『ウォーターハンマー』という現象があります。
なにやらゲームや漫画の必殺技みたいな名前ですが、ただの物理現象です。流体の圧力が何かしらの原因によって変化した際に、生じた圧力差によって流体の流れが変わって勢いよく管の壁などにぶつかる現象をウォーターハンマーと言います。水を流している時に見つかった現象のため、読んで字の如くウォーターがハンマーのように作用することを意味する現象です。ちなみに水以外でも生じます。
必殺技のような名称とは裏腹に、これは私のような流体屋からすればできる限り避けなければならない忌避すべき現象です。なにせハンマーのように流体がぶつかりますので、酷い場合は機器が物理的に壊れます。設計や制御によって回避すべき現象です。
『市販薬をオーバードーズする若者が増えている』といったニュースを最近見かけます。
馬鹿みたいな感想ですが、オーバードーズって言葉はかっこよくありませんか?やっぱり必殺技みたいですので、格好をつけたい10代の若者からしたらちょっと惹かれる響きだと思います。
マスメディアはオーバードーズなんてちょっとかっこいい表現を使わないで「風邪薬をがぶ飲みして死にかけるお馬鹿さんが増えています」と率直に報道したほうがいいと思います。そうすれば真似をしたがるお馬鹿さんが減るかもしれません。
言葉は重要
つまり何が言いたいかというと、名前や呼び方、言葉遣いや表現はとても重要だということです。「名は体を表す」とも言うように人は言葉に囚われる生き物であり、言葉は印象に大きく作用します。視覚情報であれば見た目が印象に大きく作用しますが、それ以外は言葉が印象に対して支配的です。
言葉遣いが荒い人の第一印象に"親切"や"温厚"を感じる人はいないでしょうし、「お前/貴方/貴殿」など他者をどう呼ぶかでその人の人柄もある程度推察されるものです。ハンドルネーム『珈琲好きの忘れん坊』さんは恐らくコーヒーが好きで記憶力が悪いのだろうと印象を持つでしょう。その実態はどうあれ。
まあ、実際にコーヒー好きで記憶力が悪いのでこれは印象通りではありますが。
言葉による印象はとても大切です。実態や中身がそれ以上に大切であることは論を俟たないものですが、誰もが本質に興味があるわけではないことを忘れてはいけません。相手の好奇心を誘引しなければそもそも印象の先にある実態や中身を見てもらうことはできないものです。
例として、厳しい話ではありますが人の見た目もその一種です。見た目で興味を惹けなければより重要な中身の観察には至れないものであり、人の中身が甲子園ならば見た目の第一印象は地区予選です。予選を突破しなければ甲子園には出れません。
同様に、言葉も丁寧に用いる必要があります。実態や中身のほうが大切だとしても、その実態を開示するためにはまず言葉による印象の壁を乗り越えなければならないのですから。
結言
「名」とは個人の姓名を表す狭義の意味に限定されず、広義で言えば人や物を識別する言語記号です。名前も、呼び方も、言葉遣いも、表現も、言葉はすべて貴方と他者を識別する言語記号である「名」です。貴方の用いる言葉の全てが貴方を修飾します。
それらの集合体によって他者から認識される以上、私たちは言葉を丁寧に扱う必要があるでしょう。