「教わってないから分からない」
「聞いてないから知らない」
よく聞く言葉ではありますが、それが実際どこまで通用するかについて技術屋の感覚を述べていきます。
人によっては少し厳しい見解になるかと思います。
聞いて分かる範囲には限界がある
教育において「教えない」はもちろん論外です。教えられることは教えるべきですし、聞かれたことには答えるべきです。私なんて聞かれてもいないのに教えてしまうことが度々あり、むしろ「教えたがりおじさん」やマンスプレイニングにならないか心配しています。
教わってないことが分からないのは普通のことですし、聞いていないことを知らないのは当然です。
ただ、当たり前のことではあるのですが、それは入門レベル、教科書レベルの話でもあります。もっと具体的に言えば答えがある範囲の話です。
世の中には答えのない問題が多々あります。どこにも答えが書いていない、誰も答えを知らない、何が正解かも基準がない、そういった場合のほうがむしろ多いかもしれません。
例えば技術屋は、問題を技術や製品で解決することを日々求められます。その問題を解決するためにどのような製品をどう作ればいいかなんてどこにも書いてありませんし、誰に聞いても教えてもらえません。なにせ誰も答えを知らないのですから、教えようがありません。
辛辣な表現となりますが、技術屋の感覚からすれば「教わってないから分からない」「聞いてないから知らない」はプロのレベルでは通用しない言い訳となります。教わったことを覚える段階の学生や教わった通りにこなすことを求められるアルバイトならいいですが、教わったことしかできず聞いたことしか知らない人は少なくとも技術屋の同僚としては頼れません。
これは技術屋に限った話ではないかと考えます。ありとあらゆる事例をケーススタディで教育することは現実的ではない以上、突発的であるか日常的であるかを問わず、答えのない問題へ取り組める人が求められる職場は数多あることでしょう。
「聞いてこないほうが悪い」
さらに厳しい話となりますが、どのような仕組みやルールも、知っている人へ有利に働きます。もっと言えば、知らない人の敵ですらあります。法を犯した際に法律を知らなかったとしても関係がないように、知らないことは免罪符になりません。
上手く仕組みを活用する人は利益を得られて、ルールを知らない人は罰せられる、言ってしまえば世界は「知らないほうが悪い」ものです。
そして仕組みやルールに熟知した既得権益者からすれば、「聞いてないから知らない」はむしろ都合の良い言葉です。そういった人々は「聞かれなかったから答えなかっただけ」だと逃げ道を用意しています。「聞いてくれれば答えるのに」と述べるかもしれませんが、その本音は「聞いてこないほうが悪い」です。
これは残念ながら少なくとも不正ではない以上、是正の難しい格差です。
対策は知ること以外にありません。
結言
最後まで厳しい物言いとなってしまいますが、「教わってないから分からない」「聞いてないから知らない」は第一線の大人がすべき言い訳ではないと考えます。
特に技術屋ならば、教わったことしか分からない人には高度な仕事を任せ難く、聞いてないから知らない人にはもっとアンテナを立てて知る努力をしてもらわねばなりません。
もちろんそうではない業界や仕事も多々ありますので誰もが必ずしもそうあるべしとは考えませんが、少なくとも技術屋の感覚として技術で飯を食う人間にはそうあって欲しいです。