忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

「頭で覚えること」と「体で覚えること」は別です

 「前にも説明しただろ。なんで覚えてないんだ?一回で覚えろよ」

なんて言葉は言ったことも言われたこともないのであまり実感的には分からないですが、まあどこかで聞いたことがあるようなテンプレ的な言葉だと思います。

 

 この類の言説についてはすでに各所で散々語られてきているとは思いますが、個人的にちょっと思うところを述べていきます。

 本日は辛口気味です。

 

ドキュメントを作ればいいのに

 人が何かを覚える行為には、大きく分けて頭で覚えること体で覚えることの二種類があると考えます。

 料理を例とすれば、大雑把に次のような区分ができるでしょう。

  • 頭で覚えること:何をどの順番で入れるか、どういった調理を加えるか
  • 体で覚えること:具体的にどう調理器具を扱うか、実際にどの程度時間が掛かるか

 

 技術屋の表現で分類するのであれば、頭で覚えることは技術、体で覚えることは技能となります。

ちなみに技術に似た言葉として技能がありますが、これらは明確に区分けされています。技術は口伝や文書によって他者に伝達できるKnowledgeのことで、技能とは技術を実際に用いて作業を遂行するSkillを指します。

単純な例を挙げれば、安全運転の仕方を勉強するのが技術、実際に安全運転をするのが技能です。技術は伝承が容易で勉強によって学ぶことができ、技能は伝承が難しく時間を掛けた訓練が必要であることが分かると思います。

 

 冒頭の話に戻りますが、「前にも説明した」ということは、それは言語化できる範囲の情報、つまり技術です。

 技術屋からすれば素朴に疑問なのですが、そういった技術の部分は口頭で説明するのではなく、言語化してドキュメントの形で用意しておけばいいと思うのですが、なぜやらないのでしょう?

 

なぜ楽をしようとしないのか、それが分からない

 技術の伝承は技能の伝承に比べて遥かに省エネです。

 技術を教えるのは、複数人同時に、しかも一度用意した教材を繰り返し何度も使ってやることができます。教材を渡しておけば各自で自習させることすらできますので、最初の教材作りには時間が掛かるものの教育者はその後に過剰な労力を払う必要がありません。

 それに対して技能を教えるには一対一で、付きっきりで、時間を掛けて何度も繰り返させて教える以外はありません。技術に比べれば大変な労力だと言えるでしょう。

 

 つまるところ、技術を教えるのであればわざわざ口頭で説明しなくても教材を用意しておけば事足りるはずですし、一度作っておけば後々に楽ができます。少なくとも何度も説明する手間を省くことができるでしょう。

 教材も用意せず、口頭だけで説明して、その後に「前にも説明しただろ」なんてのたまうのは、言ってしまえば教育側の怠惰では?

 なんて、辛辣なことを思ってしまいます。

 

言語化できない技能を教えるなら、労力が必要

 「前にも説明しただろ。なんで覚えてないんだ?一回で覚えろよ」

 この言葉がもしも言語化できない技能について教育している時に出たのであれば、話は別です。

 技術を教える時よりももっと質が悪いです。

 技能を説明によって教えようとするのはあまり意味がありませんし、技能は一度で覚えられる性質のものではないのですから、ただ無理なことを押し付けているだけです。時間の浪費だとすら言えます。

 技能を伝承するのであれば根気と人間関係の構築が不可欠です。威圧的な態度をとって相手を萎縮させるようなことは、なんとも非効率的です。

 

結言

 技術を一回の説明で覚えさせたいのであれば、ドキュメントを作りましょう。

 技能を一回の説明で覚えさせたいのであれば、現実を見ましょう。

 

 

余談

「すみません、もらったドキュメント、無くしました」

 ・・・先に書類管理術を教えなかった私の落ち度だな、うん。