忘れん坊の外部記憶域

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SNSプラットフォームの住み分けは推進されるべきか?

 

不定期に話題となるSNSプラットフォームの住み分け

 2020年アメリカ大統領選挙におけるトランプ大統領や関連アカウント凍結の影響を受けてパーラーや新規SNSが話題になったように、また2022年のイーロンマスクによるTwitter買収の影響を受けてマストドンが話題となったように、自身の主義思想や信条に合う言説が主流のSNSプラットフォームを選択するかどうかという話は不定期にあがります。

 この是非に関して、私個人としてはエコーチェンバー化やフィルターバブルを好まないので非側なのですが、それぞれの自由を尊重する思想でもある以上単純にただただ非だとも言えません。その理由について整理していきます。

 

企業の自由、ユーザーの自由

 まず前提として、SNSプラットフォームが複数あることは適切なことです。大規模なSNSプラットフォームと言えども一企業であり、社会インフラとなったSNSプラットフォームを一企業が独占するような状況は決して望ましいとは言えないでしょう。異なるものが複数あり、ユーザーに選択権があるほうが健全です。

 また一企業である以上、その企業の方針が運営に反映されることも当然許容されることです。特定の言論を検閲したり、逆に自由奔放な言論を許容したりすることは企業の経営方針に属するものであり、それが社会的責任を果たせる範疇であれば企業に選択権があります。

 例えばSNSプラットフォームと言えばアメリカの企業がメジャーですが、彼らが通信品位法230条を代表とする法典や各種判例の範囲内で自由な選択を取ることは何ら問題がありません。

 

 もちろん一企業による検閲行為がどの程度許容されるべきかは存分に、そして常に議論され続ける必要があります。人々の倫理規範や価値基準は日々変化し続けるものであり、それらの指向性が全て一企業の自由自在とすればそれはユーザーへの独裁に近似するものと成り果てます。そうならないよう何を許容し何を規制すべきか、プラットフォーマーとユーザーの綱引きは常に行われるべきでしょう。

 その点で言えばユーザーがプラットフォームの移住を議論するのは健全だと言えます。企業が経営方針に基づき制約条件を定める自由があるのと同時に、ユーザーにはその制約条件に従わず別の選択肢を選ぶ自由があります。どのSNSプラットフォームを選択するかという個人の選択もまた自由です。ユーザー数減少を恐れる企業としては制約条件の見直しを迫られることから、これは綱引きの形の一つとなります。

 

 また、そもそもある程度の住み分けは自動で行われています。若者が使うSNSと大人が使うSNSが別であるように、個々人が住み心地の良い空間を求めて自然選択的に住み分けが進むのは必然的かつ当然のことだと考えます。

 

推奨すべきかという点では非を提示したい

 そういった自然な住み分けは特に非だと思っていませんが、その反面、メディアやインフルエンサーが住み分けを推進する行為についてはあまり好んでいません。それはSNSプラットフォームにおいて否応なしに発生するエコーチェンバー化やフィルターバブルのリスクを意図的に高めかねない行為だと考えます。

 もちろん人には自分が好まない言説をシャットアウトする自由がありますし、企業は自らが望むフィルターバブルを形成する自由があります。

 ただ、その住み分けは自然選択的なものであるべきだと考えています。SNSプラットフォームの住み分けによるエコーチェンバー化やフィルターバブルの強化は党派性を強めて陰謀論を生み、社会の分断を助長する要素の一つです。そういった蛸壺化の弊害をあえてわざわざ増進させるような言説を取る必要はなく、むしろ避ける方向へ進めて社会全体の融和や調和を求めることこそが、メディアの責務とまでは言いませんが、社会的責任として求められるのではないかと愚考します。

 

結言

 SNSプラットフォームの住み分けが自然と行われることに異論はありません。

 ただその住み分けを推進するような言説は戒められて然るべきかと考えます。それはエコーチェンバー化やフィルターバブルといった潜在的リスクを高めることにしか役立たない、あまり望ましくない言説です。

 むしろメディアやインフルエンサーには住み分けによる分断を進めるのではなく、かき混ぜるような行為を行ってもらえるとありがたいです。

 

 

余談

 つまるところ、個人的に「対立煽り」が嫌いなんです。住み分けを推進したがる人は「こちら」と「あちら」を分けたがっている人であり、対立構造が商売になる人です。それが趣味嗜好の人が世の中に居るのは構いませんが、少なくとも無意味な摩耗、無駄な損耗、不要な減耗であることは留意されるべきかと思います。