忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

availabilityを重視した幸福論

 

 幸福(Happiness)は意外と難しい概念です。喜びや楽しさに類する瞬間的な感情を指す場合もあれば、もっとレンジの広い生活満足度を意味することもあります。

 幸福を定義して定量的に測定するため、様々な尺度が開発されている程度に「幸福」は人々の関心を惹く言葉ですが、何を幸福と感じるかは実際のところ人それぞれです。それは単純に幸福を生み出す要因が無数にあるためだと言えます。

 遺伝や性別のような生物学的要因、年齢や健康のような個人的要因、家族や知人のような人間関係要因、教育や職場のような制度的要因、犯罪や経済のような社会的要因、自然や汚染のような環境的要因、宗教や思想のような文化的要因、その他さまざまな要因が幸福に影響を与えるパラメータです。

 

availability

 何をもって幸福を得るかは人それぞれの好みに依存しますが、個人的にはアベイラビリティ(availability)を重視することが効率的だと考えています。

 ちなみに、availabilityを”アベイラビリティ”とカタカナで表すのはどうにも好みではないので、表記はavailabilityとします。実に余計な拘りです。

 

 閑話休題。

 availabilityとは難しく言えば可用性で、他にも入手可能性や有用性とも訳されます。辞書的に言えば「the state of being able to be used, bought, or found」であり、日本語にすれば「使うことができる、買うことができる、見つけることができる状態」です。

 availabilityが高いものを例示すると、すぐに使える流動性の高い資産である現金、コンビニに行けば買えるようなお手軽な商品、毎日会える家族とのコミュニケーション、トラブルやエラーが少なくいつでも使える機械やソフトウェアなどが挙げられます。

 逆に、流動性の低い不動産や貴金属、滅多に手に入らない希少なグッズ、なかなか会えない遠距離恋愛、信頼性が低くすぐに故障する設備などはavailabilityが低いとされます。

 

availabilityが高い幸福の種類

 幸福を生み出す要因の異なる分類として地位財非地位財があります。

 地位財とは社会的に価値があるとされる立場やモノ、グッズや資産を指し、非地位財とは意思決定の自由や他者からの愛情、健康やイベント事などを指します。

 地位財は比較によって価値が定まることから相対的で、非地位財は比較を必要としないことが特徴です。

 人は地位財や非地位財を得ることで幸福を感じるようにできています。

 

 availabilityに関して言えば、地位財に依拠する幸福はavailabilityが低いと言えます。多数の他者よりも良いモノやコトを得るには障害が多く、それらは必ずしも手が届くとは限りません。そして得たとしても価値が相対的に変動する以上、せっかく得た幸福が長続きしないこともあります。

 対して非地位財はavailabilityが比較的高いものです。地位財と比較して入手難易度が低いとは限りませんが、相対的ではなく主観的に価値を定めることができるため人によっては容易に幸福感を満たすことが可能です。

 具体的に言えば、地位財として世界的に有名な人になって承認欲求を満たすことで得られる幸福と、非地位財として友人が一人増えることによる幸福は、availabilityとしては後者のほうが高いと言えます。

 

結言

 もちろん人は苦労して手に入れたものの価値を高く見積もるものですので、地位財のようにavailabilityが低い幸福は大きな幸福を生み出すことは間違いありません。

 しかし人は幸福を明確に見積もれるわけではない以上、地位財によって得た幸福はそれが割に合わないことだって多々あります。

 

 それを考慮すると、「今日もご飯が旨い!」くらいの素朴でavailableな幸福を大切にしている人が、実のところ一番合理的かつ効率的に幸福を得られるのではないでしょうか。