昨今社会問題化しつつあるカスタマーハラスメント。
カスタマーハラスメントとは顧客による著しい迷惑行為を指す言葉です。迷惑行為とは脅迫や暴言といった言葉によるものに限らず、不当な要求やクレーム、物理的な暴行として現れることもあります。
カスタマーハラスメントをする人の気持ちは個人的にさっぱり理解できません。
今回はそんなカスタマーハラスメントに関して少し述べていきます。
日本に限らず、世界的な問題
日本語圏のコミュニティやSNSを見ていると、カスタマーハラスメントは日本で過渡的に生じている現象のように思えます。実際『カスタマーハラスメント』『customer harassment』でグーグル検索しても日本語の情報ばかりです。また、「お客様は神様です」と絡めて日本の文化や慣習に原因を求める声も見かけます。
ただ、日本語以外でカスタマーハラスメントの話を見かけないのは単純で簡単な理由があります。
それは、カスタマーハラスメントが和製英語だからです。
英語では顧客による暴言や暴行をabuse from a customerやcustomer abuseとしています。カスタマーハラスメントを日本語圏でしか見かけないのはそんな大したことのない理由です。
実際には『customer abuse』で検索すれば分かるように、カスタマーハラスメントは世界中で問題となっています。
日本も含めて、いくつかニュースを例示してみましょう。
【日本:厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf
労働者調査では、全国の企業・団体に所属する20~64歳の男女労働者のうち、過去3年間に勤務先でカスタマーハラスメント(顧客等からの著しい迷惑行為)を一度以上経験した者の割合は、15.0%であり、
【世界:ILO、Lloyd's Register、Gallup】
Global Study: 23% of Workers Experience Violence, Harassment
Workplace violence and harassment are widespread phenomena around the world.
職場での暴力や嫌がらせは世界中で蔓延している。
The 23% of employed adults who said they had experienced at least one form of violence and harassment translates to nearly 750 million workers worldwide. Those who had experienced each of the three main forms of violence and harassment also number in the hundreds of millions:約7億5000万人に相当する23%の労働者が、少なくとも 1 つの形態の暴力やハラスメントを経験したと回答した。3 つの主な形態をそれぞれ経験した人は数億人に上る。
Psychological violence and harassment -- including insults, threats, bullying or intimidation -- was the most commonly reported form among men and women. Globally, 18% of employed people, representing almost 590 million workers, said they had experienced it in their working lives.
侮辱、脅迫、いじめ、威嚇などの心理的暴力とハラスメントが男女間で最も多く報告されている。世界では労働者の18%が仕事中にこれらを経験したと回答した。
Almost one in 10 workers worldwide (9% or nearly 280 million) said they had experienced physical violence and harassment, such as hitting, restraining or spitting.
世界中の労働者の9%、ほぼ10人に1人 が、殴る、拘束する、唾を吐きかけるなどの身体的暴力やハラスメントを経験したと回答している。
Women were more likely than men to report experiencing sexual violence and harassment, such as unwanted sexual touching, comments, pictures, emails or requests. Overall, 6% of employed people (more than 200 million) had experienced sexual violence and harassment, including 8% of women and 5% of men.
女性は男性よりも望まない性的接触や言葉、写真や電子メール、要求などの性暴力やハラスメントを受けたと報告する傾向が高かった。全体として労働者の6%が性暴力やハラスメントを経験しており、その内8%が女性、5%が男性だった。
【オーストラリア:労働組合】
1000 fast food workers responded to our survey in December 2018.
2018年12月に1000人のファストフード従業員がアンケートに回答した。
80% of respondents said they have experienced abuse from a customer at work in the last 12 months.
回答者の80%が、過去12ヶ月間に職場で顧客から虐待を受けた経験があると回答した。
41% of respondents are 17 years old or under.
回答者の41%が17歳以下。
87% of respondents experienced verbal abuse or aggressive behaviour.
回答者の87%が暴言や攻撃的な言動を経験している。
28% of respondents experienced physical abuse, such as punching, hitting and pushing (or threats of physical abuse including death threats and threats with a weapon) by a customer.
回答者の28%が顧客から殴る、打つ、押すなどの身体的虐待(あるいは殺害予告や武器による脅迫を含む脅迫)を経験している。
32% of respondents said incidents of customer abuse or violence involved behaviour that was sexual in nature.
回答者の32%が顧客による虐待や暴力に性的な言動が含まれていると答えた。
44% of respondents said the abuse they experience has impacted on their mental or physical health.
回答者の44%が経験した虐待が精神的または身体的健康に影響を与えたと答えている。
カスタマーハラスメントの問題を解決するには現場だけではどうにもなりませんので、各種の仕組み作りや法整備を進めるために様々な機関が調査と対策立案を進めています。
結言
最後のオーストラリアの例は調査対象が少し偏重していると思われますが、いずれにしても横暴な顧客による暴力や嫌がらせなどのカスタマーハラスメントは世界的な問題となっており、その解決策が模索されています。
ハラスメントの線引きは難しいように見えて、実のところ比較的明白です。
他者の人権や人格を侵害しないこと。
それが絶対的なルールであり、是非を判断する際の線引きとなります。
そして当たり前のことですが、サービス業に従事する労働者は人権と人格を尊重されて然るべきただの普通の一個人です。対価を貰って労働に従事している人間であり、人権や人格を侵害されることは彼らの職務でもなければ彼らの給与にだって含まれていません。
見ず知らずの人同士でも心配や不安なく互いに尊重し合える関係を構築できることこそが成熟した社会ではないかと私は考えます。