忘れん坊の外部記憶域

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属人性の要否

 属人性の要否については様々な書籍やサイトがありますが、今回は簡単に属人性の内容を整理してみます。

属人化・属人性とは

 属人化とはある業務が特定の人にしか分からない状態になることを示します。そのような仕事は属人性を持っており、属人化した状態とされます。

 標準化・マニュアル化することが出来る仕事は属人性が低いと言えます。反対に個人の能力に依存する仕事は属人性が高いことになります。例えば画家やスポーツ選手、俳優のような仕事は属人性が高い仕事であり、配達員や交通整理、接客販売スタッフのような仕事は属人性が低い仕事です。

 少しややこしいのですが属人性は仕事の難易度には比例しません。例えばお医者さん、医療自体は誰にでもできる仕事ではありませんが医療免許を持つ人であれば代わりに仕事をすることができます、つまり属人性は低いということになります。それに対して映画監督はどうでしょう。ある監督の作風は決して他の監督では出すことができません。代わりにできる人がいないことから属人性が高いということになります。だから続編作品で監督を変えるのは本当にやめてください・・・

 つまり属人性が高いということは仕事の難易度が高いということではなく代替性が低いことを意味します。

属人性が高いことのデメリット

 仕事の属人性が高いことにはいくつかのデメリットがあるため、企業の将来や安定を考えて経営者は属人性を低くするように望む場合が多々あります。

 最大のデメリットはキーマンが抜けた時に仕事が止まることです。交通事故等はレアケースですが、世の中何があるかわかりません。交通機関の遅延や休暇などキーマンが一時的にでも抜ける自体は日々発生します。そのような場合でも遅滞無く業務遂行ができる状態を経営者は望んでいます。

 また仕事の属人性が高いと他の人が介入することが無いため、ノウハウや経験、その人が学んだ知識といったナレッジが共有されなくなってしまいます。ほとんどの組織において実際に成果を上げているのは一部のスタッフの優れた行動です。そのスタッフが持つナレッジを共有することができれば組織全体の成果を底上げできるようになります。このようなことを「暗黙知」を「形式知」化するといいます。属人性が高いと形式知を増やすことが難しくなります。

属人性の課題

 では全ての仕事から属人性を排除すれば良いのでしょうか?残念ながら属人性を排除することにもデメリットもあります。

 属人性が低い仕事とは代替性が高い仕事であり、意地悪い表現に言い換えると「誰でもできる仕事」です。「誰でもできる仕事」は競合他社でもできるのです。企業が競合他社に勝り利益を出すためには他社よりも優れた優位性のある商品を販売する必要があります。属人性の排除はその競争優位性を損なう要因になります。

 また属人性の課題は標準化・マニュアル化の課題とも被ります。誰もが優れた先生やコーチになれるわけではありません。どれだけ優秀な営業マンでもその営業ノウハウをマニュアル化するには別の適性が必要になります。能力100の人が50のマニュアルを作った場合、次に学んだ人の能力は50までしか上がりません。その人がさらにマニュアルを作れば25まで下がります。そうして仕事の質は漸進的に劣化していくことになります。

 さらにどれだけマニュアル化に関する適性があったとしても100%をマニュアルに落とし込むことはできません。営業の交渉1つ取っても、間の取り方や会話の運び方、表情、抑揚、視線、恰好など交渉術に関する事柄は無数にあり、その適否も千差万別、状況によりけりです。よってどうしてもマニュアルは完璧なものにはなり得ません。

属人性の課題を解決するには

 属人性排除のジレンマを解消する方法が一つあります。能力のある人間にマニュアル通りの仕事をさせないことです。つまりは属人性を持たせるということになります。

 最も顕著な事例がアメリカや中国のIT企業です。最先端の技術を持つ人間を数千万円、数億円というような高給で雇っています。これは究極の属人化と言えるでしょう。このような企業は属人性が高いことによるリスクを受け入れて属人性が低いことによるデメリットを排除することで、強力な優位性を獲得しているのです。

結論

 仕事の内容やどのように市場で競争をするかという戦略次第では属人性が必要になります。マクドナルドのクルーにはマニュアル通りの接客を求めているため属人性は不要です、どこでも誰でも同じサービスを受けられる状態が望ましくあります。対して研究開発職や企画職などは他社との差別化を図るためにも属人性が必要です。