忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

島津さんちの不適切行為に関する私見

 2022年8月下旬、島津製作所の子会社において、医療用装置へタイマーを仕掛けて一定期間経過後に意図的な停止を引き起こし、故障を装って有償メンテナンスを行っていた疑惑が報道されました。

 その件に対して島津製作所が調査を行った結果、保守点検業務に関する不適切行為に関して事実であるとのプレスリリースが9月30日に発信されました。

www.shimadzu.co.jp

 まだ外部委員会の調査報告が出ていないため不適切行為に至った原因や対策については不明ですが、少なくとも不適切行為を行ったという事実は確定となります。

 

騒ぐべきは今では?

 不適切行為に関する話の前に、メディアや世論の反応に関して意見を述べます。

 本件は中日新聞(東京新聞)と熊本の放送局が積極的に取り上げていますが、その他のメディアではあまり大きく取り上げられていません。

www.tokyo-np.co.jp

www.tokyo-np.co.jp

 8月下旬の特ダネ報道時にはいくつかのメディアで取り上げられたりTwitterでトレンド入りしたりと話題になりましたが、9月末日のプレスリリースはほとんど取り上げられていませんしTwitterのトレンドにもなっていません。

 はてなブックマークの数も、8月の第一報の記事では1000ブックマーク以上に対して不適切行為の事実が確定した9月の記事では10ブックマーク以下と、人々の興味関心の差が顕著に表れています。

 これはメディアや集団の特性上仕方がないことではありますが、個人的な好みとしては疑惑よりも事実の段階で騒ぐべきだと思う次第です

 

 もちろん犯罪等の事件や事故そのものは速報で取り上げるべき内容です。

 しかし容疑者や疑惑の対象に対して騒ぎ立てるのは違うと考えています。容疑はまだ疑惑の段階であり、本当にそのような事実があったかどうかは推定でしかないのですから。

 集団心理や盛り上がりを考えるとこのような事象はやむを得ないことは重々承知しているのですが、疑惑の段階ではまず判断を保留し、その人や組織が実際に悪事を行ったことが確定した段階で騒ぐほうが適切だと考えています。

 速報が誤報である可能性や冤罪の可能性がある以上、疑惑の段階で騒ぐのは勇み足による不要な社会的制裁への加担に繋がりかねませんので注意が必要です。

 

本件不適切行為はよそと比べると・・・

 それはさておき、今回発覚した不適切行為についてです。

 昨今世間様を騒がせた各社の不正行為と比較すると、規模は遥かに小さいですが悪質度合いで言えば群を抜いているような気がするのですが、なぜあまり報道されないのか不思議です。そんじょそこらの小さな企業がやった不祥事というわけでもないのに。

 確かに知名度で言えばそこまでではないかもしれませんが、島津製作所は2002年にノーベル賞受賞者を輩出したほどの立派な企業であり、そこそこの年齢の方であれば一度は名を聞いたことがあるような有名企業ではないでしょうか。

 

 なにより、昨今世間を騒がせた製造業での不祥事の多くは、品質検査の不正、約束の不履行、技術力不足による市場トラブルといったものが主流です。利益や納期といった圧力に押し負けて検査・評価を省き手抜いたり誤魔化したりしたものであり、それらは顧客へ意図的に損害を与えようと企図したものではなく、内々の都合と論理によるものです。

 

 もちろん社会に迷惑を掛けているわけで充分に問題であり社会的批判を受けるのは当然の報いと言えますが、これらはウチの都合や論理によって動いたことが結果的に世間へ迷惑を掛けたという受動的な事象と言えます。

 それらに比べて本件は、顧客の装置を意図的に停止させ、故障を装ってメンテナンス費用を掠め取るという、顧客へ損失を与えることを承知の上で行ったという点で極めて能動的かつ悪質な事例です。

 本件は他所の不適切行為と比較して過失犯故意犯くらいの差異があるように感じます。犯罪行為の刑罰が故意の有無によって峻別されるように、他所のメーカーの不祥事よりも悪質性が高いことから本件はもっと大規模に報道されてもよいのではないかと思う次第です。

 

 

余談

 外部調査委員会の報告を待とうかと思っていましたが、プレスリリースから1週間、思ったよりも話題になっていないなと思って取り上げました。