忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

アメリカ関税問題を語る上での中国の必要性

 

 アメリカ関税問題の根底にあるもの。

 

根底の問題

 私の専門ではないため経済関係の話題を当ブログではあまり取り上げていませんが、昨今のアメリカ関税問題と中国の経済を絡めた話は幾度か取り上げてきました。

中国の経済的脅威とアメリカの関税政策に関する所感

国家安全保障の観点と、手段の誤りについて

中国における自動化の強みは継続力にある

 

 ニュース系のメディアでこれらを合わせて取り上げたものはあまり見かけませんが、9月8日の世界経済評論IMPACTで同様のことが取り上げられていたので紹介してみます。

 要約させていただくと、次のような分析です。

■中国の過剰工業力が世界経済の歪みの根源。実質的な製造業シェアは約4割に達しているが家計消費のGDP比が低く、国内消費が弱いため輸出依存が高まり、供給過剰と国内外にデフレ圧力をもたらしている懸念がある。

■米国の関税政策はその副産物。恣意的で一貫性に欠けた政策だが、中国の一極支配に抵抗するための第一ステップとして位置づけられると考えられる。

■為替の歪みも影響している。人民元高へ誘導するのは逆効果の可能性があり、関税と管理貿易が現実的な対抗手段。

■中国の工業力への依存を減らすには長期的な持久戦が必要。国際戦略や通商政策は、中国の経済構造の歪みを前提に再設計すべき。

 

 私はこれらに概ね同意です。当ブログの過去記事で述べたように、アメリカの関税政策をただ批判するのは無意味で中国の過剰供給と合わせて見るべき問題だと考えています。

 根底にあるのは中国の過剰生産による自由市場の歪曲であり、それに対する関税は対抗策の一つです。たとえ長期的に見て「神の手」が働くのだとしても短期的に自国産業が壊滅しては立て直しようもありません。自由貿易をクラッキングしている中国へ対抗するためには関税や管理貿易を駆使する必要があるでしょう。

 

 もちろんアメリカのやり方が100点満点だというわけでもなく、紹介記事でも述べられているように恣意的で一貫性に欠けたものだとは思います。もう少し上手く政治的なフォローや同盟国間での連携を取ることができたでしょう。

 ただ、アメリカの関税だけを批判して中国のことを透明化するのは分析として不十分ですし、本質を見落とします。そもそもEUですら一部の分野で中国に追加関税措置を取っている程度に自国経済圏の関税による防衛は当たり前のことであり、アメリカを批判しつつ自分たちも同じことをやっているヨーロッパの二枚舌に騙される必要はありません。

 

結言

 残念ながらアメリカ関税問題に関する報道では関税そのものへの批判だけがフォーカスされており、なぜアメリカがそれをやっているかに対する分析が不十分だと感じます。また関税に限らず、アメリカのアクションを分析せずに「大統領が変だから」で納得させるような報道が散見されるのは残念です。

 大統領が変なのはある意味で自明の公理だとしても、政策が変であるかは別の話です。たとえ頭脳明晰な人が発言したとしてもその内容が必ずしも正しいわけではなく、たとえ品性下劣な人が発言したとしてもその内容までが全て野卑とも限らず、人と言動は区分して考える必要があります。「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」に幻惑されてしまうのは典型的な認知バイアスなのですから。