忘れん坊の外部記憶域

主に時事やビジネス、政治経済や興味を持ったことについて書き散らしています。

戦犯の区分に関する情報の整理

 先日若い子と政治に関する雑談をしていた時に戦犯に対する誤解があることを知りました。各所でまとめられている内容ではありますが備忘録として、戦犯について簡単にまとめてみたいと思います。

 戦犯について「どう思うか」は人それぞれであるため、本記事では戦犯の善悪や赦免についてなど価値基準に関わる内容については取り扱いません。あくまで戦犯そのものについてのみを整理します。

戦犯とは

 戦争にはルールがあります。狭義では交戦法規、広義では戦時国際法と呼ばれるものです。これらに違反することが戦争犯罪(戦犯)であり、違反した者が戦争犯罪者、戦犯と呼ばれます。

 現代の日本では概ね極東国際軍事裁判(東京裁判)において犯罪者として裁かれた人を指す言葉として定着していますが、実際はそれに限定されず戦時国際法を違反したもの全般を指す言葉です。また慣用句として敗北の責任を作った人を指す言葉としても用いられることがあります。

戦犯の区分について

 戦争犯罪自体は古くから制定されていましたが、従来の戦争犯罪に関する条約等では被害者の権利を保護し切れないと考えた連合国は、第二次世界大戦後のニュルンベルク裁判において定められた国際軍事裁判所条例(ニュルンベルク原則)より、戦争犯罪の定義を3つの区分とすることを新たに決めました。

a項:平和に対する罪

 戦争の企図、計画、準備、開始、遂行といった行為

b項:戦争犯罪

 一般人の殺害や虐待、強制労働など交戦法規や慣例に反する行為

c項:人道に対する罪

 国内外を問わず非人道的、政治的、人種的、宗教的な迫害行為

 昔の考えでは戦争は国家によって行われるものであり指導者個人の責任は問われないものでした。しかし戦争は国家という抽象的な存在ではなく政治指導者のような個人が行うものであるという考え方が主流となってきたことから、戦争犯罪を個人に帰属させるためにa項の平和に対する罪が定義されました。

 また当時の条約では同じ国籍を有する被害者を保護できないと考えられており、実際トルコによるアルメニア人虐殺を法的に裁くことができなかったというような歴史的な経緯があったことから、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)を裁くためにc項の人道に対する罪が正式に定義されました。参考までに日本にはこのc項によって裁かれた人はほとんどいません。しかしナチスドイツには多数居ることが、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺を裁くための定義付けであったことの傍証と言えます。

 a項とc項は第二次世界大戦が始まった後に制定されたため、事後法であり法の不遡及に違反しているという批判もあります。これについては英米法と大陸法の違いなど学者でも解釈が分かれていることであり、明確に断定できるものではありません。

区分の違いに関して

 日本語ではそれぞれの区分がA級、B級、C級と訳されているため戦争犯罪の程度を示しているように思われますが、元々の区分はclass A, class B, class Cという表現です。直訳すれば前述したようにa項、b項、c項となります。また極東軍事裁判所条例では(イ)、(ロ)、(ハ)という分類で分けられていました。

 つまりこの項目(class)自体には程度を示す意味はありません。単純にグループ分けされているだけの意味です。学校で2年3組よりも2年2組のほうが偉いということはないように、A級、B級、C級にも罪の上下はありません。戦争指導者を対象としたA級は確かに目立ちますが、虐殺によってC級戦犯となった人のほうが悪辣であるという考えの人もいるでしょう。従来の戦争犯罪であるB級も同様です。

 また2002年に発行された国際刑事裁判所規程では以下の罪が対象犯罪とされています。

 (a)ジェノサイド罪

 (b)人道に対する罪

 (c)戦争犯罪

 (d)侵略の罪

 過去の国際軍事裁判所条例とは並び順が異なりますが、つまりは同様にアルファベットは罪の程度ではなく分類としての意味しか持っていないことが分かります。

A級戦犯に対する誤解

 先日雑談をした若い子は、A級はBC級よりも悪い、A,B,CのAなのだから、と言っていました。これについては翻訳が悪かったのではないかと愚考します。A級、B級、C級と訳して並べれば程度を示しているように感じてしまうのは自然です。ただ実際は罪の程度を意味していないことから、A級のほうが悪いというのは誤解だということを知っておく必要があります。別にA級の戦争指導者を擁護したいというわけではありません、戦争指導者を特に悪いと思う人がいるのは個々人の自由でしょう。ただA,B,CのAだから一番悪いというのは勘違いだというだけの話です。

余談

 国際刑事裁判所の基準で言えば侵略の罪は(d)なのでD級戦犯となりますが、言葉にすると中身は変わらないのに急にA級戦犯から格が下がったように見えてしまいますね。やはり「級」という翻訳が悪いです。

余談2

 私は戦争というか暴力全般ですがそういうのが大嫌いなため、不定期に戦争、暴力、善悪に関する記事を出しています。このブログは私の考えたことや学んだことをまとめておくブログであり、私はよく戦争や暴力について考えたり勉強するからです。つまりは病気と同じです。成人病に罹りたくない人は成人病の原因を調べて予防するように、私は戦争や暴力の原因を調べて予防したいと考えています。