忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

タマゴが先か、ニワトリが先か~新製品の開発における課題

 ヒヨコが先でしょうか、それともニワトリが先でしょうか。

 もちろんヒヨコです。

 ・・・開幕ボケてますが、新製品の開発について一応真面目な話をします。

新製品開発におけるタマゴとニワトリ問題

 昨今のグローバル化による市場激化と競合の増加、不安定な景気や世論変動の高速化といった状況から、企業にはかつてのように下手な鉄砲も数打ちゃ当たるといった戦略を取れるほど体力が残っていません。よって多くの経営者は新製品を開発する部門に「確実に売れる製品を作れ」と命令をするような状況になっています。

 しかし当たり前の話ですが、何を作れば売れるかを確実に当てることなんてできません。そんな預言者や予知能力者が世の中には存在するかもしれませんが、まあ少なくとも市井の企業には勤めていません。いたとしてもなんか凄い秘密の政府機関とかでしょう。

 かつては下手な鉄砲ということでいくつか作ってみて、顧客からフィードバックを得ることで売れるものを考えていました。色々試してみて、顧客が「良いねこれ、完成したら買うよ」という製品を作ればいいビジネスのサイクルができたわけです。今時の表現をすればリーンスタートアップです。

 現代ではそんな試作をする予算もフィードバックを得る時間もなかなかありません。世の中はそれほどまでに高速化しています。ソフトウェアやデジタルサービスであれば最悪サービス後にアップデートをかければいいと思うかもしれませんが、競合の量を考えると最初にコケて顧客を手放してしまえば再度集客するのは大変でしょう。アップデートをかけられないハードウェアや機械はなおさらです。

 顧客に紐づいたビジネスであればアジャイルやDevOpsのようにフィードバックを得ながら進める方法も検討できます。しかし市場に製品を投入するタイプのビジネスではそういった方法はできません。

 また現代は知財戦略も厳しくなってきており、下手に市場にプロトタイプを出してしまうと関連特許を奪われる危険もあります。それを防ぐためには事前に特許を固めておかなければいけず、それがプロトタイプ投入のコストアップと遅れに繋がっています。

 こんな状況で発生するのが営業や企画・マーケティングといった市場に関連する部門と設計・開発部門との衝突です。長いので企画と開発に省略します。この衝突がまさにタマゴとニワトリ問題となります。

 企画「売れる製品を作れ、それを売ってくるから(タマゴを先に作れ)」

 開発「売れる製品情報を持ってこい、それを作るから(ニワトリを先に教えろ)」

 企画としてはプロトタイプも無しに市場の反応を得ることはできないのでまずはタマゴが欲しい、しかし開発としては売れる製品しか作ってはいけないと厳命されているためまずは売れるニワトリの情報が欲しい。どちらかが進めないと動けないのにどちらも動けないというジレンマです。

タマゴとニワトリよりも必要なこと

 このジレンマ、いや、経営を入れてトリレンマですが、これを打ち崩すには現場の力ではどうにもなりません。どちらもタマゴかニワトリが無ければ動けないのですから。

 変わる必要があるのは経営側です。

 つまり「確実に売れる製品を作る」という幻想を捨てなければいけません。そんなものは経済が発展していてまだ物が不足している国や時代でしか通用しない考えであり、現代に適用できるものではありません。やるべきなのは如何に低コストでリーンスタートアップを回せるか、顧客と協業して立ち上げを早められるか、そしてそういった人材をどう確保・育成するかです。

 「確実に売れるものを作れ」と”言うだけ”ならばそこらの中学生にだって言えます。経営陣の仕事はそのためにどう経営リソースを分配するかを決断することです。企業体力が衰えているのであれば、何を選択し、どこに集中するかを示さなければいけません。

 開発が遅い、売れる製品ができない、それは現場の企画や開発の問題ではなく、経営の責任なのです。売れるものだけ作れだなんて世迷言を言って現場の手足を縛っている場合ではありません。いや、もちろん経営リソースが適切に割り振られている場合は現場の責任ですが。

 

 何かにつけて発生するタマゴとニワトリ問題、このジレンマを解消するには、前提となる考えをぶち壊す以外に解決方法は無いのです。