忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

日本が最優先で改革すべきは税制だと考える

 現状の日本が完璧な国家かと言えば、まあそれに同意する人はあまりいないでしょう。良い悪いの度合いは人それぞれあるものの、何らかの改革が必要だと考えている人が多数派だと思います。

 専門ではないのでただの個人的な感想レベルの話ですが、記事タイトル通り、日本で何らかの改革を進めるのであれば最優先で税制を改めるべきではないかと考えています。

 

税の公平感が社会を安定させる

「体制に対する民衆の信頼をえるには、ふたつのものがあればよい。公平な裁判と、同じく公平な税制度。ただそれだけだ」

引用元: 田中芳樹「銀河英雄伝説 3 雌伏篇」

 引用に深い意味はありません。個人的に納得度が高い好きなセリフなので紹介したいだけです。

 

 先日も物価高への対策である住民税非課税世帯等に対する緊急支援給付金(5万円)の件で、その対象範囲と金額が物価高対策に適切かどうかよりも公平かどうかがネット上で騒がれていたことからも分かるように、組織集団の運営において構成員が感じる公平の度合い、すなわち公平感は避けて通ることができない問題となります。

 

 国家の税による福祉が事例として最も分かりやすいでしょう。

 福祉というものが持っている人から持っていない人への再分配、経済力がある人へより多くの負担を求める垂直的公平が実施される特性、すなわち弱者救済を目的としているものである以上、福祉が行われること・あるいは行われないことは不公平感を引き起こします。

 

 福祉が行われると、悪い言い方となりますが持っている人からすれば搾取だと取られます。この度合いが過ぎると「そんなにお金を取られるならばこの集団に所属する価値はない」となってしまい、社会への帰属意識や紐帯が損なわれます。

 福祉が行われないと、持っていない人からすれば恩恵が存在しないことになります。この度合いが過ぎると「何も助けてくれないのならこの集団に所属する価値はない」となってしまい、やはり同様に社会への帰属意識や紐帯が損なわれます。

 人々がこの両極端に達して社会集団に所属することの意味を失わないよう、税制は負担者と受益者の双方が納得できるような公平感を演出しなければなりません。

 

透明性の高い税制は重要

 再分配という福祉の特性上、払った分と受け取った分のバランスを万人が取ることは不可能で、その点で公平さを生み出すことはできません。

 では負担者と受益者が納得できる公平感はどうすれば実現できるか、それは閾値の適切な設定と使途の明確化、すなわち税の見える化が役立つのではないでしょうか。

 もっと具体的に言えば、次のようなことが重要だと考えます。

  • 何にどの程度お金が必要かの理屈付けと具体的な数値
  • どの程度税を払っているかの明確化、税の種類の簡略化
  • 払った税金が何に使われているかの具体化

 人が物事に納得できないのはそこに”理不尽”を感じるからであり、”理”を尽くして説明すれば多くの人は腑に落ちるものです。よってこういった内容がもっと目に見えるようになっていれば今よりも税の支払いに納得しやすくなることでしょう。

 例えば「年金に何兆円必要です!各種の税から歳出します!」だけでなく、「受給者は何人いて、平均していくら払っていて、だからこれだけのお金が必要です、この税とこの税での歳入をここで使います」と具体的に説明することが望ましいと言えます。

 

 もっとシンプルに言えば、「収支報告をしっかりしましょう」ということです。会社の飲み会ですら収支報告をするのが普通なのですから、税金だってちゃんと収支を細かく開示しないといけません。一応は税も財務省等によって収支報告がされていますが、もっと細部まで世間に広く公開したほうがよいと考えます。

 もちろんそんな細部を全国民が精査することはできませんが、必要なのは不透明さを少しでも排除することです。マスメディアとしても「このお金はどこに消えた?」と陰謀や疑惑で責めるよりも、「このお金は適切な使い方か、本当にこの金額が必要か」と具体的な指摘点があったほうが記事を書きやすいことでしょう。

 

結言

 つまるところ、顔も知らない使途も知らないどこに使われるかも分からないお金を払うという状態が税の不公平感を生んでいるのであって、極論、「貴方が今月払った社会保険料は北海道にお住いの高橋さん(12歳)が部活動で負った骨折治療の公的医療保険に用いられました」というようなことが分かれば、まあ少なくとも今よりは税負担に納得しやすくなるかと思います。

 もちろん個人情報保護の問題があるので開示レベルには制限が必要ですが、自身の払った税がどの使途で用いられたかのトレーサビリティ(追跡可能性)をもっと整備されることが公平感の醸成に役立つのではないでしょうか。

 

 以上より、シンプルな税制、明確な使途、追跡可能な収支、そういった税制改革が行われることが望ましいと考えます。

 

 

余談

 最高の国ランキング(Best Countries Ranking)という米国のUSニューズ&ワールド・レポートが毎年公表しているランキングにおいて、ビジネス分野に限定された採点ではありますが日本の税務環境の評価は100点満点中4.8点です。2021年の総合順位は2位と高位ですが、税制はその足を引っ張っている一因と言えます。