会社は私のことを誤解しているんじゃなかろうか。
「ちょっと行ってきて」
海外現地法人のスタッフから呼ばれたらしく、来月中に数日ほど東南アジア出張に行くことが急遽決まりました。
呼ばれたらしく、とフワフワした表現なのは、組織の上のほうで流れるようにサッと話が決まったので私が現地に行っていつどこで何をするのか未だに把握していないためです。意思決定システムと情報伝達ネットワークが壊れているような気がします。
それはさておき、まあ数日程度の海外出張は別に構わないですし、そこまで苦でもありません。海外に出るのは好きですし、読書好きの出不精なので業務命令でのお出かけ機会は渡りに船です。
また、弊社ではグローバル案件を担当する人が私を含めて一部の人に偏っていますが、その理由も分かります。海外は国内とは色々と勝手が違いますのである程度の知見が必要不可欠ですし、適当に海外へ放り込んでも成果を上げることができるグローバル人材はそこそこに希少です。
ただ、私のことをそんなグローバル人材だと会社は勘違いしているのではないか、そんな疑問が尽きません。
グローバル人材とは
グローバル人材とはそもそも何ぞやと言えば、文科省のお役人さんがグローバル人材なるものの概念を定義しています。
○ 「グローバル人材」の概念を整理すると、概ね、以下のような要素。
要素Ⅰ: 語学力・コミュニケーション能力
要素Ⅱ: 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素Ⅲ: 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー
○ このほか、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等。
出典:文部科学省『資料2 グローバル人材の育成について』
エリートのお役人さんが考えたものですので、求めているハードルがとても高いです。この要素を満たす人はとても高度な人材であり、どこへ行っても引く手あまたでしょう。ちょっと嫌味っぽく言えば”人財”です。
個人的に”人財”は「言いたいことは分かるけども言葉遊びをしている暇があるならもっと他にやることがあるだろう」と思ってしまう言葉なので、あまり使いませんが。
専門知識を体系的に学ぶことは重要だろうに
さて、我が身を振り返るに、なんというか、要素Ⅰの時点で躓いているのですが。語学力が箸にも棒にも掛からぬ程度にどうにもならないのですが。
要素Ⅱや要素Ⅲは雑巾のように絞り尽くせばなんとか滲み出てくる程度には存在する可能性がありますが、要素Ⅰは今のところどうにもなりません。読み書きはまだしも聞く話すはボロボロです。他言語どころか日本語ですら怪しいというのに。
確かに海外とのやり取りは毎日やっていますし、海外出張もこなします。
ただ、それはせいぜいが”答えられている”レベルです。目下の案件に対してなんとかかんとか弥縫策的に取り繕っているだけであり、プロとして期待に”応えられている”とは到底言えません。学習はしていますが、まだまだ商品としてお金をいただけるほどの品質を確保できていないです。
そもそもの前提として、私はグローバルでの活躍を期待されて就職した人間ではありません。専門は機械工学です。
もちろん業務として求められている以上は能う限り努力いたしますが、「はい、君はこれからグローバルな活躍を宜しくね」と転換することを求めるのはさすがに無理筋というものです。そういうのは国際学部などでグローバルな視点や知見を体系的に学んだ専門職を雇ったほうが合理的でしょう。
なんというか、ローカルな技術者にグローバルな活躍を突然期待することは、少し極論ではありますが「製品のことは技術者が一番詳しいんだから技術者が営業をすればいいんだ」とかなんとか言って技術者を安易に営業へ配置転換してしまい自社の技術基盤を崩壊させるしょうもない事例のような、そんな余計なことを考えてしまいます。考えすぎではありますが。
結言
私の売りは学習能力なので努力はしますけども、少なくとも今の時点では真っ当なグローバル人材ではありませんので、あまり期待されても困ることだけは浸透させていきます。