忘れん坊の外部記憶域

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IMD世界人材ランキング2020を見る

 IMD(国際経営開発研究所)が毎年発行している世界人材ランキング(World Talent Ranking)について、中身を見てみましょう。

  2020年における日本の総合順位は38/63位です。

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 まあ、正直高くはありませんね。

 ただ注意として、このランキングの順位は個々人の質を直接指しているものではありませんので、「日本人ビジネスマンの仕事のレベルが低いんだ!」なんて嘆く必要はありません。どちらかというと企業が欲しがる人材が居るか、労働市場流動性は高いか、という企業視点であり、なかなかに幅広い視野でスコアを見ているランキングです。

 投資と開発

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  教育に対する公的支出総額の順位が低いです。一人当たりの支出総額がそこまで低くないのは物価の違いでしょう。生徒と教師の比率も少し低いことから、日本では子供の教育費用を「国家」ではなく「家庭」が負担する比率が高いことが分かります。学校での勉強だけでは不足しており塾に通わせる親が多いということです。教育費用を税で負担するか家庭で負担するかのどちらが良いかは国民性にもよるところではありますが、家庭における教育費の低減は少子化を防ぐ方法の1つですのでもう少し学校に税金を投入する方向のほうが良いかもしれません。

 女性労働者の割合も順位が低いです。女性の割合は人材の質とは関係ありませんが、このランキングは企業視点から見た人材の入手性を見ていますので、多様性を重視する今時の企業からすれば女性労働者比率が50%のほうが要求を満たしていて高得点だということです。

 訴求

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 基本的に順位は悪くありませんが、生活費指数と海外の高技能人材が魅力を感じるかどうかで順位を落としています。生活費指数はMercerによる調査結果であり、一般的な物価指数ではなく海外駐在員の視点から見た物価指数です。よって上位はアジアやヨーロッパで占められています。この順位を改善するのはなかなか難しいかもしれません。

 日本はそこまで移民政策に力を入れていないため海外の高技能人材が日本で働くことに魅力を感じるかと言われると、まあないでしょう。文化や言語から見ても安定した海外高技能人材の確保は困難です。

 移民政策については改善が必須かどうかもまだ意見が割れていますので、もう少し議論を深めていったほうが良さそうです。

 準備・手早さ

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 もっとも順位が低いカテゴリで、全体的に低順位です。

 特に低いのは上級管理職の国際経験や流動性と語学力です。学力は5位と文句なしに高順位ですので日本人の能力が低いわけでは決してありません。

 しかし日本は一国で作る経済圏としては世界でも有数であり、日本から出なくても人生に何の支障もないということがあります。また日本語は母語とする人口が1億3千万人を超えます。話者数のランキングでは15位、世界経済フォーラム(WEF)の言語ランキングでは8位という言語であり、日本語しか使えなくてもやはり人生に支障がありません。

 そういうわけでグローバル企業の視点からすれば、優秀だけどコミュニケーション的には使い勝手が悪い、というポジションになっていることがこの順位から分かります。とはいえ今時の若者は語学もある程度学んでいますし海外経験も増えつつあります。若者が出世して上級管理職になっていけば順位も改善されていくでしょう。

まとめ 

 総じて、日本の順位の足を引っ張っているのは

  • 教育(特に大学関係と科学関係)
  • 管理職の能力(国際経験、語学)
  • 金融スキル
  • 移民政策

といったところです。「日本の問題」としてメディアや文壇で議論になっている内容ばかりですね。議論の俎上にはすでに乗っている内容ですので、今の順位は低いとはいえ徐々に良い方向へ向かっていくことが期待できそうです。