2050年カーボンニュートラルに向けて再生可能エネルギーや自然エネルギーをどう増やしていくかが議論になっています。2030年までに再エネ比率を40%にするといった内容です。
世の中の時流と反していて恐縮ですが、少し落ち着いて考えたほうがいいんじゃないかと思うため慎重論を残しておきます。
もちろん化石燃料に頼り切った文明はいずれ崩壊しますので方向性自体は間違いないと思います。しかしドラスティックな変更は思わぬ落とし穴にハマりかねません。
主な自然エネルギー
自然エネルギーにも様々ありますが、主に検討されているのは次の5つです。
- 太陽光
- 風力
- 水力
- 地熱
- バイオマス
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/040/040_005.pdf
このうち地熱以外は太陽光エネルギーが変化したものです。風は太陽光によって温められた大気の気圧差によって生じますし、水力も太陽光エネルギーによって水が蒸発して起こる水循環によるものです。バイオマスは様々な種類がありますが、植物などを代表に生体物質由来であることから、広義で太陽光エネルギーが転じたものと言えます。
自然エネルギーは自然に優しい?
これら自然エネルギーが地球や生態系にやさしいかどうかは実のところ熟慮と検証が必要です。太陽光パネルを敷くために山林が伐採されるとか風力発電機が鳥を殺してしまうとかの具体的な意味では無く、自然エネルギーは化石燃料とは異なりより直接的に自然からエネルギーを奪うというリスクに対する熟慮と検証という意味です。
当然ですが自然は自然エネルギーを糧にしています。食物連鎖のスタートである植物の生育には太陽光エネルギーが必須です。フローンの気候区分に代表されるように風は気候や熱の移動に大きな影響をもたらしています。木々の成長には風が欠かせませんし、水循環が弱まれば河川が維持できる生物量が減ってしまいます。バイオマスのための農地拡大はより直接的な自然破壊です。
予防原則に関する記事でも述べていますが、あるリスクに対策を打つとき、その対策自体にはどの程度のリスクがあるかを充分に検証しなければいけません。対策のリスクのほうが大きいようなことになっては本末転倒です。
もちろん太陽光エネルギーは膨大であり人類が使っているエネルギーよりも桁違いに多くのエネルギーが地球に届いています。よってそこからエネルギーを取り出しても直ちに自然や生態系へのダメージは現れないでしょう。
しかし気を付けなければいけないのはその規模と、長い目で見たリスクです。
木炭や石炭による大気汚染、フロンによるオゾン層の破壊、灌漑による地下帯水層の枯渇、放牧による砂漠化、といったように
「実は環境に悪かった」
「たくさん増やしたら大変なことになった」
というのは枚挙に暇がありません。
歴史を繰り返さないためにも、少しずつ慎重に変えていくことを願います。