忘れん坊の外部記憶域

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何事も偏食は良くない〜情報源の多様化

 好きなものを好きなだけ食べることは一時の幸せを噛み締めることができますが、それが長く続けば栄養のバランスを崩し健康を損なうことになります。心身の健康を保つためには偏食を避けてバランスの取れた食事を取ることが望ましいことは栄養学の知見を引用するまでもなく論を俟たないでしょう。

情報の偏食

 栄養の摂取における偏食の弊害は明々白々ですが、同様に気を付けなければいけないのは情報の摂取です。人にもよりますが食事は日に数回であるのに対して情報の摂取は食事よりも高い頻度で行われます。特にアンテナの高い人、つまりニュースを見たり書籍から学んだりというような機会を多く取ろうとする人は相当に気を付けないと偏食に陥りかねません。

 情報をどう得るか、得た情報をどう処理してどう取り扱うかという類は語られることが多いですが、そもそもの前提として得た情報が偏ってはいないかということにも気を使わなければいけません。毎日ジャガイモを食べている人はそれをどう調理しようと絶対に栄養が偏るように、情報もどう取り込むかだけでなく取る情報源を変えてバランス良くすることが望ましいです。たまにはサラダや魚を食べないといけません。

情報のバランスとは

 この世には完璧な情報源というものはありません。どのような情報源であろうと必ず記録者のバイアスが働きます。過去にも同様の記事を書いていますが、一次情報ですら認知バイアスが働くものです。

 過去の記事では一般的な事例で語りましたが、今回は昨今の国際ニュースを騒がせているウクライナとロシアの軍事的緊張を例としてもう少し具体的に考えてみましょう。遠い国の話に思えるかもしれませんが、ロシアは日本の隣国でありその隣国が戦争するかどうかという状況ですので、実は日本にとって相当に身近な話です。

 ウクライナはロシア・ヨーロッパ・アジアの間にある東ヨーロッパの国です。地政学的に重要な立地にあり、肥沃な平原や草原が国土のほとんどを占めていることから、古代からスキタイ人やフン族、モンゴル帝国など遊牧民族の根拠地となることが多くありました。

 ウクライナがある地域は大国の狭間にある地域の常として大国からの圧迫や侵攻を受けることが多く、特に肥沃な土地から生み出される農産物や豊富な天然資源、そして黒海沿岸部の港を求めるロシアからの圧迫外交を多大に受け続けている国です。よって基本的にはロシアとウクライナはあまり仲が良くありません。

 しかし隣国の大国と常に不仲でいることは軍事衝突の危険を高めることから、ある程度の緩和時期も必要です。日本が中国とアメリカの2大国に挟まれながら双方と決定的な軋轢を生じないようにしているのと同様に、ウクライナはヨーロッパとロシアの2大勢力に挟まれてのバランス外交を行ってきました。一時期はソビエト連邦としてロシアと共闘していた時期もあります。そのバランスが崩れて暴発したのが2014年のウクライナ騒乱とクリミア危機です。

 現在ロシアはクリミア半島だけでは飽き足らずその軍事的野心を果たすために国境沿いへ軍事力の集中と軍備強化を図っています。国境沿いのコンタクトラインでは何年も前から戦闘が継続しており、地域の治安と安全を脅かしている状況です。日本の外務省も国境沿いの地域は危険レベル3(渡航中止勧告)を出しています。

 と、ここまでが日本を含む西側視点のバイアスが掛かった情報です。ロシアからすればウクライナとベラルーシは西側諸国、NATO加盟国との衝突を避けるためにバッファゾーン(緩衝地帯)としておきたい地域です。元々ロシアを締め出すために作られたNATOがここ20~30年で明らかに東方へ拡大していることも含めて、NATOがウクライナへ武器供与を行って支援していることは経済的にも軍事的にも欧米がロシアを外周から包囲して攻撃しているようなものです。

 つまるところロシアからすれば西側諸国がウクライナを支援すること自体がロシアの喉元に刃物を押し当てるが如き行為だと捉えており、緩衝地帯を先に削ってきたのは西側諸国だというロシアの言い分にはなんとも一理があるのです。

 極論を言ってしまえば、欧米の言い分はいじめっ子とまったく同じです。囲んで追い詰めておいて殴り返してきたら騒ぎ立てる、それはどうにも卑劣に思えます。もちろんロシアの行動に賛同するわけではまったくありません。いかなる理由があれ軍事的手段による現状変更は認めるべきではないでしょう。しかし欧米の対露外交が失敗であったことも事実です。

 同じ事実に対してでも欧米はロシアの暴挙だと語り、ロシアは欧米の先制攻撃だと語る。どちらにより理があるかはそれぞれの立場があるので確定することはできませんが、少なくとも双方の言い分は聞く必要があります。

結論:両論併記が望ましい

 結局いつもの結論に辿り着くのですが、物事を把握するためには様々な情報源から情報を入手し、見比べて判断する必要があります。ジャーナリズムにはそれが容易にできるよう両論併記を期待するものです。

 あと私の意見は別に重要ではないですが、個人的には親西側なのでウクライナを応援したいです。やっぱり軍事力による現状変更は理由を問わず好みではありませんので。

 

余談

 欧米は軍事的衝突を回避するためにウクライナを差し出すのか、戦争止む無しと強硬に出るのか。預言者では無いので分かりかねますが個人的には欧米が引くのではないかと想像しています。中小国であるウクライナを犠牲に捧げて平和を買うでしょう。それが善い事かはさておき。むしろまったく善い事だとは思わないですけども。

 欧米はロシアを非難するくらいならそもそも最初からウクライナに手を出すべきでは無かったと思います、何事も中途半端はダメです。