忘れん坊の外部記憶域

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日本人は日本人論が好き~帰属意識と恥の文化

 日本人は日本人論が好きだと巷では言われます。比較文化学(Comparative Cultural Studies)のような学問がある以上、他所の文化や考え方、自国や自民族がどう見られているかといったことに興味を持つのは日本人に限らずどこの人であっても変わらないものではありますが、”日本人は日本人論が好きだと日本人が思っている”というのは通説といってよさそうです。

 個人的にはあまり「日本人は○○だから」というような論調は好みではありませんが、今回はあえて日本人論を用いてみます。

 日本人論には時代性があります。日本を称賛するような論が増える時期と、卑下するような論が増える時期です。基本的には景気によって定まり、景気が悪く皆が自信を失っている時は称賛が読者・視聴者を集め、景気が良い時期はその反対になるようです。もう10年以上テレビを見ていないので動向を把握しかねていますが、昨今は日本称賛番組が多いと聞いています。リーマンショックの影響が後を引いているのでしょうか。

日本人の自国への帰属意識

 少し古い調査データですが、2013年のISSP国際比較調査では日本人の自国への愛着が強いことが分かっています。

 調査結果より、「他のどんな国の国民であるより、この国の国民でいたい」という質問にそう思う(どちらかといえばを含む)と答えた人は9割近くにのぼり、31国中3番目に高い割合でした。また「一般的に言って、他の多くの国々よりこの国は良い国だ」という質問でもそう思う人は9割近くにのぼり、31国中1番目に高い割合です。この調査結果から分かることは単純で、日本人には日本が好きな人が多いということでしょう。

 一応の補足として、同調査における定住外国人への排他度合い(仕事を奪っていると思うか、文化を損なっているか、同等の権利を持つべきか、減ったほうがいいと思うか)において日本はほぼ排他的であるという結果になっています。定住外国人の人口比が低いことも大きな要因ではありますが、決して極端なナショナリズム・自民族中心主義に染まっているわけではないということです。

日本人と恥の文化

 私個人としては日本を称賛する番組は良いじゃないかと思っています。日本人が頑張っていたり褒められれば嬉しいですし、日本人が他国で迷惑をかけたり悪いことをすれば恥ずかしく感じるのは自国への愛着が強い日本人として自然なことだと思います。

 ただ残念ながら日本人が称賛されることを好まない人もいます。もう少し具体的に見ると、日本人を称賛する番組やニュースを見て喜ぶ日本人が嫌いということのようです。確かに謙虚さの無い極端な自画自賛には賛否があるでしょうし、他所を貶めて日本を持ち上げるような称賛の仕方であれば非難されて然るべきでしょう。

 しかしながら、日本人の個人が称賛された際の「あの個人が凄いのであって、日本人である貴方が同様に凄いわけではない」という指摘には反論があります。

 帰属意識の強い日本人にとって同じ日本人は身内のようなものです。またルース・ベネディクトが「菊と刀」で書いたように日本人は恥の文化を持っています。そのため同胞が偉業を成せば「私たちも同胞に恥をかかせないように努力しよう」と思い、同胞が悪行を働けば「私たちはあのような恥をかくことをしてはいけない」と戒める。自らと身内に恥をかかせないために努力することが考え方の軸であり、決して「あの人は凄い、だから同じ日本人である私たちも凄い」と考えているわけではありません。そのような考え方は恥の概念を持っていない、読んで字の如くの恥知らずと言えます。

最後に

 先に述べたように、私は日本人をまとめて一つの属性として十把一絡げに取り扱う事はあまり好みではありません。人それぞれ考え方は違いますし、そうあるべきだと思うからです。ただ国民性の違いを笑いとするエスニックジョークがあるように国家・文化による一定の差異・特徴は当然あります。恥の文化も日本の貴重な伝統ですので、恥知らずとならぬよう大切にしていきたいものです。

余談

 日本独自の文化であると思っていても案外と世界共通であったりすることもあります。同調圧力などは分かりやすく、日本人は同調圧力が強いと言われていますがアメリカの研究結果では特に日米で差は無いという結論になっています。