忘れん坊の外部記憶域

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若者の投票率が低いことは悪い、とは言い切れない

 第49回衆議院議員総選挙の投票日が近付いており、各所で選挙について語られています。日本の投票率はIDEAの調査によると196か国中158位であり諸外国に比べて元々低いのですが、特に話題となるのは若者の投票率の低さです。

 若者の投票率が話題となる理由は人によって様々でしょうが、候補者にとって若者に働きかけるのが合理的だというのが理由の一つでしょう。強固な支持母体を持たない候補者からすれば、特定の支持対象を持っている団体や元々投票行動に行く層に働きかけて考えを変えさせるよりも、棄権によって捨てられている票を拾いに行く方が簡単です。捨てるくらいならそれをくれよ!というのは極当然の考えだと思います。だからこそ与党はそこまで若者に寄った政策を打ち出すことがなく、新たな票田が必要な野党が若者へ積極的に働きかける構図になるのです。

若者の投票率に関して

 実際のところ若者の投票率というのは元々低く今に限った話ではありません。勝手に紹介させてもらって申し訳ないですが、若者の投票率について分かりやすくまとめている記事を紹介します。

sigablog.com

 若者の投票率は低下傾向にあるものの、元々低いというのがデータから分かります。

 そもそも若者は働き盛りで忙しく、平日は散々働いているので休日は遊んだりゆっくり休みたいという気持ちがあることから元々投票に行くインセンティブが低い層です。さらに言えば投票というのは大変に労力を要する行動です。多数の候補者や政党の意見を比べてどれが最も良さそうかを調べるだけでもかなりの時間が必要になります。忙しい若者がそのような時間を作るのはなかなかに難しいのが実情でしょう。

 また韓国で近年投票率が高まっていることが良い事例ですが、投票率が高くなるのは政治的・経済的な危機感が高まっている時となります。このままではマズいという危機感こそが投票行動への最大のインセンティブになるわけです。日本でも平成21年の投票率は例外的に高かったのですが、これは政権交代が必要だと危機感を感じる国民が多数派であったためだと考えられます。

 少しややこしいのは、インセンティブを高めるのは危機ではなく危機感、つまり世論の空気感です。大災害や不景気による失業率の増加など具体的な危機が訪れている場合は目先の生活が最優先になりますので、投票している暇なんかあるかとばかりに投票率が下がることとなります。

若者の投票率が低いことは悪くは無いと思う

 個人的には持ってる権利を行使しないなんて勿体ない的な貧乏性のため選挙権を手に入れて以降は出来る限り投票行動を取ってきた人間ではありますが、若者が投票しないことは一概に悪いこととも思えないです。

 何せ今の若者は政治に危機を感じていない、つまり政治にかかずらうことなく自らの人生へ注力出来ていることに他ならないからです。若者が自らの人生を好きに歩めず政治活動に注力せざるを得ない社会は決して豊かだとは思えません。年長者、特にご高齢の方々は若者の投票率が低いことを責めたり嘆いたりするのではなく、若者がそれだけ自分の人生に集中できる良い国を作り上げてきたことを誇るべきではないかと考えます。若者が政治に興味を持たず投票行動をしなくても安穏と生活ができる国というのは世界でも稀でありとても素晴らしいことだと思うのですが、いかがでしょうか。

温度差はどうにも・・・

 とはいえ、前述したように投票へのインセンティブになるのは危機ではなく危機感です。難しいのはこの危機感というもので、データや数値によるものではなく感覚や空気によるもののため人によって明確に温度差が出てしまいます。今危機が迫っていると認知している人からすれば棄権をする若者はのほほんと安寧に浸る茹でガエルに見えてしまうのは仕方がないです。

 こればかりは空気感という曖昧なもののためどうにも埋めがたい温度差です。敏感肌な人と鈍感肌?な人がスキンケアの話で分かり合えないように、今の現状を危機と感じるかどうかは人それぞれなのです。ドラスティックに改革をする必要があるか、堅実に修正を加えていくか、現状を維持するか。民主主義の本義に従い、私たちは熱交換をするための議論を尽くし、分かり合う努力をしなければいけないでしょう。