アメリカのトランプ大統領が推し進める関税政策に関するニュースを日々見かけます。
これに対してアメリカ国内からの批判が高まるのは妥当なことでしょう。関税は自国内産業の保護として機能しますが同時に対象産業以外の支出を増大させます。要するに間接消費税の一種であり、基本構造は補助金と類似するものです。全体から徴収して一部へ再分配することは相対的には不平等であり、国内から不平の声が上がるのは自然なことだと言えます。
国際的な非難が高まっているのは、まあノリと勢いかと思います。相当特殊な資源物品でない限りアメリカへ売り難いのであればアメリカ以外へ売ればいいだけの話ですので、他国からすれば本来そこまで致命的な問題ではありません。関税で損失を被るのは生活物資の高騰が見込まれるアメリカ国民が主となります。
もちろんこれは経済的な理屈であり、政治的な側面からすれば怒りはごもっともです。友好国からすれば友好的な態度を示せと思うのは当たり前のことでしょう。
関税単独で見ると意図が分かり難いですが、これは政府効率化省を新設して行政規模の縮小を図っていることと地続きです。要するに今回の共和党はアメリカの経常赤字を問題視しており、国家の支出を問題視しているのだと分かります。
もちろんそのための施策が適切かどうかは別として。
自由市場の存在意義
個人的に関税は筋が悪いと思いますし、もう少し政治的正当性に配慮すべきだとは思いますが、ただ、中国による自由市場の歪曲にどう対処すべきかの一つの解だとは思います。アメリカの関税政策は誰もが承知の通り経済ではなく政治に属するものです。よって経済的不合理性を問うてもあまり意味がありません。
中国による自由市場の歪曲は何も偏見的なものではなく、何年も前から様々な機関による報告が挙げられています。企業への莫大な補助金、様々な税還付や減税措置が観測されており、それによるダンピングが自由市場を著しく歪めていることはすでに周知の事実です。
中国製品が安価である理由は、かつては人件費のみで説明が付きましたが現在ではそうではありません。地域差は著しいものの中国人の一部はすでに先進国並みの収入を得ています。
それでも中国製品が安価なままであるのは補助金や税制優遇が大きな理由となります。製品価格に本来乗るべき研究開発費や設備費が外部からのお金で一部賄えていることが理由です。
民主主義国家の政府は国民の雇用や生活に配慮した政策が必要であり、企業は工場一つ建てるにも大きな設備投資を進めるにもあれやこれやと手を回してステークホルダーの了承を取る必要があります。また冒頭で述べたように極端な補助金は関税と同じく不平の声を生むことから派手に実施することはできません。
対して中国では住民を命令によって移住させ、補助金等による大規模開発を行うことができます。これは自由市場からすれば許容できかねるレベルの介入に他なりません。
自由市場の維持とは、何も原理主義的な信念や経済合理性、スポーツマンシップや潔癖さのために行われるものではなく、人々の幸福を追求する上で必要なものです。自由市場が歪むことによる独占や寡占は貴族と農奴のような現代の比ではない経済格差と停滞をもたらすものであり、反対に自由市場の維持は社会福祉の最大化となります。
その点からして、自由市場への過度な介入や歪曲は許容されません。それは世界の人々の幸福追求権を侵害することと同義です。そして国家の存在意義が「国民の生命財産を守ること」である以上、各国は中国による自由市場の歪曲に対して何らかの対策を示す必要があります。
結言
中国製造2025で示されたように、中国は今後20年以上規模の拡大を続けていくことが公言されています。よって今後も中国による自由市場の歪曲が続くと考えてよいでしょう。
その良し悪しは人それぞれ異なる見解を持つでしょうが、少なくとも各国政府はそれに対する施策を検討して自国民の生活と福祉へ配慮しなければなりません。
少なくともトランプ大統領の関税政策を批判するのであれば、類似の手法をもって自由市場を歪めている中国も批判される必要があります。中国の補助金・税還付は良くてアメリカの関税は悪い、中国が自国産業を保護することは許容されてアメリカは許容されない、そういったダブルスタンダードはただの好悪に過ぎず、公正ではありません。
もちろん関税がベストかどうかはなんともはや、何かもっと良い方法があるといいのですが。中国はWTOの勧告も無視しているので、なかなか正攻法は難しいところです。