忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

ヘビィなテーマをなるべく軽く話してみる実験:入管法改正と特別在留許可

 昨日の記事は軽い話をすると言いつつ結局はまったく軽くないどころか説教臭い話になってしまいました。どうにも無駄に生真面目で困ります。

 記事を書くからには何かしら意味のあることやタメになりそうなことを一つは記事に盛り込みたい、そのためには事実やデータを用いて論理を積み重ねたい、さらには想定される反論や異論なども併記したい、とやっていくとあっという間に真面目な記事が完成します。私にとって軽い話というのはなかなか難しいものなのです。

 

 さて、ここで発想の逆転です。

 重いテーマを避けるのではなく、重いテーマをあえて軽く話せば軽くなるのではないか、そんな実験をしてみます。

 とりあえず思い付いたテーマが「入管」だったので、これでいきましょう。

 

 どう転んでも軽くはならんぞ、これは。

 

特別在留許可への流れの理解

 ここ数か月ほどネット上で話題になっている入管関連については、以下の記事がとても参考になりますので最初に紹介します。

 この辺りの流れを知っていると、ちょうどここ数日ニュースで話題になっていた「特別在留許可」の理解が進むかと思います。これは日本の責任的な側面もあるので怒ることはないのかなと思う次第です。

 入管法改正の時はリベラル系の方々、特別在留許可の時は保守系の方々がそれぞれSNSで怒っていたようですが、今回の流れは全体を通してみれば、そこそこ上手く折衷案を取れた結果になったのではないかなと。

 

 まず、2023年6月の入管法改正における最大の論点は「難民認定三回目以降の申請者は強制送還が可能なこと」でした。

 まあ、確かに今までは無制限だったことに比べれば相当厳しくはなるのですが、これは事実ベースで言えば世界標準よりも緩いです。イギリス・フランス・ドイツなど欧州の先進国はツーアウトで強制送還なので。

 なので入管法改正の内容自体は世界基準に近づきますので、そこまで不可思議な内容ではないかなと思います。

 そもそも日本の入管行政の課題は難民認定の申請回数ではなく、申請基準が諸外国に比べてやたらと厳しいことです。そこを議論の焦点にしないと難民認定の問題は解決しないわけで、申請回数を議論の的にしてしまったらいけなかったわけですね。

 で、なんで厳しいかと言えば色々理由はありますが、予算規模に対して申請数が多くて捌き切れておらずに入管行政が麻痺していたことが一因と言えます。

 ではなぜに申請数が多かったかと言えば、今までは明らかに難民の基準に合わない方でも関係なく無制限に繰り返し申請できていたからであり、2023年の入管法改正はそれを制限することになるので、今後は入管行政も多少余裕が出てマシになることが期待できます。

 この辺りを把握していると、リベラル系の方々は「申請回数の制限」や「強制送還」ではなく「予算不足」と「基準の見直し」と「入管の非人道的な扱い」を攻めるポイントにすべきだったと思う次第です。それは法律ではなく運用の問題です。

 

 さて、今までは無制限に難民申請をできていたので、延々と申請をしていれば外国人の方もずっと日本に滞在することができていました。ただ、それは正規の手続きを踏んでビザを取得したりしている方に対して不公平だということで今後は回数制限が付きます。

 ここで焦点となるのが今まで何度も難民申請をしてきた方々です。人によってはもう自国での生活基盤を持っていないどころか場合によっては日本でお子さんを生んでいて、お子さんは日本での生活しか経験がありません。

 そんな状況で親だけ祖国に強制送還しても子どもが困ってしまいますし、何も法を犯していない子どもを一緒に強制送還するのは大問題です。親の責任を子どもに引き継がせるような前時代的な法運用はNGです。

 今までは無制限でやっていた以上ルールに従っていたわけで、それは日本の責任でもあるので、偽造や不法入国などルールから逸脱したことをやった人以外のお子さんには特別に在留許可を出しますよ」としたのが今回の発表です。

 これは入管法改正をした以上セットで為すべき当然のことだと思うので、保守系の方々が怒るような話ではないかと思う次第です。

 もちろん人情の面から罪のない子どもを救うことの必要性を話すこともできますが、そもそもこれを認めないと法の不遡及にすら反します。だって今までは無制限に申請してOKというルールだったのですから。

 

結言

 今までは日本の法がガバガバだったので、それを世界基準に近づける。

 でもガバガバだった間に生じた問題は日本のせいでもあるわけなので、日本が責任を持って特別在留許可を出して引き受ける。

 今後はそのような問題が生じないよう、ちゃんと法律をしっかりとする。

 つまるところ6月の「入管法改正」と今回の「特別在留許可」は一連の流れで見れば双方の言い分を取り入れた妥当な解決策だと思うわけです。

 入管関係の話はどうにも党派性が強く出ている印象を受けているのですが、落としどころとしては結構考えられてるんじゃなかろうかと私は思っています。

 

 軽く話したつもりですが・・・軽かったかな?

 

 

余談

 軽い語り口で進めるためにデータを省きましたが、余談で残しておきましょう。

 各国の難民申請のプロセスを見ると分かりますが、不許可に対する控訴の機会は一度のみなのが一般的です。「三回目以降は強制送還が可能」としている日本はまだ緩いほうだと言えます。

(イギリス)Claim asylum in the UK: Overview - GOV.UK

(フランス)https://www.ofpra.gouv.fr/en/examining-my-application

(ドイツ)BAMF - Bundesamt für Migration und Flüchtlinge - Asylum and refugee protection