忘れん坊の外部記憶域

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三菱電機の業務用空調の検査不備問題に対する見解

 過去に三菱電機の不正検査問題を主として企業の不祥事に関する記事を書きました。

 8月2日、再び三菱電機による検査問題が報道されました。日本経済新聞が最も早く報道したと思われます。

過去の検査不正とはまったく別物

 今回の報道内容を見るに、最近報道された鉄道ブレーキ用の空気圧縮機や鉄道用空調機器の検査不正と今回の内容はまったくの別物です。

 過去に報道された不祥事は品質問題ではなく検査不正です。やらなければいけない検査を省略していたり、嘘のデータを用いていたといったような信義に悖る行いであり非難に値するものではありますが、ものづくりの技術力低下という話ではなく企業体質の問題でした。

 今回は「絶縁抵抗試験」と「耐電圧試験」を行う検査装置の一部で内部断線が起きており、適切に検査が行えていなかったという内容です。これは不正ではなく明確に品質問題です。申し訳無いですがこれは技術力の低下と言わざるを得ません。

検査の内容と目的

 絶縁抵抗試験と耐電圧試験は電気製品であれば一般的、常識的と言える検査です。

 絶縁抵抗試験は電子回路や電子部品において電気が流れるところ(電路)同士やアースとの間で絶縁が保たれているかを確認する試験です。材料の不良や劣化、不適切な組立などによって絶縁抵抗が適切に保たれていないと電気が漏電してしまい、故障や感電事故、火災の原因になります。絶縁抵抗を測定することは保安上の基本です。

 耐電圧試験は過大な電圧が印加された場合でも機器が絶縁破壊しないことを確認する試験です。これも検査しなければ漏電リスクを内在したまま製品が出荷されてしまいます。

 絶縁低下や絶縁破壊は大変珍しい不良であり、両検査ともまずNG判定されるものは出ません。しかしNG品が出ないからといって検査が不要というわけではありません。NG品が市場に流出した場合は人命にも関わる多大な被害を招きかねないからこそ、できる限り全数検査、最悪でもロット抜取検査をするような検査です。それが装置の故障によって出来ていなかったというのは俄かに信じがたい報道内容です。

 さらに言えば記事の中ほどにある文章について、

同社は「別途、通電による動作確認を全数で行っており、安全性は確保できていると考えている」

 本当に同社の方が言ったのか疑問符が付きます。検査内容を理解している人間であればまず安全性が確保できているなんてことは言いません。通電による動作確認は製品が想定通りに動くかどうかを確認する検査であり、絶縁抵抗や耐電圧のような安全性を確認する試験とはまったく別物だからです。通電動作確認で安全性が確保できるのであれば絶縁抵抗試験や耐電圧試験なんか不要です。担保できないからこそ別途試験をしているのです。

なぜ検査装置の不備に気付けなかった?

 連続値/アナログ値で結果が出力されるような検査であれば検査員が常に見ているため異常の検出は容易です。例えばタコメータであれば2000rpmを入力した際に2000rpmと表示されれば合格、5000rpmと出力されればNGと判定するからです。異常値が出れば検査員が見ていますので製品か装置のどちらかが異常だとすぐに分かります。後は入出力装置を定期的に点検・校正すれば問題はありません。

 問題なのは離散値/デジタル値で出力されるような検査です。つまり合格か不合格かの二択で結果が出るものです。今回の絶縁抵抗試験の場合は所定の抵抗値以下であればブザーが鳴ってNG判定するような検査装置でしょう。耐電圧の検査装置も同様で、漏電があればNG判定するような装置のはずです。この場合、ブザーが鳴らないというのが製品が良品だからなのか装置が壊れているからなのかがすぐには分かりません。

 よってこの手の装置は「良品判定するダミー」と「不良品判定するダミー」を用意しておき、始業時にダミーを使って検査装置が正常な判定をしてくれるかを点検するのが基本です。今回のような検査不備が起きたということはこのような始業時点検を行っていなかったか、ダミーが壊れていたかのどちらかでしょう。いずれにしてもこれでは検査の意味がありません。

結論

 今回の報道内容は「また不祥事か」で済む話ではありません。「検査をズルした」ことと「検査しているつもりができていなかった」はまったく次元が異なります。どちらも不祥事であり問題ではありますが、前者は企業体質の問題であり、後者は品質管理の技術力の問題です。

 私は製造業にいる人間として日本のものづくりは今でも世界で充分に通用するレベルだと主張していますが、残念ながら今回のような検査不備は論外であり擁護のしようがありません。