選挙期間中は、こう、ネットの政治系クラスタが大荒れしているので触れたくありませんでしたが、選挙が終わったので少し沖縄の話でもしてみましょう。
といっても、申し訳ありませんが美味しい食べ物や綺麗な自然の話ではなく、あまり面白くない政治的な話をします。
見過ぎでは?
Twitter等で政治系の発信をしている著名人が様々意見を述べており否応なく沖縄の選挙情報がトレンドに上がって流れてくるのですが、そもそも与党系野党系だとか日米中の国際関係みたいな党派性に基づいた論で沖縄の選挙を語る必要はあるのだろうかと疑問に思っています。
だって地方自治体の選挙ですよ?
日本は地方自治の精神と法律に基づいて都道府県知事に大きな権限を持たせていますが、首長に外交権限があるわけでもなし、国際関係において実際に出来ることと言えば都市レベルでの友好や自国政府へのお願い、首長の権限範囲内での行動や拒否くらいであって、事態を大きく動かせるような絶対的権力者というわけではありません。
基地賛成派が首長をやっていた時に補助金がドンと増えて県民収入が東京並みになったわけでもなければ、基地反対派が首長をやっていた時に基地が無くなったわけでもありません。
選挙で選ばれる首長は現時点で県民の意思がどこを向いているかを代表するものであって、それを外野からああだこうだ言うのはあまり良くないことではないかと考えるわけです。それこそ地方自治の精神に基づいて沖縄県民が決めることだと思います。
そりゃあ自治体の選挙と言っても東京に皆が注目する理由は分かります。人口が多いですし、動かす予算は小国の国家予算以上ですので、それこそ東京都知事選は中小国の大統領選挙をやっているようなものです。
でも沖縄はそうではないわけで。
鳥取や香川の知事選情報がネット上で大きく盛り上がった記憶はありませんが、沖縄もそうあっていいのではないかと思う次第です。
(こんな記事を書いている時点で矛盾していますが・・・)
米軍基地とNIMBY
基地問題に関してはどちらかというと保守寄りの考えを私は持っています。地理的・政治的に米軍基地は沖縄に有って欲しい、また米軍やその家族4万人以上を養うには都市インフラが不可欠であり、そのためには申し訳ないが多少なりとも人口が居る地域に配置するしかない、そう考えています。
そして米軍基地は明確にNIMBY問題に該当するため、当然ながらその配慮が不可欠です。
NIMBYとは「not in my backyard」、つまり「うちの裏庭にはいらん」という意味の略語です。発電所や刑務所、ゴミ処理施設や火葬場など「有用性は分かるし必要なことも分かるが、うちの居住地域には建設しないで欲しい」という地域住民やその態度を総称する略語です。
NIMBY問題を解消するには補助金等の援助策を持ってお願いする他ありません。NIMBY施設による雇用創出等の利得があるとしても、それは一部であり、大多数の住民からすればそんな施設はNIMBYなのですから。
これはお金で黙らせるという意味ではなく、むしろそのような態度はより強固な反発を招くだけです。形で示せる誠意がお金というだけであって、同時に態度で示すのは当然為すべき配慮です。
今回も基地反対派が沖縄の首長になったということは、今時点の配慮の量では不足しているという民意だと考えます。そうであれば、唯唯諾諾とまでは言わないまでも従来よりも補助金の額なり税の優遇なりを増やし誠心誠意お願いすることを中央政府は考える必要があると考えます。
「今回も中央政府に従わない奴が首長になりやがったから補助金を減らしてやろう」なんて方向性は論外以外の何物でもありませんので、そうならないことを期待するばかりです。
また、NIMBY施設による利害関係や補助金の分配問題、つまり利権の調整はそれこそ地方自治体内で処理すべき課題であり中央政府がいちいち関与すべきではありませんので、それは沖縄の自治に任せるべきかと思います。
沖縄と中国の接近を望まないのであれば
今回も前回も前々回もずっとそうでしたが、沖縄の選挙時に政治クラスタで話題となるのが基地問題と並んで中国との接近です。
保守系の人はこれをとても問題視しているようですが、いまいち同意しかねます。
県知事の仕事は外交でも個人の政治的信念を貫き通すことでもなく、県民の生活を守ること、もっと言えば県民がちゃんと飯を食えるようにするのが県知事の仕事です。
ただでさえ地理的な問題から第二次産業が育ちにくく、不安定になりがちな第三次産業に依存しているのが沖縄であり、本土だろうがアメリカだろうが中国だろうが、飯の種になるのであれば手を伸ばして働きかけるのは県知事として当然のことでしょう。やっていることはフィリピンのドゥテルテ大統領と同じです。
つまり保守系の人がすべきことは、中国に寄っていく人を「売国奴」と罵るようなことではなく、中国に寄らなくてもいいような産業誘致なりさらなる税制優遇なりをするよう中央政府に働きかけることではないでしょうか。
(沖縄振興特別措置法に基づいた特区の制度はあるが、個人的には地方税減免ではなく国税減免をもっとすべきかと思う。地方税減免では地域にお金が落ちないので)
そういったことをせずに飯の種を求める人をただ叩くような言説は、大変露悪的な表現ではありますが「お前らは貧乏なままでいろ」と言っているのと同義で、それはとても残酷なことだと私は思います。
日本は島国なので感覚的に分かり難いことですが、沖縄は国境の地域です。そして国境の地域では隣国からの懐柔策が蔓延るのは当然のことです。それは世界中どこを見ても普遍的に行われていますし、最近であればロシアとウクライナの国境沿いの地域でウクライナの一部地域がロシア側に靡いていたことからも分かることでしょう。
「売国奴」や「裏切者」のような言葉で沖縄を攻め立てるような言説を弄するのは得策ではない、どころか隣国の懐柔策を手助けしているようなものです。中国の接近を懸念するのであれば、隣国に靡くよりも本国側についたほうがお得であることを中央政府が態度と実際の政策で示す他ありません。
余談
相変わらず私は保守からも革新からも嫌われるようなことを考えるなぁ・・・
ただ、政治信条や信念よりも先に「普通の人が安心してご飯を食べられる」環境構築を重視すべきかなと。それがちゃんと出来て初めて政治云々の話が進むのであり、政治信条だけで飯が食えるのはひと握りの人だけなのですから。