風評が宜しくないかと思ってあまり語ってはきませんでしたが、私が職場で担当している製品群はそこそこにブラックと言いますか、働く人に厳しい状態となっています。
- かつての主力製品だが、市場の飽和に伴い現在は別の製品群を会社として推している
- リソースはほとんど手配されないが、規模が縮小されたわけではないのでシェアの維持に掛かる業務量は変わらない
- 個人の業務負担が過剰になっており、人員が手配されても耐え切れずに潰れて異動していく
- 過剰な業務量に耐えられた少人数のサバイバーで業務を回している
この製品群はプロダクトポートフォリオマネジメントで言えば少ない投資でも利益を生み出し続ける『金のなる木』ではありますが、その木を枯らさないために現場の負担が重くなっています。
弊社の平均年齢は40歳以上、離職率が低く同じ部署で長く務めることが一般的な日本の伝統的企業(JTC)であるというのに、この製品群の関係者だけは10年以上勤めている人が私を含めて3人しかいません。しかも全員が30代の中堅組で、40歳以上のベテランは管理職以外一人もいない始末。日本の典型的な組織構成に則っており、ベテランは皆定年退職済みで氷河期世代はほとんど採用していないので払底しており、私たちより上の世代は誰もいません。
今回はそんな3人のサバイバル術から、職場で生き抜く方法を見ていきましょう。
仕事力でねじ伏せるスタイル
まずは私のサバイバル術から。
これはもう単純に、仕事力でねじ伏せるスタイルです。
その仕事を完了させるためには私に頼ることが最適解となる、そんな状況まで仕事力を高めてしまえば仕事が阻害されるような事態は生じなくなります。なにせ仕事が進まなくて困るのは依頼者当人なのですから。
私は機嫌で人を操作するのは好みではなく好き嫌いで仕事をしていませんし、面倒でも大変でもどんな仕事でも引き受けますので下手に出て頼み込んでくる必要はないと常々思っていますが、依頼側がこちらの都合に配慮してくれるのは相手の考えなので別に止めはしないだけです。
さらに言えば、個人的にはそんな属人性の高い状態は好みではなく、私の仕事を他の人ができるようにパッケージ化・マニュアル化には余念がありません。
ただ、仕事をパッケージングしてマニュアル的に行えるようにするにはその仕事に対して数段上の理解度が不可欠であり、属人性を下げるためにマニュアル化を進めていると仕事の習熟度が他者よりも数段上に到達するので、難易度が高かったり期日が短かったりと大変な仕事は私に依頼することが結局は最適解となっています。
つまるところ、相対的に仕事力が圧倒的になれば他者が勝手に配慮するようになるので職場でサバイブしやすくなります。
そしてもちろんこれは万人にお勧めできる方法ではありません。
口出しをさせないスタイル
次のサバイバーは強固な自我によって我関せずを貫き通し他者からの口出しをさせないスタイルです。
彼はプライベートの時間を大切にしており、ほとんど残業もせず帰っていきます。仕事中にも頻繁にSNSをやっており、自由人極まりないです。頼まれれば人の仕事を手伝いますが、頼まれない限りは決して自身の職掌を越えることはしません。
そんな彼が職場でサバイブできているのは、ひとえにやるべきことをやっているからです。任された仕事は適切にこなして必要な成果を常にアウトプットしている以上、他者が何かを口出しすることはできません。ビジネスの論理上、結果を出す人が正義です。結果を出せるのであれば仕事中に多少遊んでいようと関係ありません。
もちろんこれは仕事ができる有能にのみ限られたスタイルであることは論を俟ちません。結果を出せない人が仕事中に遊んでいると顰蹙を買って職場でのサバイブが難しくなります。また、たとえ結果を出していようともいちゃもんを付ける人はいますので、それを無視するだけのメンタルが不可欠です。
人間関係構築スタイル
最後のサバイバーは人間関係を構築して職場での立ち位置を確保するスタイルです。
同僚や上司の仕事を積極的に巻き取り、後輩や若手は優しく手懐けて、職場の大多数を味方に引き入れることで頼れる人材としてのポジションを確立しています。彼と敵対することは職場の多数を敵に回すことと同義であり、他部署の上級管理職であっても彼と敵対するような行動を取ることはしません。
これは最良の手段に見えて、案外と茨の道です。他者の仕事を巻き取って処理するだけの実力が不可欠ですし、人脈は常に投資し続けなければ維持できない以上、気軽に見えて相当な労力を払う必要があります。
なによりも、他者が味方になるのは彼の味方であることが利得になるからであり、他者へ利得を与えるだけの仕事力やコミュニケーション力を彼が持っているからに他なりません。
職場を巡回していると各所で様々な人と雑談している彼を見かけますが、彼はその人脈維持の雑談時間を確保するために自身の仕事を他者の数倍以上の速度でこなしています。それを皆が知っているからこそ、彼の雑談を咎める人は誰もいません。
結言
三者三様ではありますが、いずれにしても職場を生きやすくしてそこでサバイブするためには仕事ができることが必要だと言えます。時間や技能といったリソースをサバイブに割くためには、余剰リソースを生み出すだけの能力が不可欠です。厳しい話ですが、仕事ができないと職場で自由に振舞うのは難しくあります。
もちろん仕事ができなければいけないわけでもなければ仕事ができるだけでいいわけでもなく、サバイバル術には様々あります。
ただ、仕事ができると職場でのサバイブに役立つ、これは一つの観点かとは思います。
なんとも、厳しい結論です。
余談
なにも「だから仕事はできるようにならなければならない」とか、そういった意識の高い話をしたいわけではありません。これは「この職場では」「仕事ができる人しかサバイブできなかった」事例であり、まさしく生存者バイアスに他なりませんので、幅広く適用できるかと言えばそうとは限らないものです。
まあ、生存者の視点(サバイバルアスペクツ)の一種でもあるため、無意味ではないとは思います。