忘れん坊の外部記憶域

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ベテランの最も優れた技能は『時間の勘所』を掴む能力

 ベテランは退役軍人を意味する言葉でしたが、現代ではそこから派生して経験豊富な人やその道の熟練者を指す言葉になっています。

 若手や中堅はベテランから様々なものを見習うことができます。今回はその中でも特に見習うべき能力について考えてみましょう。

 

より高く、より遠くへ

 競争の世界であるビジネスにおいて重要なのは『より高くより遠く』へ到達することであり、先人たちとまったく同じ苦労をすることではありません。先人と同じ努力をして同じ道を切り開くことは、厳しい言い方をすれば”車輪の再発明”に過ぎないと言えます。

 例えば個人が物凄い努力をして一からiPhoneを開発したとしても、その努力が今更ビジネスの世界で認められることはないでしょう。未開の地をかき分けて進むからこそ価値が生まれるのであり、同じように近所の山をかき分けて進んだとしても徒労としか扱われません。苦労の使い処はとても重要です。求められているのはその先であり、市場に無い新しい概念や製品、他社よりも優れたソリューションこそがビジネスでは必要です。

 そのためには先人の敷いた舗装路を行き、巨人の肩の上に立つことが適切です。まずは既存の最先端まで最速で向かい、苦労して暗中模索の中を手探りにかき分けて進むのはその先となります。

 よってまずは舗装路を行き巨人の肩の上に立つこと、つまり模倣をすることこそが新人や若手に必要なことです。

 つまり若手が伸びるためには模倣対象の策定、自分の目指すべきベテランのロールモデルを見つけることが最適な方法だと考えます。

 

選択と集中

 経験豊富なベテランからは様々なものを模倣することができます。

 手技に優れることや豊富な知見を持っていること、それらはベテランとして重要なことですし疑いようもなく見習うべきポイントではありますが、そういったパッと見て目立つ部分以外にもベテランは様々な技術を隠し持っています。

 隠し持っているというよりは表立って出てこないだけですが、それはさておき、若手や中堅がベテランから最も見習うべきは『時間の勘所』を掴む能力です。

 

 時間は有限で、そして平等です。誰にも同じように毎日24時間です。

 それはつまり、どこにどれだけ時間を分配するかで結果が大きく変わることを意味しています。同じ技能を持っていても選択と集中に長けた人がより成果を出すことができるのは必然です。不要なところには手を抜き、必要なところに時間を注力することが理想系でしょう。

 ベテランはこの『時間の勘所』を熟知しています。むしろこれを熟知していない人はベテランと呼ぶに値しません。組織内外の力学を理解し、関係者の特質を把握し、結果を予測し、不要な部分は赤点とならない程度に手を抜いて簡潔に済ませ、重要なところへ能力を集中して投入する。その結果としてより望ましい成果を達成できる。それが上手くできる人こそがベテランです。

 

 『時間の勘所』を掴む能力とは、言い換えれば試験問題の配点がどうなっているかを察して効率良く点数を取る能力と言えます。

 同じ難易度で同じだけ時間が掛かる配点の異なる問題があれば、当然ながら配点の高い問題に注力するほうが成績は良くなります。そして現実の課題はいつだって配点が異なるものであり、それを察することはとても重要です。

 

結言

 時間が無限、そこまで言わなくとも余裕がある状況では全てに注力しても問題とはなりません。

 しかし現実は常に時間資源こそが真っ先に不足します。足りないのはいつだって時間です。

 だからこそ、希少リソースである時間を適切に分配できるベテランの能力こそが若手や中堅が真に見習い模倣すべき対象だと私は考えます。