忘れん坊の外部記憶域

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日本政府のODAや海外投資に関する見解:「ばらまき」は言葉が悪すぎる

 日本政府が海外へお金を出すと「海外にばらまくな」という声がメディアからもSNSからも必ずあがります。

 普段は特定の意見に対して真正面からの反論はしないよう努めていますが、たまには明確に反対側の意見を提示してみます。

 

そもそもの拠出度合いと意味

 まあ何はさておきメディアの報道の仕方が悪いと思います。「お金をばらまく」「ばらまき外交」なんて言われたら、そりゃあ誰だって「ふざけんな!」って気持ちになるものです。もちろんちゃんと説明しない官僚や政府も悪いと思います。特に外務省。各ページに関連リンクを張り巡らせている暇があるならもっとデータ自体へのアクセス性をよくして欲しいです。

 それはさておき、メディアのおかげで日本はお金をばらまくという印象が強いですが、しかし実際のところODAの拠出額で言えば日本はダントツというわけでもありません。日本のODA額はアメリカやドイツの半分以下であり、フランスやイギリスと同程度です。日本の経済規模からすればむしろ主要先進国の中でも拠出額が少ない方となります。

(ODA) ODA実績 | 外務省

 つまり、善し悪しは別として、日本は言うほど他国にお金をばらまいていません。

 

 1980年代頃、膨大な貿易黒字を叩き出していた日本に対する大規模なジャパンバッシングがあったように、国際的な価値観として「富める国は還元する責任がある」というノブレスオブリージュの発想がある以上、適切な拠出額は国内の事情だけでなく国際関係のバランスを見ながら調整する必要があります。

 そもそも豊かさとはストックとして貯め込んだ量ではなくフローの量によって決まるものであり、お金を国内にいくら貯め込んでも豊かにはなれません。お金を動かして物質や価値に変えて初めて豊かになれるのであり、対外への拠出を富の流出と考えるのは誤解だと考えます

 

有償と無償の違い

 また、実際にただお金をばらまいているかと言われれば、すべてがそうではありません。政府の拠出には大きく分類すると無償と有償があり、年ごとに比率は異なるものの半分程度は有償資金協力、すなわち金利を取ってお金を貸す行為です。

 

 最近の事例で言えば、日本は2022年の3月、インドに5年間で5兆円の投資を目標に掲げました。

 これは毎年1兆円をポンとプレゼントするという意味ではありません。例として同日に交わされた円借款に関する書簡では、年利0.1~1.2%の金利で約3000億円を限度とした融資をすることが取り決められています。つまりはお金をあげているのではなくお金を貸しているわけで、それをばらまきというのは少し穿った表現だと思えます。

 そもそも外務省がWebサイトに公開している対インド事業展開計画では、鉄道、上下水道、道路、電力・エネルギー網、地下鉄、学校、そういったものへの投資が計画されていますが、そのほとんどが有償です。インドは今著しい発展を遂げている国であり、開発計画が多数あることからそこに投資して利益を上げることが目的です。

 もちろん日本政府に善意の気持ちが無いわけではないでしょうが、決して善意のみでお手伝いするというようなピュアなものではなく、利益を見込んで金を貸すという商売人の目線のほうが強いでしょう。インドとしてもお金を借りられるならば助かるのであり、Win-Winと言えます。

 

 また、ODAのうち有償の円借款に用いられるのは、一般会計や特別会計ではなく財政投融資等を財源とします。

(ODA) ODA予算 | 外務省

 

 財政投融資とは税負担に拠らないものです。よって海外へ出す有償資金協力の額を増やすとしても日本人の税負担に変わりはありません。

 無償資金協力や技術協力は一般会計や特別会計から出されており、こちらは年々規模が縮小されています。私たちの血税をどんどん海外に流している、というのもまた誤解です。

 

なぜ企業が海外に出て行ったか

 日本企業が海外に工場や拠点を多く建てるようになったのは為替や人件費の問題も多々ありますが、一因として日本市場の飽和があります。グローバル化が進む中で大資本と並んで事業を継続するためには今まで以上に利益を上げなければならず、そのために海外へ手を伸ばし売上を伸ばすことを狙っているということです。

 しかし海外にモノを売るのはなかなか難しいものです。先に取り上げたインドが良い例で、最近のインドは経済発展に伴い国内で成長中の産業を保護するために関税が厳しくなってきており、つまりは国産品志向が強くなっています。部品だろうが完成品だろうがインド国内で生産されたものを使うよう政府が指示しており、海外企業がインドで売上を伸ばすのであればインド国内に工場や施設を建設しなければなりません。

 その足掛かり、日本企業が海外進出するための地均しとして政府の力が有効となります。特にODAで積極的に技術協力しているインフラ系の効果は絶大です。

「土地や交通インフラや建物を整備する技術を教えてあげます、お金も貸してあげます、代わりに日本政府や日本企業が優先的にそれを使って商売できるようにしてね」

というような契約を結んでいるわけです。

 長年このような地道な地均しを官民で続けてきたからこそ日本企業が海外で商売できているのであり、政府による対外投資は決して無視できない影響力を持っています。

 その傍証として、現在日本は資源高・材料高騰によって貿易収支が赤字であることがニュースで報道されていますが、国際収支は黒字です。それは貿易赤字を打ち消すほどに第一次所得収支が黒字を出しているからです。

報道発表資料(発表日別) : 財務省

 

 第一次所得収支は説明が難しいですが、大雑把に言えば海外に持っている債権や会社での利子や配当による収支です。第一次所得収支は年々増加しています。それは長年日本政府や日本企業が海外に投資してきた分が利子や配当の形でどんどん返ってきているということです。

 

 今後の日本がかつてのように貿易によってガンガン稼ぐ、というのはあまり現実的ではないビジョンかと思います。そうであれば、海外への投資を継続して所得収支による利益を維持・拡大することが日本の黒字を維持するために必要な施策ではないかと愚考します。

 

 

余談

 要は海外投資と国内投資は別腹ということです。

 なにはさておき国内投資はもっと活発に行われるべきだと思っていますので、「海外にばらまくな!」という誤解には反対する気持ちですが、「もっと国内の金を回せ!」という意見には大賛成です。