忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

海外の芝生は青い?

 「海外では○○○○○、だから日本は遅れている/ダメだ」という文章は一種のテンプレとして構文化していると考えます。このテンプレを用いる人のことを海外出羽守と揶揄するようなこともありますが、実際のところはどうなのか考えてみましょう。

情報の流通は少ない

 日本は島国であり、さらには主要な欧米の先進国とは距離が離れています。そのため人の移動による交流は他国と比べて明確に少ないです。如何に情報化社会でインターネット上に情報が溢れているとは言えどもその情報をアップロードしているのはそこに居る人々です。そのような人々の生の一次情報・二次情報に触れる機会が少ないことは間違いありません。

 また日本語はマイナー言語のように思えますが母語人口としては約1.2億人、言語の中では上位10位に入ります。当然英語や中国語に比べれば少ないですし話者もほぼ日本国内のみではありますが、1億人以上が使うことのできる言語ということで決して規模の小さなものではありません。近隣諸国との陸伝いの国境が無いこともあり、日本で暮らす限りは日本語だけで何の支障も無く生活することができます。

 それは反面、他国語を学ぶディスインセンティブになっているとも言えます。「日本語だけで十分じゃないか」となるのは致し方ないことです。しかし言葉が分からなければ翻訳された限定的な情報しか入手することができません。翻訳は完璧なものではなくニュアンスや文化的背景を伝達し切ることが難しいことから、元の情報からは相当な情報量が削られてしまいます。

 さらに言えばメディアも商売のため基本的には売れる情報しか流しません。主要な国家の情報はそこそこの値段がつくので特派員を置いて情報を集めますが、ニウエやトケラウのように小さい国家のあまり需要が無い情報をメディアは報道しないのです。また政情が不安定で危険な地域の情報も同様に入手が困難ですし、そもそもスポンサーの意向に沿わない情報が報道されることはありません。私たちがメディアから入手する情報は配信段階ですでに選別されているということです。

 よって日本に居て日本語で得られる海外の情報というのは相当に少ないと考えてよいでしょう。

認知バイアス

 翻訳されて日本へ輸出されてくるコンテンツには認知バイアスが働きます。当然のことではありますが、粗悪で商売にならないものを輸出する企業はありません。これは日本でも売れる品質があるというものだけが輸出されます。特に顕著なものはドラマや映画でしょうか。海外で売れた高品質なものだけが日本に輸出されてくるため、まるで全体の質が優れているように勘違いする認知バイアスが働いてしまうことになります。

 これは情報も同じです。当然の宣伝戦略として自国に有利となる良い情報は他国へ積極的に流しますし、自国が不利となる情報は他国から隠すのが常道です。日本に居ると欧米の悪い情報よりも中韓の悪い情報のほうが触れる機会が多いと思いますが、だからといって中韓が欧米に劣っているかと言えばそれは認知バイアスであり、ただ単純に文化・地理的な距離が近く情報流通量が多いために情報が隠し切れていないことが理由です。そして当然自国の情報というのは良いものも悪いものも一番目に付くこととなります。日本の悪いところは日本に居る人が1番詳しいというわけです。

 別にこれは欧米に比べて実は日中韓が優れているとかそういう意味ではなく、認知バイアスには気をつけましょうというだけの話です。どこの国が優れているかは主観的な話であり切り取り方によってどうとでもなりますので、単一基準で比較してもあまり意味は無いと考えます。

 もちろん他国や自国に対する好き嫌いは誰だって持っています。ただその前提となっている情報にどの程度認知バイアスが働いているかは少し留意したほうがいいかもしれません。隣の芝生は青く見えるものですので。

急な書籍紹介

 近藤浩一さんの著書「スウェーデン 福祉大国の深層」を読ませていただきました。大変に参考となる書籍だったため少し紹介させていただきます。

kon-51.hatenablog.com

 日本に居るとあまり情報が流れてこない北欧のスウェーデンについて、近藤さんの経験や欧州メディアの情報を駆使して様々なテーマで語られています。決してスウェーデンの良いところだけを吹聴するのでもなく、かといって問題点を論うわけでもなく、優れていることと問題点の双方が認知バイアスに陥っていないフラットな視点で併記されており、大変に読み心地の良い本でした。本書で語られている内容について私は半分以上知らず、特にヴァレンベリ家と金融や軍需企業、ノーベル賞との関係はとても勉強になりました。

 多くの日本人にとって「よく知らないけれども良い国」である未知の国スウェーデンについてもう少し知ってみたい方や、物事のフラットな見方を学びたい方にはお薦めしたい良書です。

 

 本は色々読むのですが読書感想文的なものが苦手なタイプなのでちゃんと魅力が伝えられていない気がします、残念です。私はこのような「情報が多く」「バイアスが少ない」書籍やメディアが好きなんです。ああ、でも、がっつりバイアスが掛かっていて作者の思想駄々漏れな書籍もむしろ好き・・・

最後に

 本記事の冒頭に書いた海外出羽守のように揶揄されてしまう方は他国に恋をされている方だと考えています。人の良いところを見て自分の悪いところを極端に卑下してしまったり、好きな人の悪いところが目に入らなくなるような状態です。恋は盲目なので仕方が無い所はありますが、海外出羽守のような揶揄を避けるには伝え方に気を付けて、バイアスを意識するのが良いと思います。

 近藤さんの書籍はスウェーデンの美点と欠点の両方を直視されており、ああ、スウェーデンが本当に好きだからこんなに詳しいんだな、恋ではなく愛しているんだなと感じました。表現が正しいか自信は無いですが・・・