忘れん坊の外部記憶域

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目標設定と精神論・根性論~目標設定に必要か否か

 「目標を立てないと人はモチベーションが上がらない」

 「高い目標を立てるから人は頑張って成長できる」

 まあよく聞く言説です。言いたいことは分かるのですが、目標達成の可否はモチベーションによって決まってもいいということなんでしょうか。

 人は常に最高のモチベーションを保てるわけがないので、

 「今日は気が乗らなかったので納期に間に合いませんでした、サーセン!」

といったことが許されるのならばいいのですが、実際はそうではないでしょう。

 

 別に個人のレベルであれば目標が達成できようができまいが大した影響はありませんので気分次第でもいいでしょう。

 しかし企業や組織、国家といった集団の目標はそれでは困ります。組織運営には計画性が必要であり、その計画を立てる前提条件の目標数値や予算が気分次第じゃあどうにも判断しようがありません。

 もちろん精神論・根性論が必ずしも悪いわけではありません。やる気やモチベーションは成果を伸ばし人を成長させるためには必要不可欠な要素です。

 悪いのは”どのような目標でも精神論を持ち出す”ことなのです。

 

目標の定義

 そもそも目標という言葉はとても多義的ですのでまずは意味を整理しましょう。

 日本語は時制が適当に使える便利な言語ですが、英語ははっきり分かれていることを思い出しましょう。

 単純現在、現在進行、現在完了、過去、未来完了進行・・・うっ、頭が…

 まあとりあえず、言葉の意味をはっきり整理する際は英語で考えると明確さが増します。というよりも目標の数値根拠やら具体性やら論理性とか精神論とかの議論がごちゃごちゃになっているのは議題の時間軸が明確になっていないからです。

 

 英語で目標に関連する言葉はAim, Purpose, End, Goal, Object, Objectiveあたりが該当します。たくさんありますね。

 【Aim】とは銃や矢でターゲットを狙うことから派生した言葉で、短期的・集中的な狙いを意味します。まさに目先の何かを目標として行動する時に用いる言葉です。目標というよりは【意図】のほうが適切です。

 Purpose】は望む理由や意味、決意という言葉ですので、目標というよりは【目的】と訳したほうがいいでしょう。

 End】は論理的な必要性から生まれる時間的に最後の地点を意味する言葉で、明確な計画に基づいて長期的に到達すべき最後の着地点を意味します。日本語で言えば必達目標】です。

 Goal】はEndよりも少し近いけどもやはり長期の目標を意味します。明確さ・合理性よりも努力や苦難といったニュアンスが強い表現です。努力目標】と訳せるでしょう。

 Object】もEndに近い言葉ですが、個人的な願望や必要に適用されることが多いです。そのまま【願望】と訳せます。

 Objective】は固い表現で、具体的ですぐに達成可能と思われる目標】を意味します。政治政策やビジネスで多く使われるフォーマルな言葉です。

 

 さて、ビジネスで必要な目標とはどの言葉が該当するでしょうか。Objectは個人的なものですので除外して、実は他の全てが該当します。

つまり、

 目的(Purpose)に基づいて、

  達成しなければいけない必達目標(End)を設定し、

   長期的な努力目標(Goal)を設定した後に、

    そこに向けた目標(Objective)を立てて、

     意図(Aim)した行動をする。

 "目標"という言葉に対して人それぞれ理解や使い方に違いがあるのは、これらを全部まとめて”目標”という1単語で使っているからです。分けて考えましょう。

 

 適当な事例として、夏休みに大学生が北海道から沖縄まで自転車で走るとしましょう。青春の1ページを刻むことが目的(Purpose)です。

 必達目標(End)は夏休み中に沖縄まで到着することです。学校が始まってしまうと困るという必達せざるを得ない理由があるため、具体的かつ期限を決める必要があることが分かりやすいですね。

 努力目標(Goal)はチェックポイント的なものです。8月上旬には仙台に寄って牛タンを食べるなり、9月中旬までに広島でお好み焼きを食べるなりが設定されます。これは個別に見れば必達目標(End)の達成には絶対的に必要なものではありません。計画に遅れが生じていたら省略したり強行したりと多少柔軟に動かせる目標になります。よって具体性はさほど重要視されません。

