忘れん坊の外部記憶域

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コミュニティ区分の不存在:なぜ政治経済の話題は揉めやすいのか

 思想信条の自由がある社会においては誰もが違う考えを持っているのが普通です。それが個人的な範囲のものであれば「私はこう考えます」で終わりですが、人は時に政治経済などでの問題の解決、もしくは心情的な問題の解決を目的として自身の意見への共感や賛同を求める必要に迫られることもあります。

 元々近似した意見を持っている人からの共感や賛同を得るのは容易ですが、異論を持つ人の意見を変えて共感や賛同を得るのは難しいものです。

 

共感や賛同をどう手に入れるか

 心情的な共感や賛同を得たい場合、そもそも他者の意見を変える必要はありません。むしろ異論を持った人からは離れて意見の近似した集団と接することが望ましいです。同じ意見の人々が集まることで共感や賛同を得ることができ、グループセラピーのような不安を和らげる効果によって心情的な問題の解決を図ることができます。

 「それは違うんじゃないか?」なんて異論はこのような場合には不要どころか迷惑であり、この状況で必要なのは共感と賛同のみです。

 

 政治経済での問題の解決を求める意見の場合は異なります。ビジネス上の変革を求めたり社会問題の解決を目指すというような、個人ではなく集団の問題を改善するためには大勢からの同意と協力が必要だからです。少なくとも民主的な組織・社会であれば大勢の賛同を得て多数派を形成する必要があります。

 よってこのような場合では他者の意見を変えて共感と賛同を得なければならないことから、他者の「それは違うんじゃないか?」にも負けないロジックと説得力が必要不可欠です。時に相手の意見を取り入れ、時に自らの意見を修正し、時に自身の意見を貫き通すといった硬軟織り交ぜた臨機応変な対応をしなければなりません。

 

コミュニティ区分の不存在

 SNSなりコメントサイトなり、ネット上で政治経済を語られている場所は様々ありますが、多くの場所で罵言飛び交う乱痴気騒ぎめいた騒乱が起きる理由を考えています。

 ここのところその理由として考えているのは、コミュニティの住み分けが上手くいってないのではないか、です。

 つまり、社会の問題をなんとかしたいという問題解決思考の枠組みをもって議論による意見調整を図りたい人達と、社会で辛い思いをしていることへの心情的共感を求める枠組みをもって賛同の収集を図りたい人が混在していることが問題の根幹ではないかと推測しています。

 

 ぱっと見はどちらも政治経済の意見を述べているので区別が付きません。

 しかし前者は意見の調整と合意を図ることが目的です。よって相手の意見に反対したり異論を出すことを当然と考えています。「これはおかしいんじゃないか」「しかしこれはこういった理由が」「それならばこうすればいい」と、喧々諤々にそれぞれの意見をぶつけ合い止揚することこそが善です。

 それに対して後者は意見への賛同と共感を得ることが目的です。よって反対や異論を欲してなどいません。むしろ反対や異論は心情的な共感から最も遠いものであり、「これはおかしいんじゃないか」「そうだね、分かる」というコミュニケーションこそが善です。

 これはどちらが偉いとか優れているとかではなく、ただ目的が違うだけです。

 

 両者の混在した状況は誰も幸せにならない気がします。目的の違う人同士が同じ場で語り合っているから余計な軋轢が生まれて揉めるのではないでしょうか。

 それよりも上手く住み分けができたほうがいちいち揉める必要も無くなり、余分なエネルギーを使わずに互いの目的を達しやすくなるのではないかと愚考します。

 

結言

 「同じ意見の人が集まることでエコーチェンバーが起きて認知が偏り、他者の意見を聞けなくなる」なんてよく語られていますが、そもそも意見を述べる時の目的と枠組みが違うんじゃなかろうか、というのが近頃の考えです。

 他者の意見が受け入れられなくなるというよりも、その人は心情的な目的のために自分の意見への共感と賛同を欲しているのだから、そもそも他者の意見はいらないのです。それは良い悪いで区分するものではなく目的の違いに過ぎません。

 社会問題の解決を議論したい人と心情の共感を得たい人は上手く場の住み分けができたほうが互いに幸福ではないかと、そう考えます。

 

 

余談

 エンジニアという阿漕な商売をしているためか、批判的な意見や異論を出すのは良いことであるという思考に私は捉われがちです。それがいつでも使えるというわけではないということはちゃんと留意しないといけないですね。

 

 まあ、それとは別にして、コミュニケーションにおいて罵言を吐くのはやっぱりNGだとは思います。それは駄目です。というより罵言も揉める原因の一つだと思いますので。