年末、職場の大掃除。試験評価室にて。
(終わったらちゃんと捨てればいいのに何故か溜め込んでいる)試験済みの製品サンプルを廃棄する若手と私。
良く言えば反面教師
「ああ、そんな丁寧に扱わなくてもいいんだよ、もう捨てるサンプルなんだからさ。ガチャガチャって扱っていいし、ポイって放り投げたっていいんだ」
手本として、金属部品を投げ捨てる私。
「よし、せっかくだから仕事のコツを教えよう。いいかい、仕事はなんでもかんでも丁寧にやればいいってことじゃないんだ」
疲れたので休憩がてら余計な話をしだす私。
「仕事には必ず相手が居る。そして品質の定義を思い出して欲しい。JISやISOの堅苦しい定義は一応覚えておいたほうがいいけど、品質とは簡単に言えば『顧客の要求を満たす程度』のことだよね。つまり品質とは、性能だけでなく価格や早さといったトータルでの顧客の要求をどの程度満たせているかで決まるんだ」
「例えば100均の製品、あれは凄く"品質が良い"と言えるんだ。性能は確かにいまいちな場合が多いけど、品質で言えば抜群だ」
「なぜならば顧客が100円のレベルで求めている性能は充分に持っている、つまり顧客の要求である性能と価格のバランスが上手いこと取れている。だから100均の製品は低性能かもしれないけど高品質だと言えるんだ」
「逆に日本の一部メーカーの家電は少し品質が悪いとも言えるよね。だって顧客が要求する以上の性能を持っていて、顧客が要求する以上の価格になっている場合があるから。それじゃあ顧客の要求を満たしているとはとても言えない。それよりも必要な機能をちゃんと持っていて手頃な値段の家電のほうがよっぽど高品質だと言えるんだ」
「もちろん高価格が妥当だと思う高性能指向の顧客に対しては高性能高価格の製品が高品質だと言えるんだけどね。まあ、何事も顧客次第ということさ」
興が乗ってしまい、完全に手を止めてサボる私。
「つまり仕事の品質を上げるには、相手が求めている要求を満たすことが重要なんだ。だから丁寧な仕事が求められている時は丁寧な仕事をすることが重要になるけど、丁寧さよりも早さや価格といった別の項目を求められている時はそれに従うことが仕事の品質を高めることになるんだ。なんでもかんでも丁寧にやればいいというわけではないことが分かったかな?」
「だから仕事の品質を上げるコツは、とにかく着手してみて、そしてすぐに報告すること。つまりは報連相だね。その速度が何よりも重要なんだ。まずは手を付けて、こんな感じで進めるけどいいですか?と聞く。そうすれば相手の要求を具体的に聞き出しやすくなって、手戻りの発生や要求を満たせないリスクを下げることができる」
「そして今言いたいこと、それはつまり、ゴミ捨ては丁寧さよりも早さのほうが重要だから、ちゃっちゃと片付けて終わらせようぜってこと。別に今は丁寧さはいらないからさ」
まるでちゃっちゃとやっているかのように振舞う私。
「ああ、でもちゃっちゃとやればいいとは言うけど、何よりも安全第一だからそれには気を付けてね。鋭い端面を持った金属部品とかいっぱいあるからさ。それで怪我をするのはまったくもって良くない」
「こうならないようにね」
金属で切って真っ赤になった指を見せつける私。
ここまでの反面教師はなかなかに希少だと思う私。
結言
ろくでもない。(鏡を見ながら)
(仕事の早さに関する自論の詳細)
余談
よく見かける標語の『安全第一』には続きがあり、『安全第一、品質第二、生産第三』と言います。元はアメリカで生まれた概念で、英語ではSafety First / Quality Second / Productivity Thirdです。
これはただ安全を重視しているだけでなく、生産性よりも品質、品質よりも安全を重視しましょうという意味です。
昔は生産性を第一としていたために労働災害が多発していましたが、ある会社が労働者の安全を守るために安全を第一にした結果、労働者が安心して働けるようになったために品質や生産性も向上しました。それが世の中に広まり、だからこそ安全を第一にしようとなった経緯があります。
『安全第一』だけだと何に対して第一なのかが分かり難いので、何に対して第一なのかを理解するためにも続きを覚えておいたほうがいいと思っています。