忘れん坊の外部記憶域

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技術職のプレイングマネージャーが生み出す機能不全と士気低下

 少子高齢化の進展に伴い労働人口が徐々に減っている社会を背景に、一部の組織やチームには役職として明記されて、乃至はなし崩し的にプレイングマネージャーが存在しています。

 プレイングマネージャーとは現場で実務を行う「プレイヤー」と管理職である「マネージャー」を兼任する人です。一人二役を期待されており、労働人口が低減しつつある組織のニーズに適合したポジションだと言えるでしょう。

 

 もちろんそんな理想は大抵の場合で現実的ではなく、プレイングマネージャーでグーグル検索してみればなんとも悲惨なサジェストが出ることからも分かるように、誰もがはっきりと、あるいは内心でプレイングマネージャーは問題だと思っています。

 

(悲惨なサジェスト)

 

 今回は技術職のプレイングマネージャーに限定して、如何にしてプレイングマネージャーが「マネジメントの機能不全」と「部下の士気低下」を引き起こすかを述べていきます。

 

マネジメントの機能不全

 一人二役と言えば聞こえはいいかもしれませんが、プレイヤーとマネージャーの半々なんて中途半端が許されることはなく、どちらも両立しなければなりません。つまりは単純に二人分働くことになるのがプレイングマネージャーです。

 もちろん一握りの有能な人ならば二人分の働きをするくらい簡単にできるでしょう。ただ、普通の人には不可能です。

 よって大抵の場合でプレイングマネージャーは疲労困憊に陥り、プレイヤー機能かマネージャー機能のどちらかを大きく損ねるか両方とも中途半端な状態に陥ります。

 

 このような場合、特にマネジメントが犠牲にされがちです。

 まず第一に、プレイングマネージャーになる人はプレイヤーとして優れた成果を出してきた人であり、そのような人がマネジメントも優秀だとは限らないためです。場合によってはマネジメントにまったく適性がなく、自らが得意なプレイヤーにばかりかまけてマネジメントをしない"名ばかりマネージャー"になることすらあります。

 

 第二に、これは体質の弱い組織にありがちですが、組織がマネジメントを軽視しているためです。

 マネジメントを専門技術だと捉えて専業マネージャーを育成するような組織はそもそもプレイングマネージャーのような仕組みを採用しません。よってプレイングマネージャーが存在する組織は必然的にマネジメントを軽視していることの証左となります。

 もちろん、たとえマネジメントが不適切であっても実働部隊である部下が有能であればチームは回ります。だからこそマネジメントは軽視されがちなものです。

 しかしマネジメントの目的はチームをただ回すことではありません。それは最低限であり、マネジメントの本質はチームの資源を効率的・効果的・経済的に活用して成果を上げることです。維持するのではなく向上させることがマネージャーの仕事であり、そのような難しい職務をこなすために専属の管理職ポジションが存在しています。

 よってプレイングマネージャーが管理するチームでは専属マネージャーがいないために能動的な成長を果たすことが難しくなり、多くの場合は維持に留まります。

 そして市場競争において維持とは後退と同義です。

 

 結果として、プレイングマネージャーを採用する組織ではマネジメントが機能不全を起こして漸進的な成長を果たすことができない可能性が高く、いずれ市場から退場することとなります。

 

部下の士気低下

 技術職におけるマネージャーは部下の技術を評定する立場である以上、ほぼ必ず技術的に優れた成果を出した人が任命されます。

 そういった人をプレイングマネージャーにしたがる気持ちは分かります。せっかくのプレイヤースキルを活用しないことはもったいないと思うのは自然な感情でしょう。

 ただ、安易に優秀なプレイヤーをプレイングマネージャーに任命し、あまつさえ管理職としての人事考課基準ではなくプレイヤー能力をも評価対象とすると、多くの場合は残念な結果をもたらします。

 

 まず第一に、部下の手柄を上司であるプレイングマネージャーが奪うことが可能になります。

 本来であればプレイヤーと管理職は別のレイヤーであり評価基準も異なることが一般的ですが、プレイングマネージャーはプレイヤーとしての評価軸にも属することになる以上、自らが評価されるために権威勾配を悪用して部下の手柄を横取りしたり高評価が見込める案件を自らで抱え込むリスクが生じます。

 

 第二に、視野の狭いプレイングマネージャーは部下の成長機会を損ねます。

 前述したようにプレイングマネージャーはプレイヤーとして優秀な人が任命されることがほとんどです。そのような人はプレイヤーとして優れているため高度で評価される価値の高い案件を優先的に着手するようになります。

 それは目先の運用効率としては合理的な判断ですが、部下には低度で評価されない価値の低い雑用のような案件ばかりが回されることになり、部下の成長とやる気が阻害されます。

 

 これらの帰結として、プレイングマネージャーがマネジメントに相当注力しない限りは必然的に部下の士気が低下していきチームの出力が漸減的に低下していく結果を招きます。

 

結言

 プレイングマネージャーを日本語に直訳すると「遊んでいる管理職」です。マネージャーとして適切に機能し難い実情を暗に示す、皮肉めいた言葉だと言えます。

 

 もちろんプレイングマネージャーを完全に否定するわけではなく、一部の極めて優れた人材であれば一人二役をこなすことも容易でしょうし、そういった人であれば機能させることが可能な仕組みです。またベンチャー企業など少人数でマネジメント負荷が少ない組織であればプレイングマネージャーが意味を持つこともあります。

 ただ、少なくとも誰にでもどのような組織にでも適用できるような汎用性はなく、安易な任命は組織・管理職・部下のいずれにとっても長い目で見て幸福をもたらさない選択となり得ます。