 目標(Objective)は今日中に旭川まで行くとか、今週中に青函トンネルを抜けるとかになります。必達目標(End)から逆算してここまでに到達していないと物理的に必達目標(End)の達成が不可能になる短期間のものが目標(Objective)です。よって具体的かつ確実に達成できる目標となるように設定されなければいけません。

 意図(Aim)はさらに目先、どのくらいの力で自転車を漕ぐか、昼食はどこまで行ったら食べるか、飲み物はどこで補充するか、というくらい目先の話で、今すぐにでもアクションが必要なものが該当します。目先の行動ですので苦労して考える必要すらなく具体性があります。しかし修正は容易なので、目標(Objective)のために変えることもあります。

精神論・根性論の是非

 さて、これらの目標のうち精神論や根性論が必要であったり、反対に適用してはいけないものはどれでしょうか。

 まず大枠の目的(Purpose)には精神論があってしかるべきです。まさに最初の動機づけに関するところですので、気持ちの問題が多分にあります。やるぞ!という意思が無ければ定まりませんので精神論もドンと来いというわけです。

 次に必達目標(End)、ここは具体的かつ必達目標のため精神論の立ち入る隙はありません。物理的にできないものはできないので、とにかく合理性と具体性が必要です。

 「来週地球に隕石が落ちるから月に逃げよう。」

とはならないですけど、もしなったときに、

 「来週までにジャンプして月まで飛べるようにしよう。」

なんて必達目標(End)を立てたって意味が無いことは分かると思います。月に逃げるためには恐らく計画されるであろうスペースシャトルでの避難計画を調べて搭乗員の選別に受かるためには何をすればいいか、と具体的に動かなければいけません。動機づけに必要な精神論は目的(Purpose)で充分であり、必達目標(End)には不要です。

 次に努力目標(Goal)、これには具体性が乏しくても修正できるため精神論の余地があります。努力目標という表現ですので、ちょっとストレッチして高く見積もったりチャレンジしたっていい目標になります。人を成長させるためには努力目標(Goal)を柔軟に設定することが必要です。

 次に目標(Objective)、これは必達目標(End)へ到達するために必達が求められる短期間での目標のため精神論を用いてはいけません。とにかく合理的かつ具体的に設定されなければいけません。東芝の不正会計問題のように”3日以内に120億の売上増”なんて意味不明な目標を立ててはいけないのです。目標(Objective)こそは最もSMARTの法則を適用すべき目標です。

 最後に意図(Aim)、ここは具体的な目標というよりは具体的なアクションに該当するものですので若干の精神論が必要です。トラブルが起きたりして目標(Objective)の達成が困難になりそうであればなんとか修正して頑張る、といったことをしなければいけないため、精神論でやる気やモチベーションを奮い起こす必要があります。

 つまり、精神論が必要になるのは具体的に必達目標(End)目標(Objective)を設定する「前」と「後」です。目的(Purpose)を定める際には精神論が必要ですが、具体的でなければいけない必達目標(End)や目標(Objective)を設定する時には精神論を用いてはいけません。目標達成に失敗する組織の多くはここを間違えています。

 しかし努力目標(Goal)を達成してさらなる進捗や成長を狙うのであれば精神論が必要になります。精神論は使いどころを間違えないようにしましょう。

精神論・根性論は必要ではあるが・・・ 

 結局最後に差が出るのは精神論・根性論であることは事実です。同じような能力を持った人間で差が出るとしたらその物事をどれだけ続けられたかであり、それは根性以外の何物でもありません。そこは否定しようがない事実ですし、だからこそ根性論は否定できません。ただ言っているように”最後は”根性であり”最初に”根性を持ち出してはいけないというだけの話です。向かうべき方向を定めて具体的に計画する段階での根性は邪魔なだけです。

 

余談

 「努力は無駄にならない」なんて根性論もありますが、やはり適用されるのは個人的な範囲までです。明日は数学の試験だというのに全力で国語の勉強を努力したって、そりゃ国語の能力が伸びますので無駄にはなりませんが、数学の試験では点数を取れないでしょう。結果を出すのであれば合理的かつ確実で正しいやり方を用意して、努力する方向を整えてから根性を出してやりましょう。