ある意味、経営者目線が身に付きつつある?
何処かしらは遅れているし、何かしらは進んでいる
「日本はITやAIで世界から遅れているからもっと投資をすべきだ」とした意見はネット上で散見されるかと思います。
テーマの範囲が膨大過ぎるため実態を正しく把握できている人はいないでしょうが、平均すれば意外と進んでいるかもしれませんし、実際は非常に遅れている可能性もあります。
いずれにせよ全てが革新的に進んでいることはあり得ず、全てが完全なまでに遅れていることも同様に無く、進んでいる部分も遅れている部分もグラデーションで持っているものです。
よって「日本はITやAIで世界から遅れているからもっと投資をすべきだ」の前段部分は確実に真です。何処かしら遅れている部分は必ずあります。
ただ、それが後段の投資判断を肯定する根拠になり得るかと言えば、少し疑問です。
日本の競争地位
競争地位の4象限は大抵のビジネスパーソンが学ぶ有名なフレームです。組織の地位を経営資源の量と市場シェアで「リーダー」「チャレンジャー」「フォロワー」「ニッチャー」に分けて、それぞれの取るべき戦略を示しています。
リーダーは市場規模拡大を図るために全方位戦略を取ることが正しく、チャレンジャーはリーダーに対して差別化や低価格戦略を取ってシェアを奪うことが必要です。フォロワーは模倣戦略によってシェアを獲得することが求められて、ニッチャーはリーダーたちが参入しにくい狭い分野へ経営資源を投入する戦略が妥当です。
日本のITやAIの地位がどこにいるかを考えれば、少なくともリーダーではないでしょう。世界を牽引するような巨大IT企業はほとんどアメリカと中国にあります。
厳しいことを言えばチャレンジャーですらないでしょう。そもそも根本的にグローバルシェアを獲得できていません。日本国内であればシェアを取っている企業はいくつもありますので、良く言えばニッチャー、過酷な見方をすればフォロワーが妥当な判定かと思われます。
ニッチャーやフォロワーが、リーダーやチャレンジャーに負けている分野において劣る経営資源で勝負を挑めばどうなるかは火を見るより明らかです。全方位戦略や低価格戦略に圧し潰されて敗北します。
よって「日本はITやAIで世界から遅れているからもっと投資をすべきだ」は、気持ち的には妥当な考え方だと思いますが、ビジネス的には悪手となりかねません。少なくとも例えば生成AIなどに今更巨額の投資をするようでは遅いでしょう。それよりはまだリーダーやチャレンジャーが着手していない分野や先行技術に手を伸ばすことが適切な戦略となります。
結言
遅れている分野に対してもっと資金を投資すべきだとした発想はとても自然ですし、私も昔はそうすべきだと考えていましたが、よくよく考えてみればビジネス戦略的にはあまり妥当ではないかと思われます。
競争地位の4象限のような、単純で誰もが知っているビジネスフレームですらいざ現実に適用して考えるためには経験と相応の視座が必要になるのだと感じます。誰もが経営者になれるわけではなく、多くのスタートアップ企業が数年で潰れることも納得です。
少なくとも私を含めた大衆が勘と経験に基づいて口にするような方針では国家や企業を運営することは難しいでしょう。なんともはや。