人が生活をしていれば必ずごみが出ます。ごみをどう処理するかは古代より社会の問題でしたが、近現代では人口の増加や生産力の向上によってごみの量が増加し、かつてよりも遥かに大きな問題となっています。
そのごみ処理問題について時々見かけるのが「日本はごみの排出量が多い」という見解です。そうなのかと単純に思っていましたが、ふと実際の数値が気になったため、今回は日本のごみ処理を世界と比較したデータを見てみます。
もちろんごみ処理問題は単純に相対化する問題ではなく、他国よりも多かろうが少なかろうが出来る限り改善すべき問題であることには間違いありません。ただ今回は「日本はごみの排出量が多い」という命題が真であるかを確認することを目的とします。
Global Waste Index(国際廃棄物指標)
Global Waste Index(国際廃棄物指標)はSENSONEOというヨーロッパの企業が発表している指標です。各国のデータをいくつかの項目で分析してスコアを出し、どれだけ廃棄物を効果的に処理しているかに関するランク付けを行っています。データセットは世界銀行のWhat a Wasteからの引用です。
◆Global Waste Index 2019 | SENSONEO
Global Waste Index2019ではOECD内の36ヵ国を対象に分析しています。スコアの内訳を見る前にまずは最終スコアに基づいたランクを見てみましょう。最終スコアは0~100点の範囲で算出されており、0が悪く、100が良いスコアです。少しややこしいですがランクが下位の方がごみ処理を適切に行っている国ということです。
日本(Japan)は36ヵ国の分析において3番目にスコアの良い国という評価でした。日本よりも適切なごみ処理を行っているのはスウェーデンと韓国のみであり、比較で言えば日本はそこまで悪いごみ処理をしているわけではないという結果です。
評価項目とスコア
次は具体的なスコアの内訳を見ていきましょう。スコアの評価項目は6つです。人口を考慮して、全て年間での一人当たりで換算されています。
- 一人当たりの廃棄物量
- 一人当たりのリサイクル量
- 一人当たりの制御された焼却量
- 一人当たりの埋め立て量
- 一人当たりの不法投棄量
- 一人当たりの追跡不可能な廃棄物量
【一人当たりの廃棄物量】
日本は一人当たり346kgの廃棄物を発生させており、これは36か国中3番目に少ない量です。1位はポーランドの315kg、2位がチェコの344kg、逆に最下位はアメリカの809kgとなります。廃棄物量に関して言えば日本は優等生と言ってよさそうです。
【一人当たりのリサイクル量】
日本は一人当たり71kgのリサイクルを行っており、これは36か国中30位とかなり下に位置します。1位のアイスランドは366kg、2位のドイツが303kgであり、これらリサイクル優等生の国と日本を比べれば4倍以上の差です。チリやトルコ、ニュージーランドのように下位の国はそもそもリサイクルをほとんど行っておらず0~1kgですので、補助金を出してまでリサイクルをしている国としては日本の成績ははっきり悪いと言えるでしょう。
【一人当たりの制御された焼却量】【一人当たりの埋め立て量】
日本は一人当たり278kgの廃棄物を焼却しており、これは36か国中3位です。1位のデンマークが415kg、2位のスイスが340kgに続きます。また日本は一人当たり4kgの廃棄物を埋め立てており、これは36か国中32位です。1位はニュージーランドで727kg、2位はカナダで511kgです。
この2つの項目についてはどう処理するかの傾向を示しているだけであり、ランク自体はそこまで意味を成しません。但しスコアとしては焼却よりも埋め立てのほうが厳しい点数が付けられています。
【一人当たりの不法投棄量】
チリ、メキシコ、トルコを除いた33ヵ国は全て一人当たり0kgです。トルコは一人当たり176kgの不法投棄量と他国に比べて多く、これがトルコの最終スコアを0点に落としている一因となっています。
【一人当たりの追跡不可能な廃棄物量】
15か国で追跡不可能な廃棄物があり、日本を含めた残りの21か国は一人当たり0kgです。下位から順に、ラトビアが68kg、イタリアが54kg、エストニアが46kgとなっています。
まとめ
効果的なごみ処理をしているかを示すランクにおいて、日本はOECD内の36ヵ国のうち3番目に優れたスコアを取っています。内訳としてはごみ自体の排出量が少なく、焼却処理が充分に行われていて、不法投棄や埋め立てが少ないことが理由です。リサイクルの量が少ないことが課題と言えます。
日本は一人当たりの廃棄物量も36か国のうち3番目に少なく、「日本はごみの排出量が多い」という命題は偽であることが分かりました。もちろんだから改善する必要は無いという意味ではなく、さらに高いスコアを取れるよう努力すべきであることは間違いありません。
日本よりも効果的なごみ処理をしている国としては韓国とスウェーデンがあります。どちらの国もリサイクルが活発なことが好スコアの理由です。熱力学的に言えばマテリアルリサイクルが最適とは限らないのですが、より良いスコアを目指すとなればさらにリサイクル量を増やすことが日本の今後すべきこととなります。