、時々見聞きすることのある「戦争は科学技術を発展させる」について私見を述べていきます。
・・・これは雑談で扱うようなテーマだろうか?
真でもあり偽でもある
真っ先に結論から述べてしまえば、これは真でもあり偽でもあるでしょう。
戦争によって科学技術が発展することは当然ながらあります。
そしてそれは戦争以外では科学技術が発展しないことを意味しません。
当たり前ですが平時であっても科学技術は発展します。よって戦争を科学技術にとって肯定的なものだと捉える必要はありません。
今回は戦争と技術に関して【方向性】【時代性と予算】の2つの切り口で述べていきましょう。
軍事の特殊な方向性
国家の保有する軍隊とは矛でもあり盾でもあります。これは人体で言うところの獲得免疫に近いと言えるでしょう。話が逸れてしまいますが、雑談なので免疫系の話もします。
獲得免疫(適応免疫)とは人体の防衛ラインの一つです。皮膚や粘液などの第一の防衛ライン、白血球などの自然免疫が構築する第二の防衛ラインを突破された際に活躍するリンパ球などを指す第三の防衛ラインで、人体の最終防衛ラインと言えます。
最終防衛ラインである獲得免疫は人体を損傷し、時には死に至らしめるほどの反応を示すこともあります。なぜそれだけ強力かと言えば、それが最終防衛ラインだからです。病原体に突破されたら人体は確実に死ぬ以上、たとえ被害が出ようとも病原体を駆逐することが獲得免疫の仕事です。
軍隊も同様、それが突破されたら国家として存亡の危機に陥ることが分かっているからこそ自己を加害できるほどに強力な力を保有しています。
軍事は国家の生き死にを左右していると見なされるそのような理屈があるため、一般論として軍事には国家の最先端の技術や研究が注ぎ込まれます。その帰結として技術の発展も最先端となりますので、「戦争は科学技術を発展させる」は真となります。
今のご時世を見晴るかせば
ただ、それは軍事が国家予算の半分以上を占めていたような大戦期の理屈でもあります。
確かに軍事には国家が持つ最先端の技術や研究が注ぎ込まれますが、それでも現代のほとんどの軍隊はGDP比数%程度の予算しか持っておらず、最先端の一つではありますが最大規模ではありません。最先端の技術や研究は他の分野でも用いられており、むしろ平時では民生分野のほうがよほど大きな規模を持っています。
それが最も分かりやすく表れているのがスピンオンでしょう。
かつては最先端を独占する規模と予算を持っていた軍事だったからこそスピンオフ、すなわち軍事技術を民間に移転することが一般的でした。現在では最先端の技術や研究を独占するほどの規模も予算も軍事は持っていないため、民間技術を軍事技術に移転するスピンオンが盛んになっていますし軍民どちらでも使えるデュアルユース技術の開発も発展しています。
ドローン・ロボット・繊維などの民間技術が軍事に転用されているニュースは昨今度々見かけることでしょう。これらは「戦争は科学技術を発展させる」が必ずしも真ではないことを証明する分かりやすい反証です。
もっと率直に言えば、国家間の戦争とは経済で殴り合うものです。直接的に砲火を交わし合うにせよ間接的に市場で殴り合うにせよ経済が勝利の鍵を握ります。
そのような概念を理解していれば簡単な話として、軍事だけを目的とした技術開発は圧倒的に経済性の無い不合理な選択に他なりません。もちろんそういった研究や技術がまったく不要なわけではないものの、規模の大きい民生技術を発展させてそこから転用するなり、軍民双方で使えるデュアルユースで開発するなりをできる限り優先することが経済的に合理的な選択です。
よって経済概念が発展し予算分配の変わった現代では、下手をすれば「戦争が無いほうがよほど科学技術が発展する」ような時代に変わりつつあります。
結言
以上より、「戦争は科学技術を発展させる」は真でもあり偽でもあると考えます。そうであるときもあればそうでないときもあり、それは状況に依存するものです。
個人的には「戦争は科学技術を発展させる」が偽となる状況、すなわち軍事にお金を集中しなくてもよい時代のほうが好みです。
そんな雑談でした。