忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

アメリカチームから抜け出すことの意味

 時々、「日本はアメリカの属国だ」という言説を見かけます。

 今回は思考実験的に、少し極論をもって反対意見を構築してみます。

 と言っても「日本はアメリカの属国ではない」とする反論ではなく、「アメリカの属国ポジションでもいいんじゃないか?」という路線です。

 

アメリカの属国チーム

 「うちの国はアメリカの属国だ」は日本特有の表現ではなく、世界的にもそこそこメジャーな表現です。様々な国が自国のことをアメリカの属国(51st state)だと表現しています。なにせ「アメリカ合衆国51番目の州(51st state)」というWikipediaのページがあるくらいです。

 51st stateは肯定的に使われることもあれば蔑称として使われることもあります。

51st state - Wikipedia

 

 日本語版Wikipediaと英語版Wikipediaでは取り上げられている国家群が違うため、今回は英語版Wikipediaから51st stateとされる国々を抜き出してみましょう。(日本語版ではドイツ・イスラエル・大韓民国が追加されていました)

カナダ、メキシコ、中米諸国、キューバ、ドミニカ、グリーンランド、ハイチ、フィリピン、日本、イラク、台湾、香港、アルバニア、ポルトガル、スペイン、デンマーク、ポーランド、イタリア、イギリス、ウクライナ、オーストラリア、ニュージーランド、リベリア

 ・・・このチームに所属していたほうがお得じゃなかろうか?

 

味方ではない≒敵

 現代の世界を大まかに区分すると、アメリカチーム、中国チーム、ロシアチームになるでしょう。EUは概ねアメリカチームです。トルコのようにEU寄りではあるもののチーム未所属の国もありますが、少なくとも超大国であるアメリカ・中国・ロシアの近隣諸国はどこかしらのチームに所属しています。

 中東(イラン)チームや南米(ブラジル)チームは少し規模が小さく、国際関係に与える能動的な影響は小さいことから今回は除外します。

 

 国際関係を語る上で必須の概念は「国際社会はアナーキー(無政府状態)である」ことです。

 主権国家を超える権力機構が国際社会には存在しない以上、約束の履行を迫ることも他国からの妨害や攻撃に対して反撃や回避をすることも国家自身が行う必要があります。「国家の付き合いを個人の付き合いと同一視してはいけない」と言われるのはこれが理由の一つです。

 そんなアナーキーな国際社会においては「敵か味方か」で峻別されるのが国家間の関係性であり、基本的に中立のポジションは存在しません。同じチームの味方でないならば敵です

 現代で他国から永世中立を承認されている国はスイス・オーストリア・トルクメニスタンですが、これらの国は全て徴兵制を施行して国家総力戦に備えた軍備を保有しています。その理由は簡単で、中立であること、すなわち誰にも味方しない以上、中立国にとっては他の全ての国が敵だからです。

 例としてスイスは第二次世界大戦時に連合国側・枢軸国側の双方の航空機を攻撃しています。なにせ中立である以上、どちらも敵だからです。

 

(補足1)

 国際関係での敵対は即座に殴り合うような関係ではないことは理解が必要です。たとえ敵対的な関係であろうとも経済的なやり取りは行われますし、すぐに戦争になるとは限りません。優遇や情報交換、同盟や連携など積極的な関係を構築するのが味方で、そういったことはせずに有事の際には殴り合うのが敵、というくらいの関係です。

(補足2)

 オーストリアはEU加盟国であり、トルクメニスタンはCIS準加盟国のため、実質的には中立国ではないと見なされることもあります。スイスはEUにも加盟していませんし、国連にすら2002年まで加盟していなかった堂々たる中立国です。

 

 つまるところ、属国扱いを嫌がって日本がアメリカチームを抜けるということは、アメリカの味方ではなくなる、ではなくアメリカの敵になることを意味します。

 さらには日本にとって中国チームやロシアチームは元々味方ではない、すなわち敵の関係です。

 よって日本がアメリカチームから抜けた場合、それは自主独立というよりも、3つの超大国に囲まれてなおかつ全てと敵対関係にあるにっちもさっちもいかない国が太平洋上に誕生する、だけな気がします。

 その結果がどうなるかと言えば、超大国の庇護下を抜けるには自身が超大国になる以外は無く、つまりはアメリカ・中国・ロシアのように他国へ戦争を仕掛けるような存在になるしかないのですが、そのような未来は個人的に好みではありません。

 ちなみに日本は過去にこれを1回やらかしていますので、それを参考に考えると軍事費は国家予算の8割くらいをとりあえず出費することになるでしょう。

 あ、それだと負けたのですから、もっと出さないといけません。国家予算の10割を目指しましょう。

 まあ、つまりは、なんというか、現実的ではない話です。

 

中国チームとロシアチームはなんとも・・・

 全世界と敵対するのは望ましくありませんので、アメリカチームを抜ける場合は中国チームかロシアチームに所属するのが不可欠です。

 中国チームには北朝鮮とカンボジア、ロシアチームにはベラルーシが所属しています。

 個人的な好み以外の何物でもありませんが、私はカナダやイギリスやオーストラリアや台湾や、その他自由主義陣営の居るアメリカチームのほうが良いです。北朝鮮やベラルーシと肩を並べるよりはアメリカの属国チームで肩を並べるほうが好みです。

 直截に言って、こっちの属国チームのほうがあっちの属国チームよりも豪華じゃありません?

 

結言

 少し皮肉交じりで反対意見を構築してみましたが、アメリカの言いなりが嫌な人の気持ちも分かります。日本は主権国家である以上、アメリカチームに居るからといって何もかもに唯々諾々と従う必要はありません。

 日本は同じ51st stateの仲間であるカナダやイギリスのようなポジションを目指すのが良いかなと、個人的には思っています。